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-i  作者: リョーシリキガク
3章 講義・試験編

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21/51

cos 21x ガウス関数とデルタ関数

 講義は続く。

 赤と青、二種類の脳波グラフが映し出されていた。


 赤は、炎を操る能力者の脳波。激しく、鋭い振動を繰り返す。

 青は、氷を操る能力者の脳波。緩やかで、滑らかな波形を描いていた。


「能力者の“脳波”も波である以上──重ね合わせの原理に従う」


 教授が操作パネルを叩くと、画面が切り替わり、赤と青の波が重なった紫の波形が表示される。


「これが、炎と氷──二つの脳波を重ね合わせたものだ。

あらゆる波形は、基本的な波の“重ね合わせ”で表現できる。これは“フーリエ変換”と呼ばれる数学的手法だ」


 板書スクリーンに、数式が表示される。


f(x) = Σ (n=1 to ∞) [a_n·cos(n·x) + b_n·sin(n·x)]


「能力とは“脳波=波”であり、通常の能力者はひとつの周波数成分──つまり、ひとつの力しか持たない。

だが波は重ね合わせが可能だ。複数の能力を持つ者の脳波は、そのぶん多くの波を含んでいる」


 再び画面が切り替わる。

 今度は、有馬の脳波が表示された。


 それは複雑に入り組んだ形をしていた。


「これが、有馬の脳波だ。一見して混沌とした波形だが、フーリエ展開により、その構成要素を抽出できる」


f(x) = cos(7x) + cos(24x) + cos(70x) + cos(1785x)


「この式が示す通り、彼の脳波には4つの独立した周波数成分が含まれている。

つまり、彼は理論上“4つの能力”を同時に扱うことができる」


 教授は静かに、しかし鋭く言葉を重ねた。


「波は重ね合わせができ、逆に分解も可能だ。3という数が1+2に分かれるように、能力の本質もまた、構成成分に還元される」


 教授は一瞬の間を置き、スクリーンに新たな図を表示した。

 今度は、中心に鋭く突き出た一本のスパイク──まるで“無限の成分”が重なった一点。


「では全ての波を内包した者の脳波はどうなるのか。すべての周波数──すべての能力成分を同時に持つ波形……

一つ目はデルタ関数だ」


 背筋が凍るような緊張が走る。


「デルタ関数は、理論上すべての波を含んでおり、この波形の脳波を持つ場合、全ての能力が使えるはずだ」

「もう一つの重ね合わせ形は、“ガウス関数”── これも全ての波の重ね合わせだが、高周波数につれ、指数関数的に減少する。そのため、cos(∞x)成分、つまり記憶改竄系の能力はゼロに限りなく近い、と考えられている」


 そして教授は最後に、映像を停止しながら語った。


「話を戻そう。能力の多くは、発動時に特有の“ポーズ”や“兆候”を示す。例えば、読心術なら瞳に波紋が……」

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