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-i  作者: リョーシリキガク
3章 講義・試験編

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24/51

cos 24x 命のかけ方

 夜の談話室。窓の外には夕暮れが広がり、静かな時間が流れている。部屋の片隅、リリスは講義ノートを机に広げていた。ペンを持つ手は何度も線を引き直し、細かな文字でびっしり埋められたノートの余白に、さらに数式や注釈が加えられていく。


「y=cos0は常に1だから、波じゃなくてy=1の横線……これが“読心術”で、瞳に波紋……」


 リリスは呟きながら、瞳に波紋が浮かぶ術式図を指でなぞる。


「全ての波の重ね合わせ、ガウス関数、デルタ関数…」


 必死に理解しようとするその姿には、普段の鋭さや皮肉っぽさはなかった。代わりにあるのは、真剣な眼差しと、ひたむきな努力の痕跡。


 そんな彼女の前に、不意にコーヒーが置かれた。


「頑張ってますね、リリス」


 顔を上げると、目の前に有馬が立っていた。髪に夜風を含ませたまま、微笑を浮かべている。


「そら、頑張るわよ。普通は筆記と実技両方受からないと、普通は悪魔討伐に参加できないし。……ありがと」


 リリスは照れ隠しのように鼻を鳴らし、肩をすくめた。

 有馬が軽く笑ったあと、彼女はふと視線を机から外して尋ねた。


「有馬。あんたは何でプロハンターになったの?」


 その問いに、有馬はまっすぐリリスの目を見て、静かに答えた。


「力があるなら、責任があると思ったんです。誰かが傷つく前に、自分が立つべきだって」


 正義感というより、義務感。彼の声には、そんな硬さが滲んでいた。

 子供の頃、英雄に救われて憧れたとか、理想的なストーリーは()()


 リリスは少しだけ目を伏せ、言葉を選ぶようにして呟いた。


「誰かのために命を懸ける義務なんて、私はないと思うわ」


 リリスは鋭い目を向けた。


「私には復讐したい相手がいる。ただ、それだけ。……私は、自分のためにこの道を選んだの」


 有馬は黙って頷いた。否定もしなければ、肯定もせず、ただその言葉を受け止めるように。


 しばしの沈黙のあと、有馬がふと話題を変えるように言った。


「教えますよ、苦手なところ。俺、この分野得意なんで」


「……いいの?」


 リリスが少し驚いた顔で振り返る。


「でも、この時間……貴方、上級講義、取ってなかった?」


「ああ、“悪魔脳波論Ⅲ”ならもう、なくなりました」


「え?」


 有馬が肩をすくめる。


「教授が失踪したんで、無期限休講です」


「……そんなことある?」

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