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授業①

 入学式の次の日、ルシゼエルは学園の授業に出席したのだった。授業を行う部屋は講堂のように半円型の形をしている。人気があるのかたくさんの人が集まっていた。

 ルシゼエルが出席する授業の内容は、魔界の武器に関するものになる。魔界で活動していく中でいざこざに巻き込まれれば戦闘になることは避けられない。戦闘になったときに勝敗を分ける要素の一つとして、使う武器になる。だから、魔界の武器を知っておこう、とルシゼエルは思ったのだった。天界と魔界の武器は、どちらとも使用者の能力を高めたり、補助したりするものであるが、扱う素材が大きく違う。天界でメインで使われる武器の材質は、地下や山などで採取される鉄などの物質になる。が、魔界の場合は魔物とかの牙や骨、革などの一部を使うことが多い。そして、魔物を人形のように組み立て扱って戦う方法もあるらしい。

 ちなみに、学園を卒業するための条件にはいくつかある。代表的な方法は、教授の1人に認められ単位をもらうか、何かの委員会や組織に所属し能力を認められるなどになる。必ず出なければいけない授業はない。なので、興味がある授業だけ出席して行くことになる。こういったシステムになっているのは、学園に学びに来ている者の目的に関連している。例えば、高齢で国の幹部になっているものとかが、最新の魔法を学園に学びに来ることがある。そういった場合に、一般教養などを学ぶ必要はなく、ピンポイントで学びたい魔法だけの授業を受けたいと思う。なので、そういったことを可能にする配慮としてできた卒業のシステムになる。もちろん、長年学園に在籍し、複数の授業を受けて、複数の単位の卒業をする者もいる。

 ルシゼエルは学園に来た理由は、禁呪魔法を身につけることになる。だから、別に教授に気に入られて、卒業をする必要はない。だから、教室で目立たない一番後ろで窓際の席を選び座って待っている。すると、魔王ルキフグの娘であるスズと、スズの護衛であるアリカ、イリカが近づいてきたのだった。せっかく目立たないようにしているにもかかわらずなんで来るんだ、とルシゼエルは思いながら、仕方がなく自分より上の立場になるスズたちに向けて会釈をする。

 スズもルシゼエルに向けて会釈をして、微笑みながら、


「隣の席は……どうやら空いているようね。

 ちょうど3人分空いてるから座っていいかしら?」


 そう聞かれたルシゼエルは、(なぜ、俺に聞く。俺が嫌でも嫌ですよ、とは言えないの立場だということを知っていて)と思った。なので、仕方がなく、


「空いてますので、どうぞ」

「ありがとう」


 と、言いながら、カバンを置き、椅子に座るスズ。

 スズはウエーブがかったピンクブラウンの長い髪を揺らしながら、ルシゼエルを興味深そうに見て、


「昨日は色々とあったようね?」

「……えーぇーっとっ…………」


 と、昨日あったことを思い出しながら困った声を上げるルシゼエル。

 ルシゼエルが思い出す昨日あったことは、①入学式が終わったあと人気のない林の中へイリカに連れて行かれたこと、②イリカにデートへ誘われたこと、③イリカがムチを振り回しながら追いかけ回されたこと、④イリカを静かにさせるために馬乗りになってしまったこと、⑤イリカが怪しい男を捕まえることになったこと、というものだった。どれもインパクトが強すぎて、スズがどのことを思い浮かべて言っているのかが意図をはかりかねる。それに、昨日あったことをイリカがどう伝えてるかによっても、ルシゼエルがどう反応したらいいか変わってくるだろう。昨日あったことをそのまま俺が感じた通りに、『人気のない林へイリカに連れ込まれ、デートに誘われ、ムチで追いかけ回されたあげく、俺が押し倒して、怪しい男からユミを助けた』と言ってもいいのだろうか? イリカなぜ俺をデートに誘ってきたのだかは知らないが、デートに誘ったということは、かなりプライベートな情報になるはずだ。普通であれば言っていい情報ではない。だが、話しかけられた以上何かを言わなければいけない。そうなってくると、2人きりではなかったときの話であれば言っていいはずだ。他の人がいるときの話ならイリカもありのままに伝えなければいけない。なぜならば、他に一緒にいた人に事実を確認するような場面になったら嘘がばれてしまうからだ。

 だから、ルシゼエルはユミたちと合流したときの話だけをしようと思い、イリカを見て、


「……昨日は怪しい男を捕まえてすごかったね」

「ゼエルは何もやらなかったけれどもね」


 と、皮肉を込めて言うイリカ。

 本当はイリカの拘束魔法だけでは役に立たないからさりげなく強化したんだけど……、もっと言うと、怪しい男を最初に見つけたのは俺なんだけど、きっとイリカが手柄として話をしているんだろうな、とルシゼエルは思い、イリカの言ったことに対して特に反論をしないことにした。それに、力を隠しておきたいルシゼエルにとって、イリカが手柄を全部持っていってくれたほうが、都合がいい。

 スズは、ふーん、と頷きながら、


「昨日のことはイリカから聞いたけど、なんかひっかかるのよねー」

「ひっかかるとは?」

「ゼエルが何かを隠しているような感覚」


 じー、と疑いの目をルシゼエルに向けるスズ。


「……うっ……、何も隠してないが……」


 と、話すたびに顔をゼエルに近ずけながら話すスズに、たじろぎながら言うルシゼエル。

 イリカの話と、スズの話からして、何もばれてはいないとルシゼエルは思った。ただ、スズは勘が鋭いのか疑っているだけだ。だから、このままボロを出さずに否定しつずければ、自分について何もばれないままにできるはずだ!

 スズはルシゼエルを上目遣いで見ながら、


「ゼエルは『何も隠してはいない』って言ってるけど、私はそうは思わないのよね」じー

「スズ、それは考えすぎですわ」


 と、ルシゼエルとスズの話を聞いていたイリカが話に割ってくる。

 そして、イリカはルシゼエルのほうを見てバカにしたような表情を見せたあと、


「ゼエルとは、昨日、一緒にいたけれども魔法を使う様子はありませんでしたわ。

 だから、魔法を使えるとは思えませんわ」

「うーん1日だけではわからないこともあるかもしれませんし……。

 それに、少し前に起こったことの事件の噂話になるけれども、単身で魔王ルキフグ城に乗り込み、兵士たちをけちらし、お父様に会った者がいるっていうことを聞いたことがあるの。

 その事件が起こった時期と、ゼエルが魔王ルキフグ城に来たころと一致しているような気がするし……」

「その単身で乗り込んできたのがゼエルじゃないかって、疑っているの?」

「そうよ、イリカ」

「いや、それはないよ。

 だって、単身で魔王ルキフグ城に乗り込んでくるような目立ちたがり屋であれば、ここに来るまでに100ぐらいの敵のグループから不意打ちを受けたときになんらかしらの力を見せているはずだよ」

「アリカが言っていることはもっともだけれども。

 私はよくお父様に面談に来る要人の方とお会いするときが会って、相手が立場上正体を隠して来るときがあるわ。

 ゼエルからはその正体を隠している方たちに雰囲気が似ている気がするの。それも、とてもランクの高い方と同じ雰囲気」

「でも、それって勘だろう?」

「勘だけれども、見逃してはいけないって、私の本能が言ってるの。

 そもそも、ゼエルの行動やストーリーは何もかも怪しすぎだと思わない?」


 と、アリカとイリカを見て、言い聞かせるように言うスズ。

 イリカがメインでスズに話しかけていたが、途中からスズの言っていることに共感することがあり反論しずらいと思ったのか、やや下を向き考えるような表情になった。

 一方、アリカはスズの言っていることに納得いかない、と驚いたような表情をしている。

 ルシゼエルだけがこの場で正解を知っている。だから、スズはなかなか勘が鋭いな、と感心していた。だが、今、スズが勘が鋭すぎてルシゼエルの正体がバレてしまうのは困る。なんとかして、スズの勘が間違っていることに、させなければいけない。昨日、生徒会室でユミのお礼会に誘われたときと違って、この場にいる全員が敵というわけではない。アリカがルシゼエルと同じで、ルシゼエルは力がないとスズを説得させようとしてくれている。とりあえず、ここはアリカを利用して否定しておけばいいか、とルシゼエルは思い、


「アリカが言っている通りで、俺はなんの力も持ってなーー」

「ゼエル。あなたは、私の彼氏になりなさい」

「「「はい?」」」


 と、スズがいきなりとんでもないことを言い出したので、ルシゼエル、アリカ、イリカは驚きの声をあげたのだった。

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