cos 2x 第21回プロハンタードラフト
「0番隊、第一巡指名。有馬遥翔」
アナウンスと同時に、場内がざわめいた。轟くような拍手、そしてフラッシュの閃光が空間を白く染め上げる。
《史上最年少、15歳11ヶ月!
飛び級の天才能力者、有馬遥翔が、悪魔討伐の要たる“0番隊”の第一指名を受けました!》
「昨日は歴史的なドラフトになりましたね、有馬くん! 映像を見て改めて、今後プロハンターとしての意気込みをお願いします!」
インタビュアーがマイクを差し出す。
磨かれた黒髪に、澄んだ黒の瞳。人目を引く整った顔立ちが、テレビの中で光を帯びていた。
けれど――天才と呼ばれているその人物が、本当に“自分”なのか。有馬にはまだ実感がなかった。
「生まれながらの超能力を使って人を守るのは当然だと思います。市民の安全のために、全力を尽くします」
英雄になる。
それは願いではなく、義務だった。
画面が切り替わり、隣に立つ金髪の女性が映る。すらりとした体躯に、黒の制服。胸元には銀の徽章が光り、両手には黒革の手袋がはめられていた。
手袋は指先までぴたりと張り付き、関節の位置には細い銀のステッチが走っている。
「そしてリリスさんも0番隊に選ばれ、これから相棒となるわけですが!」
インタビュアーの声に、リリスは短く息を吸い、マイクの方を向いた。
白磁のような肌に、冷たい青の瞳。声はよく通るが、温度を感じさせない。
「私は、悪魔を一匹でも多く潰したいです」
その言葉は、有馬の抱く“義務”とは違う――鋭く、感情を削ぎ落とした意思だった。
「え……まぁ、時には逃げても構わない、と神宮さんも仰ってましたし」
インタビュアーが苦笑いを浮かべる。そして画面が切り替わり、隊長・神宮帝翔の姿が映し出された。
「英雄は、死後に造られる虚像だ」
低く落ち着いた声が、スタジオの空気を支配する。
「死人は美化される。
美しい死なんて言葉に囚われず、生き延びてほしい。
この仕事は、命を懸ける仕事だが――命を捨てる仕事じゃない」
有馬は画面の中の神宮と、ほんの一瞬、目が合った気がした。
「生き延びた者だけが、何かを守れる」
*
五月末。プロハンターとしての初任務は、殺人事件の調査だった。




