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-i  作者: リョーシリキガク
3章 講義・試験編

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27/51

cos 27x 魔王ビクトル

 訓練用フィールドの外、半透明の防御結界の向こう。

 さらにその上層に設置された監視通路から、有馬と神宮が試験の様子を見下ろしていた。


「監督官なんだ。他にも十ヶ所くらい担当しててね」


 目が合うと、神宮は柔らかく言った。


「なかなか合格は難しいみたいだよ」と、静かに呟く。


「リリス、大丈夫でしょうか」


 有馬は額に汗をにじませながら、結界の中を駆けるリリスの姿を見つめていた。

 炎の中で、彼女は真っ直ぐ走っている。


「サイコメトリーで戦闘なんて、本当に……」


 その言葉が終わらないうちに、有馬の視界が歪んだ。


 ──目の前に青年が現れた。


『なんでお前が泣くの? なんでも持ってるくせに、被害者ヅラしないで』

『有馬くんならできるでしょ? できない子に失礼よ』

『君がウチの子に生まれてれば』


 有馬は一歩も動けず、ただ視線を下げていた。


「有馬」


 背後から呼ぶ声がした。

 振り返ると、神宮が静かに何かを見上げていた。


「リリスの能力は、確かに戦闘向きではない。だが、彼女の脳波の振幅は、最大級だ」


 神宮はゆっくりと前に出て、柵越しに炎のフィールドを覗き込んだ。


「能力の“強さ”で言えば、抜群。だから僕は彼女を0番隊に指名したんだ」


 有馬の目が再びフィールドに戻る。

 リリスは、走っていた。炎の中を、真っ直ぐに。その前には、黒く歪む影──人型の悪魔、幻影のビクトル。


『復讐なんてやめてよ、お姉ちゃん。早く、こっちに来て……会いたいよ……』


 弟の幻影が語りかける。

 それでもリリスは、足を止めなかった。


「……黙れ」


 演算子の鈴が高く鳴り、記憶が一気に溢れ出す。

 崩れる校舎。焼けた空。伸びていた小さな手。

 ──「熱い」と呻いた声。

 リリスは右手をチラリと見る。黒い手袋、そして握られたナイフ。


「返してよ……! あの朝も、弟も……私の“愛”も……!」


 リリスは飛び込む。

 超能力による身体強化が限界を超え、足が地面を砕く。

 その手に宿る赤いナイフが、ビクトルの胸を貫いた。


 激しい閃光がフィールド全体に弾けた。ビクトルの幻影は、黒い霧となって砕け、炎に呑まれていく。


「リリス少尉!合格!」


 リリスはその場に膝をついた。肩で荒く息をしながらも、もう敵の姿はなかった。その頬には、涙の痕が静かに残っていた。


 有馬の幻影も消え、胸の奥に残るのは、言葉にならない重さだった。


 神宮は黙ってそれを見届けた後、低く言った。


「……ビクトルの力はさらに強大だろう。有馬──奴を倒すのは君だ」


 神宮は続けた。


「奴は非常に人型に近い悪魔で、女性に似た姿と推測されているが、詳細は不明。彼女を倒さない限り、犠牲者は増える」


 有馬は一瞬だけ目を閉じ、唇を引き結んだ。


「……はい」


 ──魔王ビクトル。

 悪を倒し、人々を守ること。

 それが俺に与えられた“義務”なのだと、有馬は思った。

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