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学園に入学する前⑤

 ルシゼエルがセントラル学園に着いたのは入学式の前日だった。

 校門には生徒会長が待っており、スズたち一行に対して生徒会主催の歓迎会に招待する、という話があった。9大魔王の娘であるスズに対しては、特別扱いといったところなのだろう。

 生徒会長はマリエッタという名前の少女だった。髪が肩ぐらいの長さで、パープル色。身長は普通くらい。年上のおねいさんといった雰囲気がある。

 ルシゼエルはスズの一行として生徒会に認定されており、歓迎会に誘われたのだが、丁重に断った。やっぱり、6日間も一緒に慣れていない人たちと一緒にいると、早く一人になってゆっくりとしたくなる。

歓迎会を断ると生徒会長は、メイドに食事を持って行かせる、と言ったのだった。ルシゼエルは、1人で部屋で食べれるならば断る理由はない、と思いお願いすることにしたのだった。

 そのあと、ルシゼエルはスズとアリカとイリカ、警護隊長にここまで同行してもらったことのお礼の挨拶をしわかれ、自分の寮の家を教わり、中に入ったのだった。

 ドアは、壊されないように魔法をかける。魔王ルキフグ城にいたときのように、新しく来た人歓迎といった名目で壊されないように。アリカとイリカがいきなりドアを壊して入ってきたことは、昨日のことのように覚えている。とても印象的だった。

 そして、学園の寮の家の中を確認する。1人で使うには十分な広さがある。間取りは、4LDK。

 ただ、1部屋だけ鍵がかかり、空かない部屋があった。不思議に思ったけれども、今日はそのままにすることにしたのだった。明日、寮の管理人に話を聞けばいいか、と思い。

 そのあと、ルシゼエルがシャワーを浴び、出てきて服を着てベットの上に寝転んでゆっくりとする。

 すると、部屋の外のドアをノックする音が聞こえてくる。

 なので、ルシゼエルはドアを開ける。

 ドアのそとには、メイド服を着た少女がいたのだった。


「あっ、あの生徒会長のマリエッタ様に食事をお持ちするように言われて持ってまいりましたリスシタです。

 よくリスと呼ばれていますので、リスとお呼びください」

「わかった。どうぞ」


 と、リビングに案内するルシゼエル。

 リスはリビングにあるテーブルの上に、料理を並べだす。

 リスは、リスと呼ばれているだけあって、小動物のリスに似ている。身長は低く、黒目がくりっとしている。髪は濃い茶色で長く、下の方で一本縛りにしていた。食器を並べたりするときに、一本に縛られた髪がゆらゆらと揺れる。

 並べられた料理をみると、それなりに豪華だった。ローストビーフにシチュー、サラダ、パンがあった。1人で食べきれないくらいとても多い。

 リスは皿を並べ終わると、


「終わりました。

 他に何かお手伝いできることはありますか?

 なんなりとお申し付けください」

「いや、大丈夫だよ。

 食事を並べてくれてありがとう。

 じゃあ、もうメイドの部屋に戻って大丈夫だから」

「あっ、いえ、そういうわけには……いかないのです。

 というか、私の部屋はあそこなのです」


 と、リスは人差し指でドアをさす。鍵がかかっていた部屋だ。

 ルシゼエルは、意味がわからず、はあ?、という表情になる。

 リスは恥ずかしそうな顔でモジモジしながら、


「私はゼエル様の部屋で一緒に暮らしながら、つきっきりでメイドをすることになりました。

 精いっぱい頑張ります。

 なので、学園のメイド室に行くことはできないのです」

「いや、初めて聞いた」


 と、驚きの声をあげるルシゼエル。そして、続けて、


「誰に命令されてそんなことに?」

「私は魔王ルキフグ城で命令されてここに来ました。

 私はルキフグ様からゼエル様への贈り物になります。

 それと、ルキフグ様から手紙を預かってまいりました」


 と、ルシゼエルに手紙を差し出すリス。

 ルシゼエルは手紙を受け取り、封を切って、読み出す。

 内容を要約すると、


『どうやら正体不明の敵のグループからスズを守ってくれたようだね。

 そのお礼としてメイドをプレゼントをする。自由に使って欲しい。

 ちなみにメイドは奴隷として売られていた天使になる。

 奴隷から解放するということを君は考えるかもしれないがやめておいたほうがいい。奴隷から解放されても行く場所もないから、悲惨な目にあうことは目に見えている。

 なのでオススメは君が奴隷メイドとして使うことだ。それなら、俺がが面倒を見ている君の奴隷として俺の庇護を受けることができる。

 まあ、奴隷メイドは君にあげたものだ好きにするがいい。

 それよりも、今後も、スズに問題が起こりそうだったらよろしく頼む』


 と、いうものだった。

 ルキフグは、学園に向かう一行が正体不明の敵のグループに襲われたことを聞いてから学園にリスを送ったらしい。リスは最短コースを通ってきて、先に出発したルシゼエルたちを追い抜いたのだと思った。ルシゼエルたちが安全な道を選び、遠回りし、ゆっくりと学園に向かっている間に。

 ルシゼエルは手紙から魔王ルキフグ城の国内に入ったときのことを思い出す。奴隷小屋で天使が売られていたことを。

 メイド服になり、化粧や髪型が変わっているので気がつかなかったが、そのときの天使かもしれない。

 ルシゼエルはリスのほうを見て、


「最近、奴隷として売られていたか?」

「はい、売られてました。魔王ルキフグ城下の店舗で。

 なんでも天使は高級品らしくなかなか買い手がつかなかったのですが、ルキフグ様に買っていただきました。

 そしたら、ここに来ることになりました」

「どうして、奴隷に?」

「天界に住んでいるときに急に行政官が変わり治安が悪くなってしまって……。

 そしたら、私が住んでいた小さな村に住が盗賊に襲われ、さらわれてしまって、売られてしまうことに。

 こんな魔界に来て、下等な悪魔なんかのメイドにされるなんて……」


 と、昔のことを思い出しながら話をするリス。

 だが、流れに乗って悪魔のことを『下等』と思っているという本音が出てしまったらしい。天界に住んでいる者は、魔界や人間界より天界のほうが上位と考えるのが普通になる。だから、そういった表現をするのは当然といえば、当然になる。ルシゼエルは悪魔になっているが、天使として天界で住んでいたときのほうが長い。だから、リスの気持ちはよくわかる。

 だが、魔界にいるにもかかわらず、魔界にいる者を悪く言うのはよくない。話した相手や場合によっては、殺されたり、なんらかの罰を受けることもあり得るかもしれない。場合には、リスの主人であるルシゼエルも面倒なことに巻き込まれるかもしれない。

 なので、いちお注意をしておこうとルシゼエルは思い、


「『下等な悪魔』とかそういう表現はやめたほうがいい」

「す、すすすすすみませんっ、すみませんっ、すみませんっ」


 と、申し訳なさそうな顔であやまる。

 そして、スカートをぎゅっ、と握り、つらいものを待つような表情になる。

 ルシゼエルはリスの行動を不思議に思い、


「どうした?」

「すみませんっ、すみませんっ、すみませんっ」

「いや、なんで謝るんだ?」

「すみません、ゼエル様に注意をされることを言ってしまったので、はたかれるかと思いまして」

「いや、そんなことはしない」

「本当ですか?」

「本当だ」

「足とかにあざがあるけど、そういった理由ではたかれたあざなの?」

「そう……、いっ、いいいえ、違います。

 ここここここここれは、あれです、あれっ、転んだときにできたものです」


 と、明らかに嘘をついている雰囲気で言うリス。

 ルシゼエルは誰にだって隠したいことがある、と思った。なのでこれ以上はあざについて聞かず、話題を変えようとルシゼエルは思い、


「食事は食べた?」

「はい、パンをちょっと……」

「もの足りなかったなら、一緒に食べよう」

「えっ、いいのですか?

 あっ、いえ、その……、魔王ルキフグ城でメイドの研修を受けたときにご主人様におねだりをしてはいけないと……言われてまして……」

「大丈夫だよ。心配しなくて。

 今は、2人しかいないのだから」

「……、あっ、ありがとうございます。

 ご好意に甘えていただこうと思います」

「そうしてくれ」


 と、言ったあと、椅子に座るルシゼエル。

 ルシゼエルはリスにも椅子に座るよううながし、リスも椅子に座る。

 リスは食器に食べ物を小分けして、食べ出す。ただ、リスは無理して食べているようだった。

 ルシゼエルは、不思議に思い、


「料理はまずい?」

「まず……いいえ、とてもおいしいです」

「いや、嘘はつかなくていい。

 おそらく、天界と魔界では料理の味が違うんじゃないかい?」

「実はそうなのです。

 魔界の味は天界とスパイスというか風味が違ってて。

 それに、天界では食べてなかったような食材が入っていたりと、食べようかどうか悩んだことは何回もありました。

 けれども、食べないと体が持たないので無理して食べているのですが……」

「なるほど」


 と、頷くルシゼエル。

 実はルシゼエルも同じことを思っていたのだった。やはり長年食べてきた天界の食事を恋しくなるときがある。天界に復讐を果たしたい、と思っていても、慣れ親しんだ習慣とか食事をすぐにやめることは難しかった。よく故郷を嫌で飛び出したが、食べ物が恋しくなる、というものと同じようなものだろう、とルシゼエルは思った。


「この部屋のキッチンで天界の料理を作ることができないかな?」

「おそらくできると思いますが……どうしてですか?」

「学園での俺の専門は天界の研究にしようと思っている。

 だから、参考に天界の料理を食べたいと思ってね」


 と、天界の料理を食べたい理由をごまかして伝えるルシゼエル。

 ただ、ルシゼエルが専門にしようとしているのが、天界の研究というのは本当だった。天界のことをよく知っているので、天界の研究であれば楽でいいと思った。だから、天界の研究を専門に選んだのだった。

 それに、ルシゼエルが学園にきた本当の理由は、禁術魔法の取得になる。禁術魔法とはまったく関係のない天界の研究を専門にすれば、いいカモフラージュになると思ったのだった。

 一方、リスは嬉しそうな顔になり、


「わかりました。頑張って作ります……あっ、でも、魔界の料理になれているゼエル様のお口に合いませんがいいのですか?」

「いや、そんな心配をしなくていい。

 俺にとってまずくってもかまわない。

 研究ためだ。

 無理のないように作って欲しい」

「わかりました。

 ……けれど、なんでゼエル様はそんなに私に優しいのですか?

 あっ……まさかあのっ…………こ、ここここのあと…………」


 顔を真っ赤にしながら、言うリス。

 なので、ルシゼエルは不思議に思い、


「どうした?」

「しょ、しょしょしょしょ初夜をむかえることに……」

「なぜそうなる。

 というか、『初夜』という言葉の使い方を間違っている」


 やや怒り気味に、語気を強めて言うルシゼエル。

 リスにはすでに自分の世界に入ってるらしく、ルシゼエルがどんな雰囲気で言っているのかが聞こえていない。


「魔王ルキフグ城でメイドの研修を受けたときに、最初の夜に襲われるからちゃんと準備をするようにと……、私は……そういうことは初めてなので……。

 私は幸いにも魔界の悪魔なんかと違って、貴重な天使だったので奴隷売り場でも丁寧に扱われてそんなことをされませんでした。なので、優しくしていただけると……。

 いえっ、すみません、ご主人様に逆らおうっていう気持ちがあるわけではないのですが……、奴隷になったときにこうなるだろうってことはずっと覚悟してきましたから……。

 準備は万全で……ゼエル様が来る前にしっかりとシャワーを浴びてありますので……大丈夫です」

「どんな教育を受けたのかわからないが、俺はそんなことをしない」

「えっ……、もしかして私が考えている以上のことを……?

 私の体が耐えられるかどうか……」

「目を覚ませ! 俺はそんなことをしない」

「じゃあ、じゃあ、じゃっ…………えっ……?」


 と、ようやく自分の考えていた方向と違うことをルシゼエルが言っていることに気がつくリス。

 ルシゼエルは、ようやくわかってくれたか、と思い、


「俺はリスに手を出さないから安心してくれ」

「けど、それって……、私に魅力がなくってことに……。

 ひどいことをされる前触れ……」

「なぜそういう話になって、急に怯える」

「メイドの研修を受けたときに、男のご主人様だった場合に手を出されなかったら……、気に入られなかったことに間違いないと……。

 その場合、奴隷メイドに待ち受けている運命は……、とても悲惨だと……。

 それは、9大魔王メイド協会の調査でも明らかだと……」

「9大魔王メイド協会ってそんあんがあるのか。

 けど、大丈夫だ。

 それに、俺はここに今日きたばっかりだから、もう疲れたから寝る。

 リスももう好きにしていいよ」

「つまり、夜這いにこいと……。

 自分は否定したけど奴隷メイドが無理やり襲ってきたことにしたいってわけなのですね」

「違う」

「だって、ちゃんと異性としてアピールをしておかないと、私の運命が心配で……」

「わかった、わかった。

 もう、俺は自分の部屋に行くから」


 と、リスの相手に疲れたので部屋に向かうルシゼエル。

 おそらくリスはご主人様であるルシゼエルから気に入られないと大変な目にあうと思っているらしいし。体罰とか、いろいろと。下等だと思って、嫌っている悪魔に対してご機嫌を取らなければいけないくらい。

 いや、もっと言うと、もしルシゼエルから嫌われてそとに出されたら、生活する場所がなくなり生きていけないということもある、と思っているのだろう。

 それに加えて、ここに来る前に魔王ルキフグ城で行われたメイド研修で、奴隷メイドとはこうあるべきで、ご主人様とはこうだとしっかりと相当しっかりと教育を受けてきたことを推測できる。なのでルシゼエルがリスが言ったことを否定しても、無視して、思い込みで話を進めていく傾向にある。

 まあ、そういった行動は徐々に治していけばいいか、とルシゼエルは思った。いっきに治そうとする必要はない。疲れるだけで、身に危険がある、というわけではないだろうから。

 そして、ルシゼエルは、部屋に入り、ドアを閉めちゃんと鍵をかけたのだった。

お読みいただきましてありがとうございました。


今後も読んでいただけるような小説を書けるように頑張っていきます。


どうぞよろしくお願いします。

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