授業⑥
(いったい何がしたいのだろう?)
スズとアリカが、彼氏と彼女の演技をした後、ルシゼエルの率直な感想だった。二人とも妄想の世界に理想の行動というものがあるのかもしれない。だが、理想を追い求めるあまりに会話がつながらず、2回くらい会話をした後、どうにもならずに終わってしまったのだった。
(つうか、早く授業が終わらないかな……)
ルシゼエルは真面目に魔界の武器に関する授業を受けに来たにも関わらず、スズ、アリカ、イリカがふざけていて全く授業に集中できない。こんなんだったら早く家に帰りたい。
「ーーはあ……」
思わずため息をついてしまったルシゼエル。
「痛っ! イリカは何故俺をつねる⁉︎」
「ちゃんと私達の話を聞きなさい。
ゼエルの為にやってあげているんだから」
目を釣り上げてルシゼエルに言うイリカ。
イリカはルシゼエルがちゃんと授業中のふざけに参加しないので怒っている。スズ達は授業中にふざけていてとても楽しいのだろう。
『ゼエルの為に』って言うならやらなくていいのに、とルシゼエルは思っても、ここで言う事はできない。
なのでルシゼエルは仕方がなく、
「悪かった」
と、気の抜けた声で言う。
イリカはルシゼエルの声を聞いた後、スズとアリカの方を向いて、
「うーん、スズもアリカも彼氏、彼女の役が全然なってませんわ」
張りのある声で言う。
「ど、どこが悪かったんだよ⁉︎
恥ずかしから本当はやりたくなかったにもかかわらず、勇気を振り絞って彼氏役をやったのに」
口を尖らせ、不満を言うアリカ。
「アリカは恥ずかしがり過ぎですわ。
口では色々と強気な事を言っている割には、内心弱気な所が十分に出てしまっていますわ。
まさに、童貞以上のムッツリすけべ、と言ったところでしょう」
「『童貞以上のムッツリすけべ』って言い方が酷すぎないか?」
「けれども、アリカがそうなってしまっているのだからそう言いしか仕方がありません」
「イリカはホント毒舌だよな」
「そんな事はないわ。
私にアリカの事を『童貞以上のムッツリすけべ』と言わせるアリカが悪いのですわ」
「そ、そんな事を言うならイリカがやってみろよ」
イリカに反発して言うアリカ。
授業中にもかかわらず、ちょっと声が大きい。教授から注意されないか心配になるくらいだ。
「いいですわ」
イリカはそう言った後、スズを横目で『ジロッ』っと見て、
「ですが、私がやる役は、スズの役です」
スズは『んっ?』と頭の上に『?』を浮かべ、
「どういう事?」
「スズも彼女らしい行動をちゃんとできていないから、私がちゃんとした彼女役を見せます」
「では、ゼエル役は誰がやるのですか? ひょっとして私がやるのですか?」
イリカが何をやろうとしているか先が読めず不思議に思いながら言うスズ。
イリカは、首を左右に振り、
「違いますわ」
「じゃあ、アリカですか?」
「違いますわ」
イリカは、ニヤリ、と悪魔が何かを企むような表情を作り、
「ゼエル本人にやってもらいますわ」