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-i  作者: リョーシリキガク
4章 ユリ編

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36/51

cos36x 「レゾナンス」

 静まり返った夜。

 ローク市・旧コンサートホール周辺は、すでに警察による封鎖が完了していた。退避勧告が発令され、街灯は落とされ、通りには緊張だけが残っている。バリケードの内側では、警官と兵士たちが静かに待機し、隣接するテント式の指揮本部では、モニターの前に技術者と後方指揮官たちが詰めていた。


「無人ドローン、対象を視認。地下、ホール最深部。確認された異常音波により、対象を“共鳴の悪魔”と命名。作戦コード“レゾナンス”、発令」


 無線から解析チームの声が届いた。


「ホール地下には石造りの音響共振空洞がある。魔物の咆哮で共振が起き、床が崩落する危険性あり」


 有馬はモニターの建物図を指で追いながら答えた。


「了解。音響共振を考慮し、最短ルートで突入する。経路は?」

「搬入口からステージ裏手へ抜けるルートが最短です。廃坑の残骸が共振源なので、正面入り口は避けてください」


 有馬はヘルメットのセンサーや通信機器を確認し、ユリもサーマルカメラや防護バリアをチェックした。


「0番隊へ任務発令。Alpha-1、Alpha-2…演算子使用許可、承認」


 有馬とユリ──それぞれAlpha-1、Alpha-2のコードネームで呼ばれた2人は、ホール正面からステージ裏手へのルートを目指す。


「Alpha-1、通信確認良好。出撃コードの送信を求む」

「こちら本部。“レゾナンス”、全準備完了」


 無線に応じ、有馬は静かに頷き、隣のユリに伝える。


「準備完了だ。コードは“レゾナンス”」


 ユリもまた、小さく息を整えながら、ロザリオ型の演算子を指で転がす。


「……演算子起動。インテグラル」


 有馬は懐から懐中時計型の演算子を取り出し、強く握りしめた。


「フーリエ演算子、起動」


 有馬の脳に揺らめくものに、iがかけられる。その軌道にπ/2のズレが生まれた。世界とつながる感覚、細く、揺れていて、それでいて確かに。


 鉄扉に仕掛けたC4のカウントダウンが終わる。

有馬は拳を握り締めた。


「突入」


 爆風と共に扉が吹き飛び、粉塵の中、有馬とユリは静かに足を踏み入れた。

 作戦“レゾナンス”が、いま始まる。

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