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入学式③

 入学式は屋内で行われ、スポーツなどが行われるような会場だった。学生が座る場所の正面に小高くなっている舞台があり、そこに学園の関係者や来賓、生徒会長が座る席がある。観覧席には入学式するものの関係者などが座っていた。

 ちなみに、舞台の上には、すでに学園長が座っている。ガタイが大きく、軍人といった雰囲気がある。名前は、エフェソ、だったはず。エフェソは先の大戦のときに、城の防衛戦で素晴らしい功績を収めた、と言われている。なので、学園にある知識や技術を守り抜くために、学園長に選ばれたらしい。戦争が起こったときに、まず魔界の最先端の技術がある学園が狙われる可能性が大きいから。

 学園長は、おそらくこの学園についてすべてを知っている人物になるであろう。だから、ルシゼエルがこの学園にきた目的である禁術魔法の手がかりを知っているキーマンになるだろう、とルシゼエルは思った。

 ルシゼエルとシュウは、入学式の会場に入ると、学生が座る席は自由だった。なので、できるだけ目立たなそうな場所を選び座る。

 しばらくすると、会場に入る入り口が騒がしくなったので、ルシゼエルとシュウも気になって振り向くと人だかりができていたのだった。人が多くて中心にいる人物が誰だかわからない。

 だが、生徒が座る椅子の方に近づいてくると、椅子に座るために自然とばらけたので、中心にいる人物が誰だかわかった。9大魔王が一人、魔王ルキフグの3女スズ。それと、護衛のアリカ、イリカだったのだ。おそらく人だかりができていたのは、スズと人脈を作りたくて集まっていたのだろう、とルシゼエルは思った。

 ルシゼエルがそんな風にスズを観察していると、スズはルシゼエルの視線に気がつき、軽く会釈をしてくる。

 なので、ルシゼエルも会釈する。

 すると、シュウがそのことが気になったのか、


「あの囲まれてた人と知り合いなの?」

「知り合いだ。

 魔王ルキフグ様の娘で、スズになる。

 学園に来るまでの馬車に乗せてもらったときに知り合ったんだ」

「えっ、ゼエル君はそんなすごい人と知り合いなの?」

「そう驚かなくたって。

 実は俺が入学できたのはルキフグ様のおかげなんだ」

「そうなんだ。

 でも、どうして入学させてもらえたの?」

「お願いをさせていただくチャンスがあったんだ。

 俺はルキフグ様が治めている地域にあった村に住んでいたんだ。

 けれども、正体不明のグループに襲われて、消滅してしまってね。

 俺は運良く生き残って、ルキフグ様からお詫びとして一つお願いをきてもらえることになったんだ。

 だから、将来につながることを、と思って俺はこの学園に入学できるようお願いしたんだ」


 と、自分の設定の話をするルシゼエル。

 シュウは申し訳なさそうな顔をして、


「そうだったのか。

 つらいことを思い出させてしまって悪かったね」

「いや、問題ない」

「ただ、そんなことがあったなんて……。

 犯人は見つかったのかい?」

「いや、わかっていない」(実はルシゼエルの出身地にされている村は実際にあってたし、消滅もしている。そして、まだ犯人はわかってない)

「そうか。

 最近、反9大魔王派の勢力が増してきたみたいで、そういった村や町が襲われるって話が多い、ってうちの兵士かが言ってたな。

 警護するための出動が増えたと困ってたと、ぼやいてたよ」

「そうなのか」

「なんだか暗い話になちゃったね。

 話をきりかえよっか。

 そういえば、知ってる? この学園に天界からの留学生が同じ学年にいるって。

 名前は、確か…………、ユミリィ=ガブリエルだったはずだな。

 あそこにいる子だよ」


 と、言って、人差し指をある方向に向けるシュウ。

 ルシゼエルは、シュウが人差し指を向けた方を見る。

 すると、長い白銀色の髪をした白い肌の少女がいたのだった。キンカンぐらいの大きさのルビーがついた髪飾りをつけている。


(まさか、ユミが学園に来てるなんて。しかも、同じ学年で)


 ユミはルシゼエルが天界に住んでいたときにできた幼なじみになるので、ルシゼエルはユミのことをよく知っている。

 ユミは天界の名門であるガブリエル家の次女になり、魔法が苦手で戦闘力が低い。だから、留学生に選ばれたのだろう、と思った。なぜならば、魔界で暴れるようなことがあっても、簡単に対応できるような人物を。

 そんな風に、ルシゼエルがユミのことをかんがえていると、昔のことを思い出す。

 それは、ルシゼエルが幼少の頃だった。ルシゼエルは生まれたときから巨大な力を持っていて、その力に振り回され、うまく使えず同じ歳ぐらいの天使からよくバカにされ、つらい思いをした。

 そんなときに、ユミが励ましてくれたので、めげずに頑張れたことを今でもとても感謝している。

 ルシゼエルは、懐かしくなって、入学式が終わったあと、ユミに話しかけたい衝動にかられる。

 だが、それをすることはできない。なぜならば、今のルシゼエルは対外的に、ゼエルになっているからだ。なので、ユミと昔話しをしたい、という衝動を必死に抑えたのだった。

 そうして、入学式が終わり、学生たちも立ち上がり、ばらけていく。

 ルシゼエルとシュウも椅子から立ち上がり、会場から外に出て行こうとする。


 ーーそのときだった。


 ルシゼエルは着ている服を後ろから軽く引っ張られ、後ろに振り向く。

 すると、イリカがいたのだった。

 恥ずかしそうにして、上目遣いで、目を潤ませている。


「わわわわわわわわたしと一緒に来て欲しいですわ」

「はあ……?」


 意味がわからず、失礼な表現で聞き返すルシゼエル。

 もちろん、言っている意味はわかっている。だが、なんでそんなに恥ずかしそうに言うのだかがわからない。

 一方、イリカは不満そうに、ムッとした表情になり、


「私だって本当は嫌なのに…………、じゃなかった。

 ちょっとお話しをしたいことがあるからよ」

「いや、俺は用事があるから行けない」

「そうよね。私が男にちょっと話しかけて誘えばいちころ…………。

 って、ええええええええぇー。なぜなの?

 アリカよりも、胸は大きいし、おしとやかだし、可愛いし、料理も上手だし、絵も上手だし、頭もいいし、人気あるし…………」

「だから、俺は用事があるって」

「普通なら、用事をやめて私と一緒にくるものじゃないの?

 あなたよりも身分も高くて、魔法も使える可愛いい私に声をかけられたら、全力で何があったってっ!」


 人差し指をルシゼエルの鼻に向けてたて、目をつり上げてルシゼエルを見るイリカ。

 ルシゼエルは急に言ってくるイリカが悪い、と言おうと思った。まあ、そもそも、用事があってもなくてもイリカとどこにも行きたくない。とってもめんどくさそうだ。

 そんなときに、シュウが余計なことを言ってくる。


「用事って、さっき僕と約束したお昼に一緒に食べに行こう、って話のことかな?

 なら、僕は大丈夫だよ。また、今度行けばいいからね。

 ゼエル君、そちらの方を優先して」

「申し訳ありません。

 では、ゼエル。ついて来なさい」


 イリカはそう言って、ルシゼエルの服をつまんで、どっかに向かって行ったのだった。

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