学食の日の夜⑧
「夕食がいったい何っていうの?
そもそも夕食はリスシタ、あなたが作ったのでしょう?」
「はい、私が作った夕飯になります」
「夕食ですか……」
ちょっと予想外の切り口から話が始まったので、不思議そうに言うスズ。
スズとしては、不審者と密会していたなどといった話から始まると思っていた。
がしかし、違った。食べ物の話から始まってしまった。しかも、自分で作った夕食で不審に思うなんて、いったいどうすればそうなるのか……。
(これはあまり期待できる話にはなりそうもないかな……。
夜食の準備があまりにもすばらしかったから、過剰に期待しすぎてしまっただけかもしれない。
しょせんは、メイド。本職は、身の回りのお世話なのだ。
夜食を作るのは上手であっても、不審者と密会していたなどといったきな臭い話にしっかりと訓練はうけていないのだろう。
まあ、むしろ全然、メイドらしい勘違いでよかったといえよう。
きっと、異性のゼエルである二人暮らしという生活環境が変わったこともあって、同じ9大魔王ルキフグ城からきた同性といろいろと話をしたかったっていう流れだろう。
リスシタの主人であるゼエルをだしにつかったのはいただけないけれども、リスシタの気持ちはわからないでもない。
私の場合は、アリカとイリカと一緒に来ていたからあまり不安にならずに生活できているが、もしいなかったと思うと不安になる。
まあ、今回は軽くリスシタをとがめるだけにしておいて、今後は夜食を作らせる名目で気がるにここにこれるようにさせてあげよう。
そうすれば、9大魔王ルキフグ城から来たもの全員うまくいくようになるだろう。
私は9大魔王ルキフグ城からきた者たちのなかで一番くらいが高い分、全体に気をくばる必要がある)
スズは、そう考え、リスシタが話し出すのを待つ。
すると、リスシタは言う。
「そうです。私が作った夕飯によって不審に思っているのです。
なぜならば、私が作った夕飯には、『グラセイミ』いりでした」
「『グラセイミ』は悪魔を暗殺するさいに使う猛毒。通常であれば、口にいれただけで、一瞬で死んでしまうものを、なぜそんな毒物を夕食に?」
と、アリカは驚いた表情で言ったのだった。