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署へ戻る途中、兵頭部長のスマホが鳴った。緑区で銀行強盗があったらしく、彼は急きょ応援でそちらへ行くことになった。片桐は兵頭部長を現場まで送る。
「白石、片桐。すまないが、今回の密室事件はお前らに任せようと思う」
現場へ向かう途中、兵頭部長がそう言った。
彼の言葉に、白石や片桐は驚いた。今回の事件は二人で解決できるだろうかと白石は思った。
兵頭部長を現場へ降ろした後、白石と片桐は一度、署へ戻った。
「石原社長を殺害した犯人は、あの三人の誰かか……」
デスクに座っていた片桐が呟くように言った。
「そ、そ、そのか、か、可能性はた、た、高いと思う」と、白石は言う。
「一体、誰が犯人だと思う?」
それから、片桐が白石にそう訊いた。
「ま、ま、まだわ、わ、分からないや……」
白石は肩を竦めて言った。
「俺は、秘書が怪しいと思うよ」
それから、片桐がそう言う。
「え? ど、ど、どうして?」
「だって、そうだろう? 彼女は社長の死体を発見した時、すぐに一一〇番通報せず、副社長に連絡したと言っていたじゃないか!」
片桐が口早に言う。
「あ、ああ。た、た、確かにそ、そ、そう言っていたね」
「だろ?」
「で、で、でも、た、た、単にど、ど、動揺してわ、わ、忘れていただ、だ、だけじゃないのかな?」
「そうなのかな……。じゃあ、なぜ彼女はその時、副社長に連絡する必要があったのか? それって、なんかあるんじゃないかな?」
二人の関係に何かあるのだとしたら、一体どんな関係だろうと白石は考える。しかし、すぐに何かを思いつくことはなかった。
「……お、お、思いつかないよ」
白石がそう言うと、「まあ、もう少し考えてみよう」と、片桐は言った。
「そ、そ、それよりさ」
それから、白石が口を開く。
「ん?」
「み、み、み……」
「み?」
「み、み、密室のな、な、謎も、き、き、気になるな」
白石がどもりながらそう言う。
「ああ、そうだ。それも考えないといけないのか……」
片桐はそう呟くように言った。
「み、み、み、密室のな、な、謎はあのへ、へ、部屋をも、も、もっとし、し、調べてみないと、わ、わ、分からない」と、白石が言う。
「ああ、そうだな。じゃあ、まずはあの部屋を調べてみるかい?」
それから、片桐がそう白石に訊いた。
白石は頷く。
「そ、そ、それと……」
再び白石が口を開く。
「なんだ?」と、片桐が訊ねる。
「も、も、もう一度、あ、あ、あの三人、ひ、ひ、一人一人に、は、は、話をき、き、聞こう!」
白石は片桐の顔を真剣に見て言った。
「そうだな!」と、片桐は笑顔で言う。
「そ、そ、それじゃあい、い、行こう!」
白石は片桐を見て言った。