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凪の覚悟(長崎の記憶)

僕は三池山の「3つの池」で意識を失った。


目を覚ました時、そこは地獄だった。

──そして僕は、ひとつの命と出会う。

《カン・カン・ゴーン》


──────


‹ドーーン›


僕は脳が揺さぶられるような衝撃、そして視界は今までに見たことの無いような白さに包まれた。


「キィイイイーーン」


僕はその激しい閃光と爆音に突きつけられて目を覚ました。


しかもとてつもなく臭い。

焼け焦げた何かが鼻につき、古い硬貨を大量に口に含んだような、鋭く重苦しい鉄の味と、生温かいレバーのような生臭さだ。


僕は周りを見て絶望した。

骨組みになった家や建物しかなく、人間の死体と思わしきものがそこらじゅうに横たわってるのだ。


「ゔっ........」


僕は何も口にすることができなかった。


でも、確かさっきまで三池山の3つの池に居たはず...

そして朧との記憶がフラッシュバックしてきて。

...その後、僕の意識は消えていって...


あの時朧が言っていたこと、それは

《──俺のせいで完全には特定の場所は決められない》

《──1回だけ、あの時代に戻れる。》

《そこが───だ、やり直してほしい。》


でも僕は、この時代が戦争時代だと気づくのは少し先だった。


「この場所から離れないと」


ここにいては危ない、死んでしまう。

いや、そもそも、僕は死ぬのか?

でももし死んだりしたら朧が残してくれたものが消える。


僕は走り出した。

すると、遠くから声が聞こえた


「オギャア、オギャア」


赤ちゃんの泣き声だ。

周りに人の声がしない中、それは響いた。

僕は声の方へ走って行ってみた。


赤ちゃんは、まだ生きている状態だった。


どうする?助けるか?


でも、赤ちゃんを抱えて移動することになる。

可能なのか...?

これから歩き続けることになる。

...でもここで助けなかったら確実に死ぬ。


僕は赤ちゃんを抱き上げて移動した。

とても温かかった。

この子は生きている人間だ。


これからどうする?医者?

でもこんな状態で医者なんか居るのか?

食料も確保しないといけない。

でもとりあえずここから離れないと。


とにかく走った。


その時、近くで爆発が起きた。


‹バァーーン›


幸い、大きな被害はなかった。


「んっっ......」

足に衝撃が走り、片足がふらついた。

小石がぶつかったのだ。


重い、熱い。そう感じる

...僕は限りなく人間に近いように作られているっぽい。


「ッッッッ。」


朧のことを思い出したら泣き崩れそうだった。

僕には感情がある。


本当は人間なんじゃないか?

これは夢で、朧がいつも通り10個の目覚まし時計を一気に鳴らして、起こしてくれるんじゃないか?

そしていつも通り喧嘩して、笑って。


...っごめんなさい


そして僕は、人が大勢いるところに来た。


「おい、お前、こっちに来い」

「そこにいたら危ないぞ」


服がボロボロで裸足の一人のおじさんがそう言った。

そしておじさんがいた穴?のようなところに行った。


そこは暗かった。

何も見えない。


「大丈夫だったか?」

「その子は妹か弟か?」


「違います、」

「この子は途中で生きてるのを見つけて、一緒に連れてきたんです。」


そう言ったらおじさんは抱きしめて言ってくれた。


「よくやった。。」

「ありがとう、本当に。」


「君はヒーローだ。」


......。

ヒーロー...。

ヒーローか...

僕はヒーローじゃない。

悪者だ、クズだ。

生きてる価値なんてない。


でも嬉しかった。

これまでが、地獄のようだったから。

久しぶりに人と話した。

人は優しい。


それなのに僕は人を殺した。

何回も、何人も。


僕はおじさんの腕を振り払った。

そして僕は聞いた。


「ここは、どこなんですか?」

「あと、医者はいますか?」

「この子を見てほしくて。」


おじさんは、それでも優しく言った。


「ここは本河内ほんごうちにある防空壕。」

「空襲から身を守るための場所だ。」


「あいにくだかここには医者は居ない。」


ここは長崎にある防空壕なのか

僕は自分のことが精一杯で、周りのことに集中していなかった。

そして周りを見ると何人もの人がいた。


「痛い、いたい。」


「南無阿弥陀仏...」


「お母ちゃん。」


そう言いながらみんな震えている。


怖かった。

片腕がない人、ガラスが全身に刺さっている人、耳がない人、そして亡くなっている人。


長崎、戦争......。


そこで僕は、今いる時代の事に気づいた。

時代は1945年(昭和二十年)8月9日午前11時2分

長崎に『ファットマン』が落とされた日。

太平洋戦争の末期だ。


歴史の授業でしか聞いた事がなかった光景が今、目の前にあるのだ。


いや、歴史で教わったことよりも酷い。


僕は震えが止まらない。

それでも僕は赤ちゃんを抱きしめた。


「この子は絶対守らないと」


そう決意していた。

僕達が出会ったのは運命だ、死なせたりしない。


これで罪を償おうなんてことは思っていない。

ただ、自分が助けたかっただけだ。


それから3日間、僕は防空壕にいた。

貯水された水に、限られた数のカンパンを食べながら。


やがて僕は、佐賀県に向かった。

長崎よりは安全なはずだ。


周りの人も「佐賀県に行けば助かる」

そんなことを言ってる人が多かった。


僕の最終目標地点は久留米市だ。

昔、祖父が暮らしていた街。

無事かどうかなんて、わからない。

それでも、そこに行くしかなかった。


行けばきっと何か掴める。

そう信じて。


そして赤ちゃんと一緒に佐賀県を目指した。

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