学食③
「それなら大丈夫だわ」
当然と言わんばかりに言うユミリィ。
澄まし顔で、ティーカップに口をつけている。
幼じみの頃であれば、角砂糖を一つ頭に投げつけてやりたいところだが、今は違う。
今のルシゼエルは、天界の住人なんかではない。
魔界の住人でしかない。
それもとても身分の低い。普通であれば、天界からの留学生で、身分の高いユミリィと一緒のテーブルで食事を取ることもなければ、しゃべることもなかっただろう。ユミリィにあれこれ言える状況ではない。
それにーー
「それはどういうこと?」
と、ルシゼエルが疑問に思ったことをアリカが代わりに訊いてくれる。
こういう時は、アリカのように物事を簡単に考え、単細胞で、気軽になんでも聞訊ける奴がいると助かる。
いつもアリカをたしなめるイリカもアリカを放っておいているし、スズも様子見というか、ユミリィの回答待ちっていう様子だ。
スズ、アリカ、イリカの三人からの疑問の眼差しにユミリィは、『うっ、』と言葉を詰まらせた後、
「実は、学食に来る前にたまたま生徒会長に会って、予定を聞いてしまったのですわ」
と、申し訳なさそうに言う。
「だったら、知ってるって早く言ってくれればよかったのになぁっ」
嫌味たっぷりに言うアリカ。
イリカが『天界からの留学生に対しての態度ではない』とアリカの行動をたしなめるだろう思ってルシゼエルはイリカの方を見る。
すると、予想は外れて、イリカもアリカと同様に非難の目を向けている。
スズはどうなのだろう、とルシゼエルは思いスズを見ると、イリカと同じように非難の目を向けていた。
スズ、アリカ、イリカのユミリィに対する態度はどこか冷たいというか、嫌な雰囲気がある。
少なくとも好意的、といった雰囲気ではない。
スズ、アリカ、イリカたちは、知らないうちに生徒会長と行き先を決めてしまった、と思っているのだろう。
もしくは、行き先を決めるのにユミリィは関わっていないとしても、先にユミリィが知っていたのを気持ちよく思っていないようだ。
いや、考えすぎかもしれないが、ユミリィとはまだ会ったばかりなる。だから、ユミリィに対してというよりは、天界の者に対して因縁を持っているのかもしれない……。
まあ、いろいろ考えたって仕方がない。
今の現状をよくしなければいけない。
なんかフォローでもしてやろうか? とルシゼエルは思ったが、立場上、正面をきってユミリィを助けてやることはできない。
むしろ9大魔王ルキフグの援助で学校に来ている以上、スズ、アリカ、イリカたちの側に立つべき状況になっている。
ユミリィのフォローをするにしても、ユミリィ自身できっかけを作ってくれないと始まらない。
ユミリィもそのことをわかっているらしく、ギクシャクしてしまった雰囲気の中で、慌てながら言う。
「そういえば、湖に行ったら、魔界で人気のある魔法競技をやるって生徒会長が言っていたわ」