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プロローグ
――この世に、悪魔は存在しない。
もし、存在するなら必ず現れるはずだ。
ここに、自ら望んで悪魔に魂を差し出したいと思っている者が存在するのだから。
悪魔は人の魂を搾取する存在だと何かの本に書いてあった。
にもかかわらず現れないということは、存在しないのだ。
それでも、本当は信じて止まない。
悪魔と契約を結んだ者は、魂を差し出す代わりに、何でも願いを叶えてくれるのだと何かの本に書いてあった。
たったそれだけのことで願いが叶うなら、存在して欲しい。
望んだ人生が手に入るなら、魂など惜しくはない。
このまま生きていたって、決して幸せは手に入らない。
それじゃ、死んでいることと同じ。
だから、この世界で生きるためには、魂を捨てでも望んだ人生を手に入れるしかない。
死ななければ生きられない。
とても矛盾してると思うけど、人はそもそも存在自体が矛盾しているのだから仕方のないことなのだ。
ああ、悪魔よ。
早く現れてこの罪深き者を殺しなさい。
人の願いを聞き入れないのならば、せめてこの世界から解放して欲しい……。