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プロローグ/例えばあるかもしれないこんな未来。

勢いで連載開始です(笑)


どうなるか分からない作品で、完結出来るか微妙ですが頑張ります!


……というか、若干以上修業のための作品です(苦笑)

「せーー、のっ!!」

 黒髪の少女が、わりとかわいらしい掛け声と共に、上げていた右足で地面を踏み付ける。その一瞬後、前方で布陣していた騎士達の足元から煌めく光が噴き上がり、何十(・・)と居た騎士達が高らかに空へと舞い上がった。

 間違っても、彼ら――内何名かは彼女らだろう――は、決して自ら空に上がったのではない。先程の光、すなわち魔法(・・)を喰らって、どこかのスタイリッシュ英雄アクションの雑魚敵の如く盛大に吹き飛んだのだ。

 それを――そのデタラメさを改めて(・・・)認識し、無事だった騎士達は知らず唾を飲み込み、剣を握る手に力が入ってしまう。

 だが、少女の攻撃は今ので終わりではない。むしろ、戦闘開始の狼煙(のろし)みたいなものである。

「まだまだー!」

「――っ! 総員、気をしっかり持て! 次が来るぞ!」

 少女の言葉にいち早く反応したのは、他の騎士よりやや豪華な出で立ちをした騎士の一人だった。戦場全域に届かんばかりの声は低く渋いもので、声の主が男性であると推察出来る。

 そしてその声に周りの騎士達もハッとしたようで、さっきまでの動揺が嘘のように統制がとれた動きを見せ、少女へと多方面から向かっていく。

 だがその動きの間に、撃鉄はすでに上げられていた。少女の眼前に、巨大な魔法陣が現れていたのだ。

「大いなる母、厳格なりし命の根源――」

 滔々と響き渡る少女の詠唱。その声は凜とした響きを持っていて、どこか神秘的。場所が場所なら、祈りを捧げられそうである。

 しかし今この場所であれば、『脅威』という一言しか浮かばないものだった。

「魔法士隊、障壁を張れ! 手を抜くなよっ!」

 今度は別の声――先程の騎士よりかなり若い美声と呼べるものが響き渡り、すぐに半透明の壁が遮るように騎士達の前へ展開されていった。

「――全てを怒涛の彼方へ押し流せ! 《タイダルウェイヴ》!」

 その鍵言(けんげん)を言い切った瞬間、魔法陣から凄まじい量の水が流れ出し、刹那の間に津波となり騎士達へと襲い掛かっていく。が、津波は張られた障壁にぶつかり、勢いのまま打ち上がる。そこから多少水が障壁を乗り越え、ちょっとした雨のように騎士達へ降り懸かっていく。しかしそれは攻撃となりえず、ただの『水滴』が当たっているだけのようなものだった。

 誰もが目の前の怒涛をせき止めた安堵した瞬間、その心の隙を見計らったように“ビシリ”と音が鳴る。その音は立て続けに鳴り響き、“ビシビシビシ……”と止む気配を見せない。

 そして音の正体が分かると、前線の騎士達はおろか後方に居た魔法士達ですら、若干顔が青ざめていた。何故ならその音は、今現在津波を受け止めている障壁が、負荷に耐え切れず悲鳴を上げている音だからだ。

 つまりそれは、障壁を張る総勢三十人と魔法を放つ一人で、たった一人の少女が勝っているということである。

 やがて障壁は崩れ去り、今までの抵抗を嘲笑うかのように、怒涛は騎士達を飲み込んでいった……。



「相変わらず、凄まじい戦闘ですなぁ……」

 目の前で繰り広げられている蹂躙の風景に、少し離れた場所でそれを見ていた熊のような印象を与える騎士が、何とも言えない様子でその立派な顎髭(あごひげ)を撫で付ける。

 そんな彼に答えたのは、可憐な、とても耳に心地良い声だった。

「当たり前です。何と言っても、私の(・・)カリンですから♪」

 ころころと笑顔を浮かべながらの少女は、誰に恥じることなくそう断言した。が、それに対して何かを言ったり、不思議がる人間ここにはいない。今更、驚くようなことではないからだ。

 そんな、ある意味所有物宣言をされた(くだん)の少女は、「はぁーはっはっはっ! びくとりぃー!」と高いテンションで人差し指を天へ突き付け、高らかに勝利宣言をしていた。――ちなみに、少女の周囲には死屍累々(ししるいるい)が如く騎士達や魔法士達が転がっていたが、その中には死人はおらず重傷な者も居なかった。

「カーリーーン!!」

 それを見て、模擬戦(・・・)が終わったことを認識した少女は相手――黒髪の少女の名前を呼びながら、ちぎれんばかりに手をぶんぶん振ってアピールする。その際、美しい銀髪が一緒に揺れていて、どこか子犬を思わせる雰囲気だった。

 声が届いたのか、『カリン』と呼ばれた黒髪の少女もそれに気付き、銀髪の少女とは程度の差があるものの大きな動作で手を振り返した。それが嬉しかったのか、銀髪の少女は満面の笑みを浮かべてさらに力強く腕を振る。

 そんなどこかほほえましい光景に、熊な騎士はまるで娘を見守る父親のような表情で、自らが護衛する第三王女(・・・・)と不思議な雰囲気を持つ黒髪の少女を穏やかな目で見ていたのだった。

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