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それから、白石は再び片桐と一緒にS:TARの会社ビルへ赴いた。
早速、片桐が受付の女性に声を掛ける。
「あの、警察なんですけど」と、彼は警察手帳を出して話をする。「秘書の清水さんとお話したいのですが」
「はい、かしこまりました」
受付の女性は言い、受話器を取る。「あ、もしもし、受付です。清水さんにお客様です。警察の方、お二人です」彼女はそう言って、電話を切る。
「会議室で待っていてください、とのことでした」と、彼女は言った。それから、「お連れ致しますね」と彼女は笑顔で言って、エレベーターの方へ歩いた。
「ありがとうございます」
片桐は会釈して、彼女の後を追う。白石もその後に続いた。
それから、その受付の女性は四階のボタンを押し、エレベーターが閉まる。四階に着き、その女性が会議室の前まで歩いた。早速、彼女はその扉をノックする。すると、中から女性の声がした。
「失礼いたします」
受付の女性が扉を開けて言う。そこには、秘書の清水がいた。
「突然すみません」と、片桐が謝る。白石もペコリとお辞儀をする。
「どうも、ご苦労様です。あ、お掛けになってください」と、清水が片桐たちに促す。それからすぐに「失礼しました」と、受付の女性がお辞儀をして出て行く。
「お話というのは?」
早速、清水が訊いた。すぐに片桐が口を開く。
「清水さん、一つお聞きしたいのですが、あなたは社長を発見された時、すぐに一一〇番通報しなかったようですけど、それはどうしてでしょう? なぜ副社長さんに先に連絡したんです?」
片桐が肩を竦めて訊く。
「それは……パニックになっていたからです!」
彼女は片桐を真剣に見て言う。
「パニックですか」
「はい……。本当にどうしたらいいかすぐに判断できませんでした……」
清水は下を向いて言った。
「どうしてでしょう?」と、片桐が訊く。
「だって……社長が目の前で死んでいたから……」と、彼女は小さい声で言う。
「はあ、そうですか」
そう言って、片桐は黙る。白石も黙っていた。
「……それだけですか? 話って?」
それから、清水がそう訊いた。
「ええ……まあ……」と、片桐が頷く。「だよな? 他に何かあるか?」それから、片桐が白石に訊く。
白石は頭を振る。
「し、し、清水さん」
ややあって、白石が口を開く。
「はい?」と、清水は白石を見る。
「あ、あ、あの……しゃ、しゃ、社長室を、み、み、見させても、も、もらっても、い、い、いいですか?」
白石はどもりながら言う。
「ええ、構いませんよ」と、彼女は言った。
「す、す、すみません。ありがとうございます。しゃ、しゃ、社長室は……?」
「社長室がどこにあるかですか? 六階ですよ。ご案内しましょうか?」
それから、清水は笑顔でそう言った。
「あ、あ、ありがとうございます。お、お、お願いします」
白石がそう言うと、すぐに清水は白石たち二人を社長室へ連れて行った。
「じゃあ、ここで」
社長室の前で清水はそう言うと、エレベーターの方へと踵を返した。その後すぐに、彼女は「あ」と言って振り返る。
「私は四階の会議室におりますので、何かあればお声掛け下さい」
清水はそう笑顔で言って、エレベータの方へ行く。それからちょうど来たそれに乗って、彼女は下へと行った。
「よし、俺らは俺らの仕事をしよう」
その後、片桐がそう言った。白石は頷く。