第二話-「食べ物の好き嫌い、姫に有り」
○ラールド○~フルミネア王国王宮内「来客擁路」及び「水の間」にて~
ここ来客擁路は、来客の入れる玄関口から続いている唯一の通路であり、大抵の来客はこの通路と、ここから繋がる客間の水の間-命名理由は、フルミネア人の髪の毛がほとんど蒼いから-にしか入れない。
そして、平執事の身分である僕がなぜ来客擁路にいるかというと……。
「ラールド!手伝いを頼む!いや、早く!手ぇ死ぬ!」
と、体は小さいが心は寛大な僕の義理の父である執事長のシェイスが悲痛な叫び声を水の間からあげたのだ。
元々僕は女王……というか、ラテア様付きの執事なのだが、なにせお優しい姫の事なので。お着替えや身の回りの事を全て自らなさる。なんでも、ご自身の世話の為に民を仕えさせるのは気が引ける、のだそうだ。
そんなこんなで侍女1名と執事2名と召使約30名でこの王宮はほとんど成り立っている。
だがそのせいで僕ら執事などでさえも、姫のおやつ当番が無い限り今日の姫のご生誕パーティーのような式典の際は準備に駆り出されてしまう。
普段ならここで、幼馴染みで唯一の侍女のサティに愚痴を言いまくるのだが、なんと悲しい事に彼女はこのクソ忙しい日に限って姫のおやつ当番だった。心の奥底で小さく毒づくと、それでも手を休めずに黙々と作業を続ける。
その時だった。大人の男の人の、叫ぶ声が聞こえた。水の間の更に奥、多分大臣控え室からだ。
「この声は……シェイス様っ!?」
余談だが、いくら父とはいえど王宮内、というか仕事中はお互いシェイス様、ラールドと呼び合わなくてはならない。
急いで大臣控え室に向かうと、そこにいたのは明らかに真っ青な顔でうろたえるシェイスの姿。
「とっ……シェイス様、何があったのですか!?」
「ラールド……やべぇよ、食料が……全部、無くなっている……」
その言葉は、あまりにも簡潔で、だからこそあまりにも馬鹿馬鹿しくて。
「そっ……そんな馬鹿な!一体誰が……!」
「そんなこと分かってりゃあ、とっくに捕まえてるよ……」
「それもそうですね……」
「お前……なんかねぇのか?心当たりとかよぉ……」
「心当たり……?そう言われましても……あっ」
僕はある可能性に辿り着いた。
「姫は今日のパーティーの食事について何かご志望はありましたか?」
「え?あ、いや……無かったと思うが」
「姫って、あまり周りに言いませんけど……アレルギーをかなりお持ちなんですよ。とくに小麦とか」
「なっ……まさか、ラールド!」
シェイスにも、僕の考えている事が伝わったようだ。
「そうです、シェイス様。きっと、今回の食事に多分……アレルギーで食べる事の出来ない物が多く含まれていたのではないでしょうか。もしかして……主食がパンだったとか」
「そうか……ラールド、姫の捜索を頼む。俺は今日の食事を、アレルギーを考慮しもう一回注文してくる」
「ハッ!」
また僕の仕事が増えたな、と思ったが、やはりアレルギーで食べる事が出来ないというのは辛い。
姫が王宮から出たとは聞いていないので、とりあえず自室に向かってみることにした。
コンコン、とドアをノックすると、部屋の中からガタンッという音とともに、
「だっ、誰じゃっ!」
という声が聞こえた。
「姫、ラールドです。」
「ラールドか……入れ」
そこには、涙で顔を濡らしたラテアの姿があった。
「童の食べる事の出来ないものばかり……」
しかし、僕にも少しアレルギーはあるが、二人ともそれは生まれつきではない。
幼い頃の、ある事件が理由だった-……。
姫は小麦無理なんですって!
それじゃあほとんどの物食えねぇじゃないk(ry
ちなみにゆるはアレルギーが一つもありません!
超・健康体☆←