学食の日の夜⑨
「『グラセイミ』とはいったいなんなのですか?」
アリカの異常なほどの驚きに対して、スズはアリカに訊く。
アリカは前のめりになった体を椅子に戻し、一呼吸してから話し出す。
「そうか……、スズが受けてきた方面の訓練では『グラセイミ』について学んでこなかったから知らないか……。
『グラセイミ』を食べた場合の効果は、光魔法の増幅させることになる。
つまり、天界の住民が食べればパワーアップすることができることになるが、黒魔法に関係を持っている魔界の住民が食べると『グラセイミ』の影響によって魔術回路をくるわせ体調が悪くなるという猛毒となる。それは、魔法をうまく使えなければ使えないほど、魔術回路の乱れの整えることをできずに体に影響をあたえ、死にいたらしめる」
「だから、魔法をいっさい使うことができないと言っているゼエルが『グラセイミ』を食べて無事にいられるはずがないのですわ」
と、イリカはアリカの説明を補足するように言う。
「なるほど、確かに生まれた時から魔界に生活していて、魔法が使えないといっているゼエルの経歴からして、その『グラセイミ』を食べれるというのは不自然ね。
『グラセイミ』を食べれるということは、魔法を高レベルに使えるか、魔界の住人ではないということになってしまう」
「そうなのです、スズ様。
私が驚いてスズ様に報告しに来た理由をわかっていただけたと思います」
「リスシタが驚くようなできごとが起こったっていうのはわかりました。
ですが、今までの話ですと、リスシタ、あなたの主人であるゼエルを裏切ったっていう話にしか聞こえないわ。
そのことについて、どう説明するつもりかしら?」
「…………、裏切ったと申しますと……、私は裏切っておおりません。
私はただ、9大魔王ルキフグ城からきたメイドとして、この学園に来た方々のなかの長であるスズ様に報告にきただけですが……」
「そういったごまかしは、私は好きではありません。本当のことを言いなさい。リスシタの言っている内容には矛盾がありすぎます」
「矛盾とおっしゃいますと……」
「私にそこまで話をさせるつもりなの?」
徐々に怒りの感情をあらわにしていくスズ。
一方、リスシタはしらをきろうとしているのか、いちおスズに恐縮した表情のままで、スズの質問に答えようとしない。
だが、スズと昔から一緒にいるアリカとイリカは、スズの様子を見ていて落ち着いてはいられない。
スズが本当に怒り出さないか心配になり、どうやってうまくまとめるよう何かはなそうと思ったのだった。