授業④
ルシゼエルがスズに初デートを、ユミのお礼会と一緒にやろう、と提案した事に対して、スズ、アリカ、イリカはそれぞれの反応を見せる。
「つまり、ゼエルはみんながいる所でいちゃいちゃしたいと?」と、スズ。
「…………」(うん、違うよ。俺はスズと二人きりになるのが嫌だからだよ)
「んっ、なんだ? ゼエルは大胆だな」と、アリカ。
「…………」(大胆っていったい何が? 俺とスズがみんなの前で何をやるって思ってるの?)
「えーと、今度はみんなに見られている中でスズに馬乗りになると?」と、イリカ。
「…………」(みんなの前でスズに馬乗りになんかなるわけないじゃん、って、俺は人気のない所だってそんな事はしないけれどな!)
こんだけ突っ込みどころの多いスズ達の反応があると、なんて返答したらいいのかルシゼエルは困る。本当の彼氏ではなく、彼氏役にすぎない俺にいったい何を求めているのだろうか? スズ達はふざけてやっていると思いたくなるような表現だ。
だが、現在のスズ達の表情から、ふざけているとは思えないような雰囲気が伝わってくる。スズは初デートに期待を膨らませて行っているような表情。アリカはルシゼエルとスズとどんな行動をするのか興味津々な表情。イリカは変質者を見つけたような表情をしている。ここは無難な回答をスズ達にしておこう、とルシゼエルは思い、
「いや、いきなり深い仲になったような行動はしない」
「ーーえっ…………、『いきなり深い仲になったような行動はしない』……、って事は……、徐々に時間をかけて深い仲になっていき……、キャッ……」
口を開けて驚いた表情をした後、顔を徐々に赤らめていき、恥ずかしそうに顔をうつむきになるスズ。
アリカは、ニヤニヤしながら、スズの方を向いて、
「きっと、ゼエルはデートの1〜2時間ぐらいたったら、スズと深い仲になろうとしてくるからな」
「いや、ゼエルは1時間も待てずに深い仲を迫ってくるに違いありませんわ」
「イリカ、俺はスズに深い仲になろうと迫ったりなんかしない」
「……えっ……、なぜ?」
と、さっきまで恥ずかしそうに下を向いていたスズが、意外そうにルシゼエルを見る。
ルシゼエルはむしろこちの方がそんな事を聞かれて意外だよ、と思いながら、
「いや、なぜって、俺は彼氏役、つまり本物の彼氏なんじゃないんだから、当然だろ」
「ひどい、いくら本物の彼氏じゃなくったって、彼氏は彼氏なんだから、彼氏らしい事をすべきなんじゃないの?」
と、上目遣いでスズはルシゼエルに訴えて来たのだった。




