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-i  作者: リョーシリキガク
4章 ユリ編

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32/52

cos 32x 「微震」

 車内は静かだった。エンジンの振動と、タイヤがアスファルトを滑る音だけが、粛々と続いている。


 ──気まずい。


 後部座席に並んで座る有馬は、窓の外をぼんやりと見つめながら、心の中でつぶやいた。

 隣にいるのは、未来視能力者のユリ。長い髪を無造作に結び、ロザリオを指でくるくると回している。


「……あの、神宮さんが言ってた、名前占い、していただけません?」


 ユリとの話題に困るなら、特技の占いでも頼めばいい。そう神宮は言っていた。

 ユリはじとっとこちらを見て、面倒くさそうにため息をついた。


「えぇ〜あんたの?」


「……はい」


 有馬は懐中時計型の演算子を差し出した。ユリはそれをひったくるように取り、刻印を見て目を細めた。


「あんたの名前……帝翔!?」


「違います、“遥翔”です」


「……はいはい、“遥翔”ね。これ、二十数年前に超絶流行った名前」


「確かに、10個上の世代に多いですね」


「でしょ?はい、占い終わり〜」


「……世代考察でしたね」


「文句ある?」


「ないです」


 そうしているうちに、車は海にかかる巨大な橋──セレスティア大橋に差し掛かっていた。

 遠くには、半島の稜線がうっすらと見える。


「あれが有名な、セレス要塞ですね。天然の要塞で、向かうの油田地帯を守りやすいと…」


 前方で運転していたサポートスタッフがつぶやいた。


「ふーん」


 ユリがそっけなく呟いた直後、車体がわずかに横に揺れた。


「……今の、地震?」


ユリが眉をひそめる。


「あれ、油田って昔の地層でしょ?地震って、火山とか新しいプレートのイメージなんだけど。こんなところで起こるの?」


 そう言って彼女は、面倒くさそうに天井を見上げる。有馬は少し考えてから、静かに口を開いた。話題ができた。


「確かに、油田があるような場所は古い地層です。だけど、古くても、地震が起きないわけじゃないんです」


「……へぇ?」


「まず、地下の岩盤には、長い年月の中でプレートの動きによる“応力”がずっと蓄積されてるんです。古い断層でも、ある日突然その負荷に耐えきれなくなって動き出すことがある。これを“断層の再活動”って言います」


「じゃあ古くても安心じゃないってこと?」


「はい。たとえば“活断層”──第四紀以降に動いたことがある断層なんかは、古い地層でも今後動くと見られています。しかも、プレートの境界じゃなくて、プレートの内部でも地震は起きます。“プレート内地震”って呼ばれています」


 ユリがロザリオをくるくる回しながらはーん、と呟く。


「あとですね、油田の下にあるような砂層では、地震の振動で“液状化”が…」


「黙れ」

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