第十三話/例えば当日の様子……予想出来たことだよね。
約三ヶ月ぶりの投稿です……。
お待ち下さった方々、いらっしゃいましたら本当に申し訳ありませんでした!
はい、なんやかんやあったりもしましたが、パーティー当日になりました。いや、今現在もなんやかんやしてるんだけど、ね……。 何故なら、
「だ・か・ら、カリンにはこっちの清楚な白いドレスの方が似合うと言っているじゃないですか!」
「その通りですわ! そもそも、お母様達の選ぶドレスは過激すぎますわ!」
という感じで、王女ズが自分達の意見を言いながら、『ドバーン!』とかの効果音がバックに付きそうな勢いでややファンシーな真っ白いドレスを掲げ――、
「分かっていないのは貴女達よ? カリンちゃんぐらいの逸材なら、こっちの紅い『攻める』ドレスに決まっているじゃない」
「そうですわね。清楚なドレスも似合うのでしょうけど、今日のようなタイプのパーティーでしたら少し大胆でも場違いにはならないでしょうし」
対する王妃さんズは、余裕の表情を崩さず胸元が開いている紅いドレスを掲げていたからだ。……といっても、バックに虎の幻影が『ガオー!』と吠えてるけど。
ただまぁ、この二組だけならわたしもここまで辟易しちゃあいない。多分。
だけど今回はそれだけじゃないから、わたしももはや口だしを諦めてボケーっと状況を見守ってるのさ。……まぁ、それ以外に手が無いだけなんだけど。
「おやおや、皆様方の目はフシアナとお見受けいたします。カリン様に相応しい御召し物ならば、この蒼いドレスしか有り得ませんよ?」
……おーい、サフィリアー? 貴女仮にもここで働く女中の一人でしょうに。雇い主で、しかも国でトップな王族になんて物言いしてんのよ。――って、少なくとも『仮』ではないか。
そんな、城勤め女中兼現在わたしの侍女的な位置のサフィリアが持つドレスは、選ばれた中で一番アダルティである。
何故なら、それは胸元が開くというレベルではなく、首の後ろで布を縛って留めるタイプの物で、肩から腕、胸元、背中、脇腹少しまでが完全に露出しているからだ。……いや、わたしはどこの夜の蝶ですか? 多分、ウィッグとか無しであの髪型出来ると思うけどさ……。
……まぁ、結局何が『なんやかんや』なのかと言えば、今日着るわたしのドレスを何にするか、ということなんだよね。――うん、本人を無視して。
事の発端は、わたしが普通にドレスを選んでる時に王女ズが現れたこと。それから少しと経たず王妃さんズが現れて、娘に対抗するように選び出し、何故かそこにサフィリアが参入して……今にいたる、と。
というか、もう選び始めてから三十分以上経ってるんだけど、正直しんどい。わたしとしては、一部例外を除いて選ぶタイプのドレスはわりと似たようなのしか選ばないからね、昔から。
だから誰が何を選ぼうと……というかそもそも、わたしは一言も選んだのを着るとか言ってないしね。結局、行き着く先は同じ結論なんだよね、実際。
…………とりあえず、アレはほっといて自分で選ぼうかな、ドレス。
さてと……今回のパーティーは、基本的にアイシアの健勝報告会みたいな感じで、そこに付随してわたしのお披露目会? みたいな事をする予定なんだっけ?
まぁ、内に対してはアイシアメインで、外に対してはわたしメインって事だろうね。今予想されてる『ごたごた』だって、身内の恥みたいなものだから、外には出せないし。
「ま、わたしが考えることじゃないか」
政治なんてのは、わたしみたいな人間が関わるもんじゃないよ。だって一般市民だし。
そんなことより、今はドレス選びが大事さっ!
「おやカリン様、いったいどちらへ?」
「おおぅっ!? い、いきなりだねサフィリア……。もうそっちはいいの?」
「はい。やはりここは、本人の意見が一番だろうという結論に至りましたので」
「……それ、むしろ始めからないとダメな意見だと思うけど」
まぁ、今更な言葉だけどね。
「で? わたしにその中から選べってこと?」
「はい」
何となく溜め息まじりの言葉に、多分皆を代表してサフィリアが答える。……というかね、皆結局目で訴えてきてるから。
「まったく……。悪いけど、わたしはどれも選ばないからね!」
『えーー!』
ハッキリ言い放つわたしに、皆揃って声を上げる。……なんというか、息ピッタリだね。
「そもそもさ、わたし一言も『選んだのを着る』なんて言ってないからね? というか、わたしはこういう場だと着るドレス、大体決まって同じようなタイプのを着るのよ。たまに例外はあるけど」
「ではでは、今回がその例外ということで!」
「却下で。例外なんて、わたし自身で決める時以外には、着るドレスがそれしか無い時ぐらいだからね」
……まぁ、たまにりっちゃん一家に嵌められて、とんでもない服を着せられたりとかしたりしたこともあったけどさ。
ふふ……アレとかソレとか……思い出したくない、ステキな思い出だよ……。
「か、カリン様? 何やら遠い目をしていらっしゃいますが、大丈夫ですか?」
「え? あ、うん。大丈夫大丈夫、ちょっと昔を思い出しただけだから」
エロ水着とかボンテージとか、ね。……まぁ他にもイロイロあるけど、出来れば一生心の奥底に鍵付きで封印したいです。マジで。
「とにかく、わたしは普通にドレスを選ぶから。文句は受け付けません!」
『ぶーぶー』
「うっさい、そこの銀髪母娘」
まったく……。というか、アイシアって出会った時から考えて、少しキャラ変わってない? 随分はっちゃけてる気がするんだけどなぁ。
いや、今に始まったことじゃないんだけどね。ついでに素がコレだから、付き合いやすいし。
「あ。そういえばさ、今日の主役ってアイシアでいいんだよね?」
「うん? 違うわよカリンちゃん。今日の主役は、ほとんど貴女なんだから」
「……はい?」
え? なんでわたしが主役?
まぁ確かに、わたしがわりとメイン的な位置に居るっぽいのは分かるけど、それでもハッキリ『主役』ってポジションじゃないでしょ。
「もう、忘れちゃったの? そもそもこのパーティーは、貴女のために開かれるってことを」
「いやいや、今回のパーティーはアイシアの健勝報告会でしょ!?」
「あら? それは違うわよ? だって、『賊に襲われて無事でした』ってだけなら、こんな風にパーティーなんか開かないもの。今回のパーティーは、貴女を大々的に宣伝して魔法の可能性を広げるのと、国内の『虫』を牽制、挑発して動きを見るのが目的なんだから」
そう言って、銀髪王妃さんは「うふふ」と笑う。
……あー、なんというか、まぁ……ちょっと文句は言いたいけど、『これぐらいなら良いか』的に考えてる自分が憎い。というか、策略度合いならこれ以上な事態に巻き込まれたり、組み込まれたりしたからねぇ。おかげで色々経験出来たよ……。
でもま、そういう事なら少し選ぶドレスを考えますか。
「……なら、ちょっとばかり攻める恰好で行こうかな。『誘蛾灯』をやるのも久しぶりだし、たまにはそういう場で『華』をやるのも面白そうね」
といっても、誰かに口説かれたいとかじゃないし、目立ちたいってわけじゃないけど。
「あ。ところで、皆の準備は大丈夫なの?」
ふと思い、聞いてみる。けど、流石に皆終わってるよね? 開始まであと三時間ちょっとぐらいだし。
「私達は既に終わっておりますわ。あとは、実際行動に移すだけです」
「私も終わってるわ。というか、そもそも時間なんかかからないしね」
「私もです。お母様と同じく、時間をかけることも少ないですし」
なるほど。皆準備が終わってるから、こうしてここに居るわけね。
「準備が済んでるなら、わたしから言うこともないわね。まぁわたしの家じゃなくてそっちの家だけど、ゆっくりしててね。サフィリア、お茶とお菓子お願い」
「かしこまりました」
いつも通り腰を折り、綺麗なお辞儀をしてからキッチンへと足を向ける。
何故だか知らないけど、わたしが泊まってる……住んでる? 部屋は、最上級の来賓用でマンションの一部屋並に設備がある。つまり、普通に生活をするにもほとんど不備が無いのだ。
ただ、簡易キッチンはあくまで簡易なので、簡単なお菓子や軽食を作るのがメインになる。別に他も作れないことはないが、普通の食事や凝ったお菓子であれば、そもそも本来の調理場などで作る……ということらしい。
ぶっちゃけ、わたし的には十分一般的なマンションと同じように生活出来るだろう環境だから、ここまでする必要があるのかって思わなくもないわね。けど本来、このランクの部屋に泊まる人って相当な人物なはずだから、これぐらいしないと駄目なんだろうね。
……さて。今回の戦場で考えて、わたしが着るに相応しいドレスはどれかな?
次回は…一ヶ月以内にでも更新出来れば、と。
しかし、次は確実にパーティー突入してますので、難産になる確率が高くなります…。
あぁ、定期更新とかしてみたい…(泣)