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-i  作者: リョーシリキガク
3章 講義・試験編

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28/51

i・six 28x 零'

 幻影が解け、リリスは立ち尽くしていた。

 手に持ったナイフを見つめる。


 復讐をして得るものなんてない。


 皆そう言う。それは正しい。


 “ゼロ”が“プラス”になることも、マイナスをゼロに戻せるわけでもない。

 すべてを失って、“ゼロ”になった──

 それは“もう失うものがない”って意味じゃない。“大切なものを、すべて奪われた”ってこと。

だから私は、もうこれ以上奪わせないために、自分から“マイナス”に堕ちていくって決めたのよ



[任務報告書:封印再調整・禁忌の森]

報告者:神宮帝翔(0番隊 隊長)

日付:3月15日


 森の奥深く、瘴気に似た静けさが漂うなか、神宮は封印装置の前で待っていた。

 やがて、ヒールの音が枯葉を踏む。


「──あら神宮。お待たせ」


長身の女、ローズマリーが深紅のマントを揺らして現れる。トランク片手に、息をついて笑った。


「あなたみたいな化け物じゃないから、この森を歩くだけで限界。

 帰りは転移陣が使えないんでしょ? 送ってくれるわよね?」


 神宮は静かに頷く。

 この“禁忌の森”は、一方通行。外から来ることはできても、内から出ることはできない。

 悪魔を封印するには、それが必要だった。


「そういえばこの前の任務、笑ったわ。“下がって、僕が守る!”って。

 英雄って感じ〜、ちょっとときめいたかも」


「あんなの、いくらでも言うよ」


「なら今度は私にも言ってよ。“大丈夫、僕がついてる”って、ふふ」


 軽口を交わしながら、2人は中央の封印装置へと歩く。

 核の部分には、魔力の“引力”が満ちていた。強い悪魔ほど、その引力が強いため、この中心に吸い寄せられ、離れられなくなる。


「で、なんで私と来たの?」


 ローズマリーが不意に足を止め、振り返る。


「“封印を締め直すときは、好きな人と来い”って。この装置を作った時に言われた」


「……なにそれ、デートのつもり? 」


「“適当な人”って意味じゃないの?」


「ふーん。まあ、そーよねー。じゃ、さっさと任務終わらせましょ。私は2〜3匹で十分」


 封印装置の前に立った神宮は、懐から薔薇の入浴剤を取り出す。


「……ちょっと、それ、うちの商品じゃない!」


「引力が出れば何でもいい。代用はできる」


「部下にもらった」という神宮に、ローズマリーはふーん、と答えた。

 神宮は静かにそれを術式の中心へ置き、手をかざす。

 装置は一度、脈を乱し──すぐに安定した。


 任務完了。

 神宮は端末に記録を打ち込み、背後の古い石碑に目を向けた。


『絶対、開けちゃあかんからな!』


そんな声が、聞こえた気がした。

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