入学式①
今日はセントラル学園の入学式になる。
今年の4月に入学するのは100人程度になり、今後、何年いるかわからない学園生活を送るにあたって、重要な人脈を気づくために、おそらくほぼ全員出席するのだろう。
まあ、卒業をしなくてもセントラル学園に入学するということで、今後の魔界生活に相当プラスになることになるから、入学式に出席したいと思うに違いない。なぜならば、9大魔王の国家機関で要職に就いているのは、セントラル学園に入学したことがあるものが多いから、自然とセントラル学園に関わったことのあるものがいろんなところで優遇されていく。
そういった流れになったのは、魔界の歴史が大きく関わっていることになる。昔、9大魔王同士で激しい争いが起き、終戦したあと、どうすれば今後こんなに悲惨な戦争が起きないか、という会合が持たれた。結果、戦争が起こらないようにする方法の一つとして、学校という学び舎で若いときから各国の交流を持とう、ということになった。そういった経緯から、各国の要人が入学している傾向が多かった。魔王の親戚、各国の宰相、各国の家老、各国の将軍などなど……。
だが、ルシゼエルは別に人脈を作りに来たわけでない。だから、入学式に出なくていいか、と思った。
それに、現状のセントラル学園は、若い人ばかり入学する、とういうわけではない。最先端の研究をしているので、各国の要職に就いている人も中途半端な時期に入学してくる場合があり、年齢はあまり関係ないのだ。それこそ、天才児であれば10歳の子供から、最先端の魔法を学ぶために歳とった将軍までいる学校なのだ。
そうして、1日部屋の中で過ごすことに決めたルシゼエルは、シャワーをとりあえず浴び、紅茶を飲みながら本を読んでリビングでくつろいでいた。
と、そのときだった。
リスの部屋の扉が開く。
リスは目をこすりながら、眠そうな顔をしながら、
「なんだかリビングがうるさいですね…………」
と、言ったあと、リスは、顔を青ざめさせ、
「ーーえっ…………、ゼエル様はなんでこんな早く起きていらっしゃるのですか?
まだ、入学式の時間までに2時間以上早いというのに……」
「俺は普通に起きたつもりだったのだが。
起こしてしまったようだね。
まだ、寝てていいから」
「いえ、そういうわけにはいきません。
魔王ルキフグ城でメイドの研修を受けたときに、奴隷メイドはご主人様よりも朝は早く起きて、夜は遅く寝るようにと教わりました。
まさに、朝は目覚めのキスで起こし、夜はベットでご主人が尽き果てるまで」
「いったいどこの家庭の話?」
「奴隷メイドである私とゼエル様のお話です。
愛がなくても、奴隷メイドなら関係ないよね」
「そんな自信満々に言わなくても。
俺の場合はそこまでのことをしないでいい」
「ゼエル様はそういうことをおっしゃってますが、本音では私がちゃんと奴隷メイドとしての仕事をしなかったので怒ってるのですね?」
「どうしてそうなる?」
「メイドの研修で教わりました。
ご主人様が優しい言葉を奴隷メイドに言ったときは、本音と違うと……。
ひどいことをされる前触れだと。
これは、9大魔王メイド協会の調査結果であるとテキストに書いてありました」
「そんなことを調査してるとは……」
「なので、すぐに謝罪をいたします」
「俺に近づいてきて何をする気だ?」
「心からの謝罪をあらわすためには、体を使って表現するのが一番だと。
メイド研修で習った基本通りの行動をとらせていただきます」
「いや、いい」
「やっぱり、やっぱり、私に魅力がないから……」
「なぜそうなる。
また、メイド研修で習ったことか?」
「はい、殿方は、『メイド服を着ている奴隷メイド』というシチュエーションにものすごく興奮を覚えるとか。
しかも、さらに『お仕置き』というオプションがつくとさらに喜ぶと。
よだれをダラダラとこぼすくらい。
それにもかかわらわらず手を出されなかったら、女としてまったく魅力がないと。
ゲテモノだと、ケダモノだと、インジュウだと……、それらと同じだと言われていることに等しいと……思われてると思え、って教わりました」
「いや、どこの店の話?
と、いうかゲテモノとかの例えがよくわからないのだが……」
「店……? 私はゼエル様の来店待ちです」
「いや、入店はしない」
「ひどい……」
「あー、朝から疲れるような話はしないでくれ」
「つまり、ピロトークなしでやると」
「いや、ピロトークどころか、何もやらない。
とりあえず、食事を作ってくれ」
「…………………………。
あっ、なるほど、そういうことですね。
やっぱり、ゼエル様も『男』ということですね。
わかりました。
待っててください」
と、リスは言って、急いで一度部屋に行き、シャワーを浴びて、台所に行ったのだった。




