閑話/アイシア・ファルク・リーン・ラッツフィラー(後)
ちょいエロ?シーンあり。
引き続きでキャラ崩壊注意(笑)
馬車での出来事からいくばくか時間も経ち、現在は宿泊予定の宿に到着しています。元々宿泊の話もついていましたが、多少強引な手段を使い女性も同室で泊まれるようにしました。
そして部屋に入ってから、女性はすぐにソファーへ沈んでいきました。色々あって、疲れたんでしょうね。
ちなみに、女性も馬車で少しだけ復活したので、互いに自己紹介を済ませています。
私、『アイシア・ファルク・リーン・ラッツフィラー』、近衛騎士第二師団団長である『ディオルド・ローウェル』、そして異世界から来た女性『カリン・ナナカワ』。
三人だけでしたが、言葉が通じるのなら名前で呼び合ったほうがいいです。だって、そのほうが素敵だと思いますから。
私はカリンの向かいに座り、何度か言葉を交わしてから馬車での話の続きをするという流れになりました。途中、少し恥ずかしかったことがありましたけど、同時に少し嬉しいことでもありました。……ただ何となく、残念な気分になってしまいましたけど。
それからの話は、まずこの世界の事を教えてほしいということだったので、一般的な知識での地理――大陸の事と各国の名前や位置などを話しました。
途中、地図がないことで少しだけ不便な部分がありましたが、そのおかげで何故かカリンに頭を撫でてもらえました! 凄く気持ち良くて、胸の辺りが温かくなりました。
でも、カリンはそんな拙い私の説明でもちゃんと理解をしてくれたようで、各国の力関係や特色などをすんなりと知識に吸収してしまいました。その説明の中で、特に魔族や獣人族、豊葦原の話題で瞳を輝かせていたのが、見た目に反する表情で抱きしめたくなりました! 我慢した私を褒めてあげたいです!
ここで気付いたのですが、カリンは見た目が凄い『美人』なのに、人物としては『可愛い』という印象を与えるのです。それに戦っていた時には『カッコイイ』でした。本当に、カリンは魅力的な人だと思います!
そして話題はさらに進んでいき、魔法の事になりました。
……うふふふふ、魔法は私の得意分野です! ここでカリンから、いっぱい褒めてもらえます!
しかし聞けば、カリンと言葉が通じるようになったのは『神鳥』が魔法をかけたから、という事でした。さ、流石に『神鳥』とは、比べれないですよ私でも。
順調に魔法理論の原理などを説明していくと、カリンの言葉の中に『やっぱり』などの魔法を知っていると思われるものがありました。……カリンの居た世界にも、魔法があるんでしょうか?
ただ、途中魔法理論にある『とある一文』を言うと、きょとんとした表情をしました。でもカリンはそのタネにすぐ気付いて、しかも意味も正しく理解してしまいます。あの言葉を曲解する人は、初心者には実は多いのですけどね。……そうならないように、きちんと説明もしましたよ? 私はカリンに、正しくきちんと説明して褒められたいんです!
「魔法って、決まった呪文を唱えたり〜とかするものじゃないの?」
やがて魔法の特性分野に差し掛かった辺りで、カリンが唐突にこう質問してきました。むぅ……こんな質問をするなんて、やはりカリンの世界には魔法があるんでしょうね。
「いえ、基本的には、何も言葉にしなくても魔法は使えますよ」
しかし私がこう解答すると、何やら驚いたようながっかりしたような表情を浮かべた後、カリンは少し考え込んでしまいました。
も、もしかして、私のせいで落ち込んでしまいました!? 嫌です! カリンには、笑顔で居てほしいんです!
なんて考えていたら、普通に「なら魔法はどう使うのか?」と、質問をしてきました。……よかった、落ち込んだわけじゃなかったんですね。
「えっとですね、魔法というのは魔力を使ってというのは、先程言いましたよね?」
魔法使用の理論を話す前に、私は前置きとしてそう確認を取りました。そうしたら、カリンは首を縦に振りました。……あぁ、可愛い……。食べちゃいたいです、カリン……。
――ハッ、私は何を!? 何か変な思考が入り込んできたのを打ち払うように、私はカリンに魔法使用の理論を話しました。
「一般的に確立されている原理で言えば、『魔力』で『想像』を『制御』して具現させたもの、それが魔法……ということです」
しかしこの魔法使用の理論というのは、少し無駄に難しく書かれています。慣れている人には理解出来ますが、まず初めて聞く人には理解されません。
そしてカリンも例に漏れず、『よく分からない』と顔に書いてありました。あぁ……この場に教材があれば、話は別なんですが……。
そんな愚痴のような言葉が、ぽろりと口から出てしまいました。しかしカリンは、そんな私を慰めてくれるどころか、申し訳なさそうに謝ってきたのです!
カリンは悪くありません。悪いのは、小難しい言葉を好む研究者達です! それに、実演を交えればもっと分かりやすく説明出来ます。カリンの期待には全力で答えます! だから上手く教えられたら、私を褒めて頭を撫でて下さい!
とは思うものの、流石に室内では使える魔法は限られてしまいます。なるべく危険が無く、かつはっきり目に見えるもの。……となると、明かりを作るぐらいが調度いいですね。
そう『考え』、『魔力』を使うと私の掌には小さな光球が現れていました。それを見て、カリンは今まで以上に瞳を輝かせたのです。
「今私は、光球を『想像』しながら『魔力』を使いました。そしてその『想像』は、『制御』された『魔力』によってこうして具現化されたというわけです」
カリンの可愛い姿に、私はちょっと得意げに説明をします。現象がある分、多少理解だけのものより分かりやすいと、そう思ったのです。
しかしカリンは、私の考えを遥か飛び越えてしまいました。
「……ふーん、なるほどなるほど……」
私の説明を聞きながら光球を見ていたカリンの瞳には、はっきりと『理解』の色が現れていました。
確かに現象があれば、格段に分かりやすくなります。でも、分かりやすくなるだけでもあります。これでしっかり色んな部分を『理解』するなんて、同じ段階の魔法士見習いに一人か二人、居るか居ないかです。
しかも、次の質問は一段階上の疑問であり、それが来たことに驚いて答える前に少し吃ってしまいました。そして次々とされる質問も、さらに一段階、さらに一段階と、上の疑問になっていっていました。
最終的には、魔法士見習いの基礎である『反復練習における制御の上達』というのを、自力でたどり着いてしまいました。
魔法士見習いによくある事ですが、その才能――すなわち『魔力』が多いだけで、簡単に魔法を使えると思っている者が多いのです。しかし、魔法というのも武術と同じく『身体』に染み込ませるもので、それを怠れば満足な魔法は使えません。……私も、そういう道を歩んで来ましたし。
そんな風に色々と思考を巡らせていると、カリンが「わたしも魔法が使えるの?」という質問をしてきました。私としては、何を今更という感じなのですが、聞けばカリンの世界では『魔法』を使えないという話でした。
そこで私は、あの山賊と戦っていた時のことを話しました。するとカリンは凄く驚いた表情を浮かべ、最終的には何かを納得したような表情になっていました。そして私も、一つ納得したことがあります。
カリンは元々、格闘術が使えます。しかもかなりの強さでした。それならば、先程の魔法理論関係での理解の早さも、納得がいくといものです。
でもそれは、次の話題で勘違いだと気付かされました。
魔法について説明を終えた私は、カリンの問い掛けに応じて『他言無用』という約束を取り付けてから話し出しました。
あの襲撃での顛末を、事細かというわけではなく、さりとてざっくばらんでもなく。重要な部分をかい摘まんで説明をした後、カリンから言われたことは寝耳に水……いえ、見ないようにしていた事だったのかもしれません。
「ねぇアイシア、御者ってどういう風に選ぶの?」
何か確信がある、という雰囲気で言われた言葉に、私は少し圧され気味に説明を返しました。
「え? あ、王家に昔から付き合いのある専属の家系の者を登用するのが、普通ですね。もし何らかの理由でそれが出来なければ、貴族の人達から――」
……そこまで情報を出されれば、疑うのは簡単です。御者の一族は、そもそもその仕事を名誉に思っているので、例え主――この場合は王族ですが……その主に『お前は逃げろ』と言われても、むしろ主を逃がすために死力を尽くすでしょう。
つまりこれは、貴族の誰かが『第三王女』を狙ったと考えるのが、普通ということです。
「それで、今回はどうなってたの?」
「あ、あの……詳しくは王都に戻って調べない限り、分かりません……」
カリンの言葉にも、私は若干歯切れ悪く答えるのが精一杯でした。
でもカリンは、私が無事で居たことだけで今は良いと言ってくれました。
……確かに、この国、この大陸、この世界と何の関係もないカリンは、その事実以外には重要じゃないのでしょう。その、私の身を案じてくれるという気持ちが、私には堪らなく嬉しいものでした。
そしてカリンは、暗くなってきた空気を吹き飛ばすように、お風呂に入ろうと言いました。しかも、一緒にです!
なんというか、少し心の準備が足りない気持ちもありますが、これでも王女。覚悟を決めて、裸の付き合いを致しましょう!
「うわぁー、アイシアって以外と胸あるんだね……。着痩せするタイプだったんだ」
「そ、そういうカリンこそ……大きくて張りがありそうで、綺麗じゃないですか」
「そう? ありがとう。でもさぁ、やっぱり王女様だよねぇ……ホントに綺麗だわ」
部屋付きの浴場は、しかしかなり大きなものでした。元々それが故に最上級の宿なんですけど、それでも造りが中々凝っていました。
でも私は、そんなお風呂よりも目の前で惜し気もなく晒されている、カリンの綺麗な身体から目が離せないでいます。
傷も染みもない肌。色香を匂わせるうなじや鎖骨。ツンと張りを主張する豊満な胸。すらりと流れるくびれ。丸みを帯びたお尻。そして女性の大事な場所……。
そんな全てが目に入ってきて、しかも隠す気もないようなので、私の鼓動はカリンに聞こえるんじゃないかってぐらいに煩くなってしまっています。カリンの瞳が私を見るたび、何故かキュンとなって切ない気持ちになります。
……どうしたんでしょうか、私は。カリンと出会ってから、何かおかしいです……。
「ねぇアイシア?」
「ひゃい!?」
変な事を考えている時に呼ばれ、何ともみっともない声が出てしまいました。カリンはそれに一瞬キョトンとしてから、声を上げて笑いました。
「あはははは! ちょっ、アイシア、変な声で返事しないでよっ!」
「か、カリンがいきなり声をかけてくるのがいけないんです! そ、それで、何ですか!?」
「あはは……あー、あのね、くくっ……あの、こっちのお風呂の入り方ってどういうのかなって、聞きたくて」
未だ小さき笑うカリンに、私は拗ねたように頬を膨らませます。自分でも子供っぽいと理解してますけど、そんな膨らんだ頬をカリンが突くからちょっと嬉しいやら恥ずかしいやら、よく分からなくなりました。
「もうっ、カリンのバカ……!」
「ごめんごめん。ちょっと不意打ちだったからさ、堪えられなくて。許して下さい、この通りです」
「ははぁー」なんて言いながら、両手を上げたまま腰を折って謝ってくるカリンは、誠意なんかこもってないのに許してあげたくなります。こんな対応をする人は、私の周りには今まで居ませんでしたけど、何か楽しいです。
だから私は、その気持ちに従ってカリンの背中を人差し指でつつーっと、一撫でしました。
「ひゃ、うぅんっ!」
そうしたら、いきなりカリンはこれまでの印象を吹き飛ばすような、なまめかしい声を出してビクンと反応しました。その声を聞いて、私は背筋がゾクゾクしたり胸が苦しくなったり、下腹部がキュンとなったりしてしまいました。
「こ、これで許してあげます」
という声も、ゆらゆらと揺れているものでした。どうやら、かなり動揺してしまったようです。
「うぅ……背中は弱いのよー……」
声に全然力がこもっていないカリンは、身体に違和感を感じるのかそわそわと落ち着きが無くなっていました。その様子に、私は思わずクスリと笑ってから、お風呂の入り方を教えることにしました。
そうして全て教え終わったら、カリンは「ほとんど変わらないんだね。よかったよかった」と言っていました。
やがて体を洗うことにした私達は、洗い場で二人並んで陣取りました。
「そういえばさアイシア? アイシアって、一人でお風呂入れるの?」
「それはどういう意味ですか? 流石に私も、そんな子供ではありませんよ」
「あー、そうじゃなくてさ……貴族とか王族って、そういうの侍女さんにやらせると思ってたからさ」
「……確かに、基本的にはそういう仕事を受け持っている者が行います。貴族の子女には、自分では何も出来ない人も居るらしいです。しかし我が王家は、生活に必要な事柄というのは基本的に全般出来るようにする、という教えがあります。なので、私は何も出来ない訳ではないんですよ」
「へえー、少し意外かも。……いや、色んな事を考えると、そのほうが王家としては普通なんだろうね」
「といっても、料理は出来ませんし、そういう仕事を奪うのに積極的ということでもありませんけどね」
「あはは、そうだよね。そういうのを奪うのは、責務ある立場だと単なる我が儘だもんね」
……やはり、カリンは頭がよく回る。こんな話をすれば、最悪金持ちの理論とか傲慢とか、色々言われる場合があるのに。
そう。そこで仕事が発生しているなら、雇い主が必要以上の行動をすれば皺寄せは雇われた側に言ってしまう。それはつまり『否定』であり、雇っている意味がないのだから。
「それならさ、背中を洗いっこしない?」
「背中を、ですか?」
「うん。りっちゃんとかまーりんとか、泊まりだとほとんど毎回するんだよね」
……りっちゃん? まーりん? 泊まり?
「……カリン、その『りっちゃん』と『まーりん』というのは?」
「わたしの親友二人だよ」
親友……。ということは、それほどその二人に気を許しているということですね? しかも、宿泊するような場合があれば、毎回裸の付き合いをしているということですか。
何か、そう考えると面白くないです。カリンが楽しそうに語るのが、さらに面白くないです。
「分かりました。しましょう、洗いっこ」
ふふふ……。安心してくださいカリン……きっと、いえ絶対、その二人よりも気持ち良くしてあげますから……!
実は前後でほぼ一気に書き上げました。
約8時間携帯をポチポチ(笑)
とりあえず、書き始め当初から考えていた幕間を出来て少しホッとしています。
一人称視点なんで、こうしないと補則出来ない部分があったんで……気分的に(笑)
ちなみに、アイシア姫の本気はこんなものではありません(爆)