つまんねー人生に色どりを。
つまんねー人生だな…
なんて思いながらテレビのチャンネルを切り替えていた2月のとある日。
私は「のど自慢チャンピオン大会」なるものを見つけた。
…な、なんだこれは?
っていうか、つまんねー人生から脱却するにはコレに出るしかない!
そう思い込んだ私は早速「のど自慢」を検索した。
ふむ、私の住む地域は5月から募集開始か…
忘れないよう普段は使う必要のないスマホのカレンダー予定に「のど自慢、応募」と打ち込んだ。
5月、スマホが教えてくれる前に自らのど自慢の応募サイトを探し出し、
メールアドレスを送ると申込専用URLが送られてきた。
いざ、応募!
そう思ったがなんと歌う曲に対する思いを100文字以内で書かなければならない…
しかも、申込専用URLは有効時間15分…
曲に対する思いを100文字以内に…
就活時代の1分間で自己PRを、ってのを思い出し冷汗が出る。
わかっちゃいるけど、難しい。
テレビに出てまで歌いたい曲。
つまんねー人生を少しだけ生きやすくしてくれた曲。
思いの丈が溢れに溢れ、余裕で500文字は超えてしまった。
なんとか100文字に収め、震える手で申し込みボタンを押す。
・・・・・・
・・・・・・
待てど暮らせど申し込み完了メールが届かない。
メールアドレスを送った時はすぐに返信が届いたのに…
っ、もしや!
時間を確認すると1時間以上経過していた。
年齢を重ねると時間経過が早いけど、さすがに早すぎる。
体感10分が1時間とは…。
ダメじゃん。
時間切れじゃん。
っていうかのど自慢に出てる人達、みんなこんな事してたんだ…
いや、落ち込んでる場合じゃない。
つまんねー人生に色どりを!
そう思って先ほど送ったメールアドレスを再度送信すると、
一度使ったアドレスは使用できないとの事。
おー、さすが公共放送局。
しっかりしてるなー。
なんて感心するも、
えっ、じゃあ、申込もできないじゃん。
動揺しつつ、もう1つメールアドレスがある事を思い出した。
心の中で小躍りしてしまう自分に「どんだけ普段、喜びがないんだよ!」と、
思ってしまう。
2度目の挑戦で無事に申込ができた。
予選に参加できるのは200組。
参加者には郵送で書類が届く、と申込完了メールに記載がある。
結果がわかるまでの私は、
研究のために毎週録画を始めたのど自慢を何度も見ては出場者の人たちの歌や
パフォーマンスを見ては笑ったり涙したり何故か緊張したり…
通勤時の車内では全力で歌の練習をしては、
いや、こんなんじゃダメだ。
もっと感情を込めなきゃ。
いっそ、ボイトレ行こうかな?
あ、そういえば服どうする?
あれ、新しい服買ったの何年前だっけ?
などなど、自分は予選を通過してのど自慢に出る妄想…
いや、来年のチャンピオン大会出場に向けての心の準備すらしていた。
しかし、その妄想はついに終わりを告げた。
今日、選考落ちメールが届いたのだ。
いや、わかってはいた。
のど自慢に出ていた人も「20回目の挑戦でやっと出場できた!」と、
喜んでいた姿を研究と称して私は何度も見返していたのだから。
そう簡単に出る事はできない。
わかっていた、
わかっちゃいたけどさ…
あー、出たかったー。
普段、会社と家との往復のみで休日は専ら飼い始めたメダカを眺める日々。
のど自慢に出場! なんてことになったらコミュニケーション能力がない私でも、
「じ、実は…のど自慢に出ることになりまして」
って、会社でボソッと言ってみたりしたかった…。
…でも、申込前から結果がでるまでの数か月。
つまんねー人生を送っている私でも少しばかりワクワクしていたのは事実。
出れないだろうなー、
なんて心の保険をかけつつもチャンピオン大会にちゃっかり出る妄想までした自分。
この先もなんとかやっていけそうですな。