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入学式⑤

(今、いったい何が起こっているの?)


 イリカはルシゼエルを見ながら思ったのだった。

 ルシゼエルはイリカに馬乗りになって口に手を当ててきている。

 どうしてこうなってしまったのか冷静に考えてみよう、とイリカは思った。

 まずは、ここまでの流れを思い出す。今ここにいるのは、ルシゼエルの能力調査のためで、イリカが入学式の会場からルシゼエルを連れてきて、デートに誘った。だが、せっかくデートに誘ってあげたにもかかわらずルシゼエルが断ってきたので、イリカはデートに誘うのをやめルシゼエルをムチで襲う、という実力行使をすることにしたのだった。

 じゃあ、今、ルシゼエルはどう思っているのだろうか? イリカがデートに誘ったあと、何も言わずに実力行使に出てしまったということは……、もしかしたら、イリカがやった実力行使のことをルシゼエルはデートと勘違いをしてしまっているのかもしれない。

 そう考えると、今の状況を論理的に説明できる。ルシゼエルはデートが始まっていると思って、私の体にがっついてきたているのだ!


(うん、なるほど。ゼエルは私のことを魅力がないように言っていたが、本当はものすごく魅力的に思ってたってことですわ。

 それなら仕方がない。魅力的な私が悪いのですから)


 そう思い、デートを断られてショックから自信を取り戻すイリカ。

 じゃあ、このままデートの続きを………………、って、ルシゼエルにこれからいったい何をされるの? このままいったい何を? 馬乗りになって。ルシゼエルが求めているのはこの私の魅力的な体。ってことは、このままデートの続きとして…………ゾウさんが出てくるの? 男はみんな野獣…………、私はこのまま羽根のない野獣に初めてが……、林の中で…………。

 ダメ、それは絶対にダメ。初めてがこんな場所では…………、じゃなくって、こんな羽根のないダメな男にデートの続きをされるのが!

 イリカはそう考え、体に力をいれて、ルシゼエルをどかそうとする。が、力が入らない。


(男に始めて馬乗りにされてるから、緊張して力が入らないの? そういえば、手のひらが、汗ばんで濡れてきたような……)


 それでも、なんとかして、ルシゼエルをどかそうとするイリカ。

 それにもかかわらず、ルシゼエルはイリカの耳に息がかかるくらい口を近づけて、


「静かにしろ」


 と、小さい声でささやく。

 このパターンは確実にデートの続きをしようとしているのだとイリカは思った。そうなってくると、イリカはルシゼエルに言われた通り、静かにする、というわけにはいかない。

 イリカは必死に首を左右にふり、


「やっ……ううぅっ……よ。はや……うう……どきっううっ……ぅさい。ゾウぅぅう……たいにうううううううなっ!」(やめなさいよ。早く私の上からどきなさい。ゾウさんは絶対にだすなっ!)


 と叫ぶが、ルシゼエルに口をふさがれているためちゃんとした言葉にならない。

 ルシゼエルはイリカの恥ずかしそうにしながら、必死にもがいていて、何かを言おうとしているところから、イリカが勘違いしていることに気がつく。

 ルシゼエルは、再度イリカの耳もとに口を近づけ、小さい声で、


「学生を襲おうとしている奴がいる。

 今から俺はどいて、その証拠を見せる。

 騒がないで欲しい」

「……わかった」


 と、小声で言いながら頷くイリカ。

 私に馬乗りになって恥ずかしい思いをさせたことを絶対に後悔させてやる。ルシゼエルが馬乗りになった理由が本当だったとしても、とイリカは思った。

 ただ、もし学生が襲わられているのであれば、魔界の秩序を守る存在である9大魔王の一人ルキフグ家に仕える身として助けなくてはいけない。だから、ルシゼエルがどいたあと静かにイリカは起き上がり、ルシゼエルが指をさしたほうを見る。すると、怪しい様子の男が1人いて、身を潜めていたのだった。そしてその男の視線の先には…………。

 イリカが注意深く見ると、天界からの留学生であるユミと、付き人が1人いたのだった。ユミは天界からの留学生という珍しい存在だったので、イリカは存在を知っていたのだった。


「どうやら、ゼエルが言ったことは本当だったみたいね」

「当然だ」

「けど、馬乗りされ、辱めを受けたお返しはきっちりとあとでするかららね」

「それよりも、怪しい様子の男を捕まえ、ユミを守ることはできるか?」

「当然よ。いったい誰に向かって言っているの?」

「ならよろしく頼む」

「あんた私に向かって指図するなんて生意気すぎ。

 これだから魔法が使えない弱っちい奴は嫌いなのよ。

 いいわ。私が助けてあげる」

「仕方がない。俺は魔法が使えないのだから……、っと、話していると怪しい様子の男が手のひらに光るものを集めてきているぞ。攻撃を始める準備をしているんじゃないか?」

「まったくあんたは口ばっかりね。

 大丈夫よ。私なら、ちゃんとユミを守って、怪しい男だって捕まえられるわ」


 そう言って、イリカは魔力を高め出したのだった。

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