表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
-i  作者: リョーシリキガク
4章 ユリ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/51

cos 37x 「共鳴の悪魔」

 旧コンサートホール。

 かつて文化の象徴とされていた空間だった。今は、剥がれかけた漆喰と煤けた空気が、過去の栄華を静かに物語っている。


 広々とした客席は、傾斜を描きながら奥へと伸び、数百の座席が整然と並んでいた。

 木製の背もたれには赤いビロードが貼られ、薄く埃を被っている。


 客席の奥には、ひときわ深く掘り下げられたスペース──オーケストラピットがある。

 楽器を並べるはずだったその空間は、空っぽの奈落となって口を開けている。


 舞台には重厚な赤い垂れ幕がかかっていた。

 その裾は裂け、ところどころ焦げたように黒ずみ、中央は半ば開いている。

 かつての開演の瞬間を思わせるその隙間から、異様な気配が滲んでいた。


 周りの客席が、かすかに震えている。


 ──ドン。


 低く、腹の底に響くような音が空間を満たす。

舞台の中心に、それはいた。


 黒曜石のような外殻を持ち、背中からは共鳴板のような骨状の突起が伸びている。

 立ち尽くすだけで、空間が軋むような重圧があった。


 共鳴の悪魔が吼えた。

 音の奔流が空間を圧し、天井が震え──砕けた。


 瓦礫が怒涛のように降り注ぐ。


 有馬は即座に演算子に意識を向けた。

 刹那、見えない力場が展開される。

 テレキネシス──物体に直接干渉する精神波動。


 瓦礫が空中で静止した。


 そして、数十の岩片が悪魔へと逆襲し、鋭い弾丸となって叩きつけられた。

 共鳴の悪魔の外殻が軋み、ひときわ大きな音が響いた。


「ギイィィィィイイ……!」


 よろけた。共鳴の核が狂ったように波打ち、足元が崩れる。


「ふっ……!」


 有馬は踏み込む。

 身体強化を併用し、一気に距離を詰めた。

 そして量子サーベルを構え、肩口から大きく振り下ろす──


 ズバァッ!


 悪魔の右腕が音を立てて吹き飛ぶ。

 砕けた刃先の断面から、黒い液体が飛び散った。


 咆哮と共に、悪魔は転げるように後退し、ホール中央の階段へ逃げ込む。


「ユリさん!」


 ユリはロザリオ型演算子を胸に構え、黒い銃を抜いた。

 揺れる腕先を支えながら──狙う。


 パンッ──


 乾いた銃声がホールに響く。

 弾丸は悪魔の脚部に命中し、その巨体がバランスを崩す。


 重力に引かれるように、悪魔は階段奥の奈落──オーケストラピットへと落下した。


「有馬!」


 ユリの叫びが背中を押す。


 有馬は高く跳躍し、真上から悪魔の元へ急降下する。

 剣が黄緑に輝き、音のない空間に鋭く突き立てられた──


「はあああああっ!!」


 ズドン──


 量子の刃が悪魔の胸部に突き刺さり、共鳴核を貫いた。

 一瞬の間、音のない衝撃が辺りを包み、やがて音と共に悪魔の肉体が霧散した。


「……討伐完了」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ