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第三話/例えば異世界に来ていたとか分かってもどうすることも出来ないものだ。

サブタイトルが長い、説明回そのいちです(笑)


ちなみに、大多数の単語は適当に決めてます。

「改めて……先程は、我らが姫の危ない場面を助けていただき、誠にありがとうございます。そして早合点で攻撃をしかけてしまい、誠に申し訳ないことを致しました」

「あー、もうそれに関しては良いですってば。幸い、怪我はないんですから」

 目の前で、自分より一回りぐらい歳が上と思われる男の人に頭を下げられ、ちょっと辟易(へきえき)。何と言っても、この謝罪も何度目かになるからだ。

 あの戦闘――チンピラ撃退戦を繰り広げた場所から移動して、何故か現在馬車の中である。まぁ馬車とか言っても、全然揺れないわおっきいわで、なんかリムジンみたいなんだよね〜。

 ちなみに今謝ってきたのは、あの時の騎士さん。どうやらこの騎士さん、団長さんらしい。……いや、本人から聞いたわけじゃなくて周りが『団長』って呼んでたし、何の『団長』なのかは分からないけどね。

「それより、何がどうなってるか教えてもらってもいいですか? わたし自身、状況が全く分からなくて……」

 これ、純然たる事実。正直ぶっちゃけると、現実味がないんだよ。

「分かりました。命の御礼というには安いかもしれませんが、まずは私が今出来る限りで恩義に報いましょう」

 いやいや、そんな大仰な感じにしなくても……。何と言うか、ホントに演劇の世界に迷い込んだみたいだわ。

「私達はソルナーレ王国に――」

「はい、待った!」

 わたしの静止の声に、従ったというより驚いてといった感じで、女の子の声が止まる。――うん、話を振っておいて叩き折るなんて最低だと思うし、そうやって目を見開くというリアクションは間違ってないと思うわ。

 でもね、流石にこれは口を出さないといけない、重要な場面だと今の一瞬で理解しちゃったから。

「……ごめん、話の腰をいきなり折って。でもこれだけは、今確認しないといけないみたいだから……」

 自然、声が重くなるのを感じる。多分雰囲気とか色んなものも、真剣なものになってると思う。

 だけど正直、しょうがないと思うんだよ。だって、今さっきの体験とか空気感とか、色んな欠片(かけら)とも言えない欠片を繋ぎ合わせた推測が当たってたら、シャレにならないんだから。

「な、なんでしょうか?」

 動揺も最低限に返事をしてくれる辺り、この子はいい子だろうね。騎士さんなんて、不機嫌とはちょっと違うけど、そんな感じの堅い空気を一瞬で出したからね。

 でも、そんなの(・・・・)で怯んでなんかあげれない。だってこの質問は、まさに生きるか死ぬかがかかったものなんだから。

「ここは……日本じゃないの?」

「に……ほん?」

 はい、アウトー!! もう完全にアウトー! 今のリアクションは、全くもって『日本』なんて聞いたことがないとか言う、例えるなら“連絡網が回ってこなくて学校が休みとは知らずに登校したら門が閉まってた”ぐらいに、キョトンとしたリアクションでしたよー!

「その、『にほん』というのは知りませんけど、ここはソルナーレ王国とラッツフィラー王国の国境近辺ですよ」

 若干何を言ってんだこいつ的な空気を持つ言葉に、わたしは腹を立てるなんて考えは浮かばずに天を仰いだ。

「そーだよねー……薄々感じてはいたんだよ、何かおかしいってさ。さっきのも映画の撮影にしては生々しすぎたし、リアルにフルプレートなんて着てる人間が居るし。何より、言葉が全く聞いたことがないんだもん。いくら分からなくても、ヨーロッパ系の基本的な公用語なら何となく聞いたことある感じはするだろうしさぁ」

「あ、あの……いったい何を……?」

 凄い困った声が聞こえてくるけど、正直わたしはそれどころじゃない。答える気力も沸かないまま、天を仰いだ状態で目を閉じる。

 オロオロとした気配と訝しむような気配。それに全く動じていない気配をそのままに、わたしはしばらくそうしていた。

 結局、一分か二分か、もしくはそれよりも長くか短くか。……体感時間的には、わりと長めだと感じてたけどね。

 そしてそれだけの時間をかけて、わたしは顔をまっすぐ前に戻す。正面から、二人を見つめる。すると、女の子はホッとしたような表情を浮かべ、騎士さんは何故か少し驚いていた。

「……悪いんだけど、先にわたしの話を聞いてもらえないかな?」

 わたし自身、自分で荒唐無稽だと思うような、とても信じられない話をね。



「……以上で、わたしの話はオシマイよ」

 もうすっかり言葉遣いに気を使うつもりが無くなったわたしは、全てを話終えてそう締め括った。

 話した内容は、わたしがこの世界の人間じゃないということ、元の世界のこと、ここに来てしまった経緯などなど。……まぁ、どこの漫画やゲームだよって気分だけど、これが現実だっていうのはちゃんと理解してる。色々とツッコミたいことはあるけど、山賊をぶっ飛ばした時に生の感触があったし、空気とか匂いが本物だって訴えてるんだよね。

 でもまぁ、幸いなのか不幸の蓄積なのか分からないけど、盛大に取り乱したりしないのは多分今までの経験の賜物なんだろうなぁ。ぶっちゃけ凄く不本意だけど。

 のり君と生まれた時から幼なじみしてて、妬みやら逆恨みやらには慣れてるし、中学時代に荒れてた経験から荒事にも慣れちゃったし。しまいには、中三時代から色んな人に頼られて、誘拐やら脅迫やらストーカーやら犯罪事件の解決にも奔走したから、妙に度胸がついたというかスレたというか冷めてるというか……そんな部分があるんだよねわたしってば。

 そういう事件に巻き込まれたり首を突っ込んだりすると、両親は当たり前だけどのり君とお兄ちゃんがめちゃくちゃ怒って、長時間説教をコンビネーションしてくる。確かに、一般人がそういうことをする必要も義理もないけど、ほっとけないからしょうがないんだよ。

 とまぁ、わたしの黒歴史な過去話は置いといて、今は目の前で少し固まってる二人とかこれからのことを考えないと。もしこれが、いわゆる『異世界トリップ』というやつだったら、元の世界に帰る方法も見つけないといけないし、生きるための行動をしないといけない。……何より、わたしの常識は多分ここだと通用しないから、最低限の知識は得ないとね。

 何たって、『魔法』なんてものがある世界なんだもの。流石ファンタジー、って感じだよ。

「……(にわ)かには、信じられない内容だな……」

 ちなみに、堅苦しい話し方は止めてくれって、話の最初に言っておいた。でも多分、言わなくても口調は変わったと思う。それぐらい、わたしの話は馬鹿馬鹿しいからね。

「ですけど、あれほどまでの証拠を見せられたら信じないわけにはいきませんよ、ディオルド」

「それはそうですが……」

 ふーむ、何だかちょっと意外。さっきまでと逆に、女の子がしっかりしてて騎士さんが混乱してる。

 ちなみに証拠というのは、携帯電話とお金を見せるって物的証拠のお約束と、思い付く限りの国名を言ったりした。まぁ、国名のほうは話の蛇足だったり確認だったりで、ついでみたいな感じに言っただけだけどね。

「私は、貴女の言葉を信じます」

 騎士さんをそのままに、女の子がまっすぐわたしを見て言い切る。

「いいの? 自分で言うのも何だけどすっごい嘘臭い荒唐無稽な話だし、わたしがさっきの山賊の関係者で作り話をしてるのかもしれないよ?」

「それは有り得ませんよ。それなりに人を見る目はあると自負していますし、貴女の服装や容姿を見る限りには、少なくとも私達が知っているものではありませんから」

「そうなの?」

「はい。それほど不思議な模様のスカートは見たことありませんし、黒髪は『豊葦原(とよあしはら)』の一部に居ると聞きますが、黒い瞳というのは聞いたことがありませんから」

 うわぁ、衝撃の事実。この世界だと黒髪は珍獣扱いか……。少し、面倒臭いことになりそうだなぁ。ま、そういうのは色々ごまかせばいいけどさ。もちろん、髪を染めるとかは無いけどね。

 でも、黒い瞳が居ないっていうのは、ちょっと厄介だわ。この世界にカラコンなんてないだろうし、そもそも隠しようがないもの。

 髪を伸ばすにも時間がかかるし、サングラス的なのは苦手だし……いっそ仮面でも被る?

「いや、ないわー」

「はい?」

「あぁ、こっちの話こっちの話」

 危ない危ない、口に出てたみたいね。

「そ、それに……」

 ん? ちょっと思考に潜ってたら、何故か女の子が言いにくそうに俯いてる? わたし、なんか変なこと……さっきの以外で言ったかなぁ。

「私を抱きしめてくれた時に、優しい鼓動が聞こえましたから……。だから貴女は、悪い人じゃありませんよ」

 ………………うわぁぁぁぁぁっ!! ちょっ、そんなはにかんだ笑顔でそんなこと言わないでよぉぉぉ!? 抱きしめたいぐらいに可愛いんだけど、思い出してめちゃくちゃ恥ずかしいじゃないのぉぉぉ!!

「うにゃぁぁぁぁっ!」

 恥ずかしさに、場所とか考えずに思わず悶絶! あぁ、穴があったら入りたい――というか、無くても掘って入ってやる!

 そんな風に悶えてから、力無く背もたれへ身体を預けると、『やれやれ……』なんて呆れたような鳥君の声が聞こえた気がした。


◆◇◆


「あの……本当に大丈夫ですか?」

「あー、うん。なんとかね……」

 あれから悶絶はあんまり治まらず、結局話はそれ以上出来なかった。で、今はとりあえずの目的地である街の、高級なお宿の一室に居ます。しかもスウィートルームな、庶民としては『逆に落ち着かないんじゃい』って感じの部屋。

 でもまぁ、わたしは普通にくつろぐけどね。りっちゃん関係で、わりと慣れてますから。

「そういえば、さ。わたしと一緒の部屋で大丈夫なの? お姫様なんでしょ、アイシアって」

 話は出来なかったけど、とりあえず自己紹介だけは済ませてある。せっかく言葉が通じるんだし、嫌ってるわけでもないんだから名前で呼び合わないとね。

 ただその時にもちょっとお約束なことがあって、『苗字・名前』じゃなくて『名前・苗字』ということらしかった。うん、外国ちっくな風なのも、ファンタジーのお約束だよね。

 そんなわけで、わたしは『七河(ななかわ) 華凜(かりん)』じゃなくて『華凜・七河』になったわけだ。多分漢字は使えないだろうけど、わたしはどこに居ても日本人だから他人(ひと)に迷惑をかけない程度には日本語を使うよ? まぁ、口頭で言えるから字に書かない限り、関係ないけどね日本語とか。

「大丈夫です、私がそう言ったんですから」

 うわぁ、権力を使ってらっしゃるわこのお姫様。しかも自慢げに胸を反らしてるし……いい性格してるねぇ、嫌いじゃないよそういうの。

 ま、実際はあの騎士さん――フルネーム、ディオルド・ローウェルさんが、わたしを信じてくれたからこそこう出来てるわけで。敵かもしれないって思われてたら、例えお姫様の言葉でも従わないでしょ。何がなんでも対象を護るのが、護衛なんだからね。

 信頼……いや、信用? ともかく、わりと重いものを乗せてくれたもんだね、ディオルドさんってば。

「まぁわたしとしても、一緒の部屋は好都合だけど」

「こ、ここ好都合ですか!?」

 うん? 何で赤くなりながら(ども)るのかな? しかも微妙に落ち着きが無くなったし、なんか「まだ明るいですし」とか「私にも心構えが」とか、小声で言ってるし。……何の事さ?

「うん。ゆっくり話を聞くなら、同室のほうがいいでしょ?」

「……あ、そういうことですか……。確かにその通りですね……」

 何でしょげるのよ、そこで。『どよーん』って効果音が似合いそうなぐらい肩を落とすとか、さっきまでの間に何があったんだろ?

「……それで、話というのは馬車での続きですか?」

 あ、復活した。うーん、乙女心は分からないね。

「そうだね、色々な事があって結局自己紹介ぐらいしか出来なかったから」

 主にわたしが原因だから、あははと笑ってごまかした。一応、悪かったとは思ってるんだよ? 反省はしてないけどね。

「では。……えーっと、どこからお話しましょうか……」

 あ、そうか。常識が常識じゃないから、説明するにも基点が見えないよね。

「とりあえず、歴史とかはいらないからこの世界の事を教えてくれる?」

「……そうですね、では基本的な地理などからにしましょうか」

 地理……まぁ、無難な部分だよね。国とか人によって思想が違うから、説明しづらいものもあるし。

 頷きで答えを返すと、アイシアは「こほん」と小さく咳ばらいをして説明体制に入った。というか、一々反応が可愛いな。

「この世界には、カリンの『チキュウ』というような統一された名前はありません。しかし、この大陸には『ディランドーラ』という名前があります。確認されている限り他に二つ大陸があるのですが、今は省略しますね」

 ほほう、他大陸と交流が出来るぐらいの文化はあるんだね。

「そして『ディランドーラ』には、大まかに分けて大きな国が三つ、中くらいの国が三つ、あとは小さな国がいくつか存在しています。小国は省きますが、他の国の名前は先にお話しておきます。――まずは、『ラッツフィラー王国』『エインディア皇国』『アインティリ聖魔国』の三国が、大規模国家。そして、『マロミミナ王国』『豊葦原(とよあしはら)』『ランタック大公国』が、中規模国家になります」

 ふむ……基本的にこの世界――大陸の国家は、大体が王制国家なのかな? なんかますます、中世ヨーロッパ風王道ファンタジーって感じだね。

「えっと、細かい各国家の位置は地図がないと分からないので、大まかな説明になりますけど……」

「あ、うん。それはしょうがないよ」

 何故かしゅんとして断りを入れてくるアイシア。だけど、普通はそんなもんだよ? というより事細かに全部を説明するほうが、有り得ないし逆に分かりづらいよ。ああいうのは、地図を見て視覚情報と一緒に教わるから、何となくでも頭に入るんだから。

 そんなわけで、頭を撫でながら慰めると凄く嬉しそうな雰囲気に復活した。その様子に、わたしは犬耳&尻尾の幻を見た気がした。そしたら、『この子は奉仕体質なんだなぁ』とかいう考えが浮かんできて、少し嫌になった。

 ……何だよ『奉仕体質』って。のり君じゃあるまいしさ、オタク思考に毒されたのか!?

「そ、それでですね……」

 あ、話の続きね。……って、何で手を離したら名残惜しそうにするのよ。それじゃ、完全に『犬属性』だよ、アイシア? ――あ、もう手遅れだわ、わたし。

「……私達が居る『ラッツフィラー王国』は大陸のほぼ中央にあります。小国を挟んで北東に『エインディア皇国』があり、西には『アインティリ聖魔国』。そして三国の中央には、『マロミミナ王国』があります。また、大陸の東部には『豊葦原』があり、南部には『ランタック大公国』というのが、大まかな国の位置になりますね」

 後は小国が、って話だから、多分わたしが知っておくべきなのはその六つの国ぐらいだろうね。

 その後に少し国の事を詳しく……といっても簡略にだけど、詳しく聞いた話を少し纏めてみる。

 『ラッツフィラー王国』は、何となく思い浮かべるファンタジーな国みたい。貴族が居るし、奴隷制度もない。人種差別も、極々一部の人間以外居ないらしい。ちなみに、現在居る国。

 『エインディア皇国』は実力主義らしく、向上心が強いとか。あと北国だから、色々と逞しいらしい。冒険者を多く輩出している国で、色素が薄い人が多いらしい。

 『アインティリ聖魔国』は、なんと女王制の国らしい。しかも、魔族と呼ばれる種族の人達が治めていて、厳粛だけど開放的なんだとか。魔法関係の色んなものが進んでいる技術国家だとか。

 『マロミミナ王国』は、永世中立を掲げている国で、かなりアットホームな雰囲気なんだとか。あと、ギルドとか言う冒険者協会の本部があるらしい。お国柄商人が集まり、『商人の国』とかでも呼ばれてるみたい。

 『豊葦原』は、独特の文化をいっぱい持っているとか。黒髪は基本この国の関係者らしくて、しかも一部しか居ないんだってさ。多分、日本的な位置なんだと思う。名前的にもね。あ、獣人族って種族の人達が統治してる国でもあるんだってさ。

 『ランタック大公国』は南国リゾートで、綺麗な場所がいっぱいあるらしい。この国の人は、赤い髪と褐色の肌を多く持つとか。

 で、この大陸には四季がちゃんとあるらしい。この服装でも問題がないって事は、今は夏か、少なくとも近いんだろうね。

 そしてこの『ラッツフィラー王国』は、比較的四季が安定してるとか。やったね!

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