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-i  作者: リョーシリキガク
2章 氷の悪魔編

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14/51

cos 14x 冷'

 吹雪が、世界を塗り替えていた。


「くそ……どこまで来るつもりだ!」


 奏が忌々しげに吐き捨てる。

 木々の合間を縫って、雪を踏みしめながら必死に駆ける二人の後方。

 そこには、音もなく滑空する影──悪魔とは思えぬ滑らかさで空を舞う、異形の存在があった。


 かつてフクロウだった悪魔の羽根を取り込み、より静かに、より早く、より冷たく。風すらも味方につけたかのように、人型の悪魔は追跡してくる。


「滑空できるなんて……!」


「取り込んだんだ、さっきのフクロウを……!」


 有馬は肩で息をしながら、懐中時計型の演算子に手をかける。

 だが、次の瞬間──全身にまとわりつくような寒気が、感覚を削ぎ落としていった。


 雪はただの雪ではない。粒が凶器のように鋭く、肌を刺す。吐く息が一瞬で白く凍りつき、まつげに貼りつく。


「この雪、ただの気象じゃない……あいつが、撒いてる……!」


 奏が歯を食いしばりながら、耳に手を当て、演算子に力を込める。

 だが、空間に放たれたはずの音波は、何かに吸い込まれるように霧散した。


「音が──届かない……!?」

「気温が下がりすぎて、空気が死んでる……!」


 音は、空気の振動だ。

 空気が動かなくなれば、音は消える。

 まさか、悪魔が“絶対零度”に近い空間を作り出しているのか。


「能力が効かないって……」

「くそっ……!」


 有馬はテレキネシスで近くの雪を操り、悪魔に向けて放つ。

 だが、雪の弾は触れた瞬間、蒸発したかのように掻き消えた。

 無力だ。全てが、あまりにも無力すぎる。


 その瞬間、背後から突風のような圧が迫る。

 二人が振り返る暇もなく、何か見えない衝撃が叩きつけてきた。


「っぐあああっ──!」


 雪煙が爆ぜ、足元の地面が崩れる。


 次の瞬間、二人の体は宙を舞い、風に巻かれるようにして吹き飛ばされた。

 雪に覆われた地面が裂け、空と地が反転する。世界そのものがぐらりと揺らいだ。


「──有馬!」


 声と同時に、咄嗟に伸ばされた奏の手が、有馬を庇うように突き飛ばす。


「ッ……あ──!」


 視界が白に塗りつぶされ、有馬の体は冷たい岩肌に叩きつけられた。

 耳がきいんと鳴り、手足の感覚が遠のいていった。


 誰かの声が、遠くで囁くように聞こえた。


「ねぇ、あったかい?」

「この手のぬくもりが……心なのかな……」


「なれるよ。だってお前は、俺の英雄なんだから」

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