第2話:桃色頭症候群(ピンク・パニック)――例外個体・守銭奴ピンク出現
レオンハルトの進撃は凄まじかった。
各地で、王の膝の上で甘えるピンク髪を――正論の鉄槌と、王の権威と、純粋な圧力で引き剥がしていく。
「私はただ、愛されたかっただけなのに……!」
涙を流す彼女たちに、皇帝は氷の声で言い放った。
「愛が欲しいなら愛玩動物にでもなれ。王を操って民を飢えさせるのは、愛ではなく内乱罪だ。――連れて行け!」
そんなある日の戦場。
混乱に乗じた敵兵が、茂みからレオンハルトの喉元を狙って矢を放った。
不意を突かれた皇帝――だが、鋭い金属音が響き、矢は弾かれた。
「――っ、危ないですよ、デカ物陛下!」
一人の小柄な傭兵が、レオンハルトの前に立ちはだかっていた。
衝撃で兜が転がり落ち、そこから溢れ出したのは――夕焼けのように鮮やかな、しかし手入れの行き届いていない「ピンク色の髪」。
「貴様……! ピンク頭か!?」
レオンハルトは即座に剣を構え、反射的に三歩退く。
「縋るつもりか! 『怖い、守って』と囁くつもりか! 残念だったな、私にその手の誘惑は――」
「……はぁ!? 誰が縋るんですか!」
女性兵士――リナは、甘い声など一滴も出さず、肩の傷から流れる血を無視して怒鳴った。
「自分の身くらい自分で守れっての! それより今の! 私が身を挺して守った今の! 命の代金、きっちり請求しますからね!!」
「……代金?」
「当たり前でしょう! 防具の破損、治療費、皇帝の命を救ったことによる特別報奨金! 私はあんたたち王侯貴族みたいに、愛だの恋だのってフワフワしたもんで生きてないんです。現金こそが神! 領収書、後で出しますからね!」
レオンハルトは呆然とした。
これまでのピンク髪たちが放っていた“ふわふわした甘い空気”が一切ない。
そこにあるのは、血と汗と、強烈な世俗のガッツだけだった。
続きが気になったらブクマで追ってもらえると助かります。




