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白石たちはエレベーターで四階へ降り、その階の会議室へ向かった。会議室の扉を片桐がノックする。すぐに清水の返事がした。
「失礼いたします」と言って、片桐は扉を開ける。
「あ、どうかしました?」
清水が白石たちに気付いて言った。
「清水さん、副社長の木下さんと水田さんはどちらにいらっしゃいます? お二人にもお話をお聞きしたいのですが」
片桐が端的に説明する。
「二人ですか……。今、連絡してみますね」
清水はそう言って、テーブルにあったスマホで電話を掛けてくれた。
「あ、清水です。副社長、今、どちらにいらっしゃいますか?」
電話を終えて、清水が口を開く。
「副社長は今、工場にいるみたいです」
「工場ですか。それはどちらです?」と、片桐が訊き返す。
「旭区の方でして……。一時間半程したら、こちらへ戻って来るそうです」と、彼女は言う。
「分かりました。で、水田さんは?」
「水田は営業部の部署におります。営業部は二階です」と、彼女は笑顔で答えた。
「二階ですね、分かりました。ありがとうございます」
片桐は清水にお礼を言う。
それから、清水はノートパソコンを閉じて伸びをする。すぐに彼女は腕時計をちらりと見た。
「ああ、もう一時か」と、彼女は言う。「そろそろお昼にしよう」
そう言って彼女は立ち上がり、ノートパソコンをカバンにしまうと、会議室を出て行った。
「俺達は水田さんに会いに行こう」
それから、片桐が白石に言う。
「い、い、言われなくても、い、い、行くよ」と、白石は答えた。