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引き裂かれた家族

紅虎(フォンフー)が産まれたのは、周囲を暖かな海に囲まれた小さな島国だった


文明は遅れていたが、他国からの侵略を受けず、独自の文化が発達していた


魔獣と共存する、珍しい国だった


紅虎(フォンフー)の父は紅い毛皮の虎の魔獣


母は、国で有数の戦士だが、ごく普通の人間の女性だった


魔獣と共存する国とは言え、魔獣と人間との婚礼は珍しく、様々な問題もあったが、両親は驚いたことに心の底から愛し合っていた


両者の長が長い討論の末、魔獣と人間との本当の架け橋になるべく許されたのだった


夫婦となった二人は、三人の子をもうけた


二人目の子として産まれた男の赤子は、小虎(シャオフー)と名付けられ、姉と妹と共に元気に成長した


子ども達は皆母のように人間の姿をしていたが、父と同じ燃えるような紅い髪をしていた


そして、魔獣である父から強靭な体と人間離れした身体能力を受け継いでいた


特に、小虎(シャオフー)は父の能力を超える程の潜在能力を宿していた


いずれ、国を守る立派な戦士になるよう、国中で愛され育てられた



しかし、その幸せな日々は突然壊された


海から来た大きな船には、沢山の銃火器が積み込まれ、訓練された兵士達が大勢で攻めてきた


小さな島国だが、豊富な地下資源を有しており、それが他の国の目に留まってしまったのだ


魔獣と共存しているといっても、文明の差は大きい


王は殺され、魔獣達も次々と倒れていった


小さな小虎(シャオフー)達兄弟は、母の手によって地下の倉庫に押し隠された


戦いに参加しようとする小虎(シャオフー)に、姉と妹を守るよう固く言いつけ、父と母は敵に立ち向かっていった


立て込める煙、刃物が打ち合う酸っぱい空気、鳴り響く轟音、戦士達があげる咆哮


幼い子供達は、互いに身を寄せて息を潜めていた


どれ程の時間が経ったのか、気付けば眠ってしまっていた


長い緊張と、不安に疲れきっていたのだ


足音が近付いてくるのに気付くのが遅れてしまった


「おい、みろよ。このガキ共、人間じゃねぇぞ」


必死に抵抗しても、幼い子ども達ではかなうはずもなく引きずり出されてしまった


外は、ひどい状態だった


家は焼け崩され、そこいらじゅうにものが散乱している


漂う血の臭いと肉の焼ける臭い


恐怖に竦み上がる小さな子ども達を、兵士達は自分達の長の前に引きずり出した


「ほぉ、魔獣と人の混血か」


物珍しそうな目が、値踏みするかのように身体中をすべる


「良い拾い物だな、高く売れそうだ」


顎に手を掛けられ、強引に上を向かされた


怖かった


父と母が助けに来てくれるのを祈った


視界の端に紅いものが映り、父が助けに来てくれたのだと思った



しかし、それは無惨にも毛皮を剥がれた父の姿だった


あの強かった父が、人間の手によって殺された


目の前が真っ赤になる


体中の血が沸騰しているかのように熱い


腹の底から低く響く唸り声


「ぎゃあぁっ」


顎に手をかけていた男に飛びかかった


喉元を噛み千切ろうとし、もみ合いになる


破裂音が耳に届くと同時に肩に熱い痛みを感じた


肩を銃で撃たれたとわかったが、すぐに意識が薄らいでしまった





ぐるぐると目が回る、ひどい気分だった


途中で、意識がはっきりしそうになる度に麻酔銃を撃ち込まれた


どこをどう運ばれたのか、気付くと檻の中だった




地獄の日々の始まりだった


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