第一話-「空の先に見えるかも知れない運命」
☆ラテア☆~フルミネア王国王宮内「会議室」にて~
「……では、アルアードを攻める……と?」
「いや待て、まだ攻めるとは言っておらんじゃろう。童が言いたいのは、いかにしてアルアードに責任を取らせるか、ということだけじゃろうて」
「はっ、申し訳ございません!」
今私は、フルミネア王宮会議室-正式名称を光の間という-にて会議をしている。何故かというと、隣国アルアードが、私の許嫁でフルミネア王宮に向かう途中だったルームラス教国王子リアスとその妹リネアを兵力により一時的に拉致した事についての追罪、及び言及。最近アルアードとの関係は、はっきり言って良くない。その理由はやはり、アルアード王国王女ルミナスがリアスにご執心としか言いようがない。
しかし、当の本人のリアスはというと、
「本当、拉致された時はどうなるかと思ったぞ。いきなり私の夫になれ、とか意味の分からん事を言いおって。私は言っているであろう、ラテア以外眼中にない、と」
とのことだ。ちなみに、とてつもなく語尾が古いが、決しておじさんでもおじいさんでもない。むしろ青年である。かくいう私も、じゃ、とか、じゃろうて、とか言っている時点で充分におばさん、またはおばあちゃんくさいのだろうが、無論それを誰も言ってこない。
「して、如何致しますかね?姫」
「んー……アルアードは一応同盟国じゃろう、話をしてみんことには分からんのう」
「しっ、しかし姫!今対談をなさるのは……!」
「なに、ちょうど良いことに明日、フルミネア・アルアード・ルームラスの三国同盟の会談があるのじゃ」
「そっ、そのような話は聞いておりませんが!」
「それもそのはずじゃ。なにせ、この会談は非公式なのじゃから」
「……承知致しました。しかし姫、貴女の命は誰よりも尊い物なのですよ」
「分かった分かった」
面倒くさそうに頷くと、3時を示す鐘の音が聞こえた。
「リアス、この鐘はどこから聞こえているのじゃ?」
「ああ、これはハクアーツだよ」
「ハクアーツ……じゃと?ほほう、まあよい。ラールド!」
まあよいと言われてしまったルームラスの爽やかイケメン王子リアスはふてくされ、代わりに猛ダッシュの少年が目の前に跪く。
「ハッ、お呼びでしょうか、姫!」
「ああ、よい、そのように畏まるな……ああそうか、リアスがいるのか」
「お客様の前で、失礼な格好は出来ませんので」
「よいよい、リアスの事など意識せんで。それよりラールド、今日のおやつは何じゃ?」
「はい、本日のおやつは綿菓子という、遠い異国の島国にて、祭事によく食されるものでございます。……では、私は仕事があるのでこれで」
言いたい事だけ言うと、ラールドは光の速さで光の間を出て行こうとする。
「ああ待て、待てラールド……」
「ハッ、何か」
「サティはどこだ?」
「もうじき綿菓子を持って来るかと」
「そうか・・・分かった」
サティは親のビバルと共にこの王宮には珍しい、というか二人しかいないアルアード人なのだ。折角だからサティにアルアードについて聞こうか、そう思っていると、執事の1階級下の召使がやってきた。執事は執事長のシェイスと平執事のラールドしかいないし、侍女にいたっては侍女長サティただ一人である。召使はその1階級下なので、当然名前など覚えているはずがない。覚えているとしたらその人はまず間違いなくクビか昇格か、もしくは幼馴染みか。
「女王様!」
ちなみに余談だが、私に近い者と国民は私のことを姫と呼び、親衛隊と城下町の商人と各地区領主はラテア様と呼び、召使や衛兵、駐屯兵は女王様と呼ぶ。
「なんじゃ、騒々しい」
「す、すみません。……あの、先程衛兵が不審者を捕らえたのですが……」
「ほう?」
「こちらです」
「っ、おい!俺だよラテア!助けてくれ!」
「……」
知らない訳ではない。呆れたのだ。
大柄は衛兵四人に抑えられ、それでもなお、もがく男性。否、男子。
「……バリバ」
「ラテアぁぁ!」
「女王様、こいつとお知り合いで?」
「ああ、城下町に住む幼馴染みじゃ。剣の腕に自信があるのじゃぞ。……なぜバリバがここに?」
「至急報告があって……」
「全く……よい、放せ」
「ハッ!」
大柄な衛兵達がバリバから離れ、跪く。
「……で、どのような報告じゃ?」
「私も参戦したのですが、先程アルアード国一等兵が国境門まで来ていました。きっと、リアス様を狙っていると思われます。そちらの方は我々城下町警備隊と衛兵で追い返しましたが、近いうちに国全体の総力でまた向かってくるに違いありません」
「ふむ……そうか。シェイス、彼を親衛隊隊長にしてくれ。作戦の指揮を執らせたい」
「かしこまりました。よろしくお願いします、バリバ隊長殿」
「あっ……有り難き幸せです、女王様!」
「あ、いや、親衛隊長殿だ、童の事はラテアで構わん」
「……有り難き幸せです、ラテア様!」
そこへサティがトレイを持ちやってきた。
彼女は二人の幼馴染みに、少々不機嫌な顔で言葉を発した。
「あの……バリバ、姫、いい雰囲気のところを失礼しますが、おやつをお持ち致しました」
「あっ……もっ、もうよいであろう、下がれ!」
「は、はいっ……」
周りでは、焦る子供二人を笑う声がする。
「はははっ、ラテア、そう焦るなよ。焦って変な噂を立てられると、僕の結婚が危ぶまれるからね?」
「ばっ、バカリアス!」
「姫、少しは立場をわきまえて下さいね?」
「は、はい……」
侍女長サティに説教される、女王ラテア。
「……本日のおやつは綿菓子でございます」
「そうか。……ラールドも呼んで、三人でお茶にしよう。今頃は童のパーティーの準備で忙しそうだからな」
外でお茶にしようかな、などと思いながら見上げた空は、不吉なほどに暗かった。
そう、それは本当に、これから起きる出来事全ての予兆だったのである。
疲れたぁぁ!
これを1時間で仕上げてますww
えーと、また来週頃に第二話あげたいと思ってますノシ