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第0話 プロローグ

始めまして作者の皐月海斗です

最後まで読んでいただけると嬉しいです


16歳の高校生、柊木颯太、平凡な日常を送っていた。


「今日も学校か……」


朝、目覚まし時計が鳴り響く。颯太は眠そうな目をこすりながら布団を抜け出し、身支度を整える。家の中はまだ静かで、キッチンからは母親が朝食を作っている音が聞こえる。父はすでに仕事に出ており、妹の楓はまだ寝ている様子だ。


「おはよう、颯太」


「おはよう、母さん」


母親の温かい声に、颯太は自然と微笑んだ。小さな家の中で、家族と過ごす毎日は特に派手なこともなく、穏やかなものだった。しかし、それが何よりも颯太にとって大切で、安らぎの時間でもあった。


しばらくすると、妹が寝ぼけた顔でリビングにやってきた。


「おはよう、お兄ちゃん」


「おはよう、楓。」


妹はまだ半分夢の中というような顔をしているが、目をこすりながら頑張って起きてきたであろう姿にソウタは心の中で少し微笑みながら、朝ごはんを用意していた母親を手伝おうとした。


「ねぇ、お兄ちゃん、ちゃんと勉強するのもいいけどほどほどにね。 お兄ちゃん、いつもぼーっとしてるんだから!」


妹の楓は、颯太があまりにも勉強に身が入っていないことを心配しているようだった。彼女はいつも元気で明るく、家の中で唯一の小さなエネルギー源のような存在だった。時々、うるさく感じることもあったが、それでも颯太は妹がいてくれてよかったと感じていた。


「うるさいなぁ。お前だって勉強しなきゃだろ?」


「もちろん! でも、お兄ちゃんがしないと、なんか心配になるんだよ!」


そうたは笑いながら妹と軽く言い合いをした後、朝食を一緒に食べる時間が訪れる。普段通りの朝食を囲んで賑やかな食卓が広がる。テレビを見ながら話をし、仕事の愚痴をこぼし、そして最後には家族全員で「いただきます!」と声を合わせて食事を始める。


「今日はパパ、朝起きるの遅かったね。ねぼすけー。」


「あはは、仕事がちょっと立て込んでてね。でも明日は休みだろ?」


「え?!やったー!」


「父さんの休みって、たまにしかないからな。レアだね。」


颯太はそんな会話に耳を傾けながら、妹の顔をちらっと見た。楓は食事を終えると、学校の準備を始め、颯太もそれに続いてリュックを持って玄関を出る準備をした。


「お兄ちゃん、今日は帰ったら少し勉強教えてよ。最近数学、全然わかんないんだよ!」


「もう楓も中3だもんな。しょうがないな、後で教えてやるよ」


妹の頼みを軽く受け入れながら、颯太は玄関を出た。今日も特別なことはない。ただ、いつも通りの一日が待っているだけだ。放課後、学校が終わったら、妹と一緒に勉強をして、家族みんなと夜ご飯を食べる。それが普通の生活で、颯太はそれに不満を持つことはなかった。


学校での一日はあっという間に終わり、颯太は友達と雑談を交わしながら帰路につく。途中で部活のことを考え、今日は少しだけ気が重くなっていたが、それでも別に特別な問題はない。


家に帰り、夕食を囲む時間を楽しみにしながら、颯太は家のドアを開けた。


だが、そのとき――


ガラガラッ。


突然、足元がぐらつき、部屋の空気が歪み始めた。次の瞬間、全てが白い光に包まれ、颯太は一瞬にして意識を失った。


目を開けると、周囲の景色がまったく違っていた。颯太がいつもの家のドアを開けた瞬間、彼は異世界に放り込まれたようだった。


「ここ……は?」


目の前に白い空間が広がる。冷たい風が吹き、颯太は自分がどこにいるのかまったく理解できなかった。家族と過ごしたあの穏やかな時間が、まるで夢のように遠く感じられた。


背後から足音がして振り向くと、そこには年老いた男性が立っていた。白いローブを着たその人物が、親しげにに声をかけてくる。


「よう少年。」


「え?」


颯太は戸惑いながらも、声を返した。


「ここは何処なんですか?」


「君が選ばれし者だ。この世界には魔王が現れ、その脅威に立ち向かう者が必要だ」


「選ばれし者? 俺がですか……?」


自分が異世界に召喚され、英雄として魔王を倒さなければならないと言われても、颯太にはその意味がわからなかった。ただの高校生、普通の生活を送る日々を過ごしてきた自分が、いきなりそのような役割を担うなんて――。


「君には力が宿っている。今すぐその力を使うことはできないが、いずれ目覚める」


その言葉に、颯太はますます混乱した。そのとき、空に青い光が現れ、空間に剣が現れた。それは輝く青い刃――


「これが君の武器だ。名を『アステリア・ブレード』という。」


颯太はその剣を見つめ、言葉を失った。剣を握ることなどできるのだろうか? 異世界で戦うなんて、まるで映画や漫画の話のようだ。映画や漫画の主人公に憧れてはいたがそれとこれは別だ。それに、どうして自分がその役を担わなければならないのか理解できなかった。


「俺には……無理だ」


思わず口から出た言葉。颯太はそのまま立ち尽くし、剣を前にして動けなかった。心の中で、自分にはこの世界を救う力などない、ただの高校生だと繰り返すばかりだった。


「君がその力を発揮することで、この世界を救うことができる」


「でも、俺は……」


自分が選ばれた理由なんてわからない。喧嘩だってろくにしたことのない俺に何ができるんだ。それに向こうでは家族だって俺の帰りを待ってるんだ、なのに、どうしてこんなところに――?


颯太は剣を見つめながら、ただ呆然としていた。彼の中では、まだその現実を受け入れることができなかった。戦う覚悟なんて、到底できるはずがない。


「今はただ、剣を取ることが重要だ。覚悟が決めろ。」


「覚悟……」


その言葉が、颯太の心に深く響いた。けれど、すぐには答えが出るはずもなく、颯太はただその場に立ち尽くすことしかできなかった。


「君が戦わなければ、向こうにいる君の家族だって無事じゃ済まないぞ。」


「――なぜなんですか?家族は関係ないだろ!」


颯太は少し感情的に言い返す。しかし老人ははっきりと言い放つ。


「この世界に異世界の人が来れるということはその逆もまた然り。魔王はこの世界を征服した後次は君の世界に侵攻する。」


「じゃあなんで、俺みたいな非力な高校生を呼んだんだ!もっと他にいるだろ!」


「なら君はその者に自分の身代わりになれと?」


「!!!」


「なら選択肢を与えよう。君が命を賭けて2つの世界を守るか、顔も名前も知らない誰かに身代わりになってもらうか。」


ズルい、そんなの言われたらもうこれしかないじゃいか。


「ーーすよ」


「なんだ?」


「やりますよ。家族を守るためならなんだって。」


「ならこの剣を受け取れ。」


美しい青銅製の柄を握り、剣を振るう。


「忘れるな少年。君がこれから背負うものの重さを。」


そこまで語ると老人は白いモヤに包まれ消えた。


戦う、そして世界を救う。そんな事が俺にできるのだろうか。いや、出来る出来ないじゃないやるしかないんだ、家族の為に。


「戦おう。自分が戦って、勝ってこの世界の人も、そして家族も守ってみせる!」


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