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「片桐、白石。聞いたぞ! この間の密室事件を二人で解決したんだってな!」
翌日、朝礼を終えて片桐と白石が自分たちの部署へ戻ると、そこに居た兵頭部長が笑顔でそう話す。
「ええ」と、片桐はにやりと笑って言う。
「まあ」と、白石も応える。
「二人ともでかした! 犯人は、あの副社長さんだったとはなあ……」と、兵頭部長は腕を組み、あごに手を当てて言った。
「そうです。……それより、この事件のトリックの方がすごかったんですよ!」と、片桐は嬉しそうに言う。
「どんなだい?」
それから、部長がそう訊いた。片桐はすぐにそのトリックを彼に話した。
「へー、そうかい! それはマジックみたいだ!」と、兵頭部長は驚く。
「そうなんですよ。それより、部長の方はどうでした?」
その後、片桐がそう兵頭部長に訊いた。彼は強盗事件を担当していた。
「ああ、それが結構大変だったんだよ……」と兵頭部長は言い、その時のことを話した。
「それは大変でしたね」
兵頭部長の話を聞いて、片桐は相槌を打つ。白石も彼の話を聞いて、大変だなと思った。
「さ、そろそろ、昼飯でも食いに行こうか!」
それから、兵頭部長が言った。三人で食堂でお昼を食べることにした。
「いらっしゃい!」と、食堂のおばちゃんが白石に言う。「今日は何にする?」
「か、か、か……」
白石は毎度のようにどもる。
「唐揚げ定食?」と、おばちゃんが訊いた。
「い、い、いや。か、か、か、かつ丼で!」
それから、ようやく白石は注文したいものの名前が言えた。
「かつ丼ね。はいよー」
おばちゃんは朗らかな声で応える。
「はい、お待たせ!」
それからしばらくして、白石の頼んだかつ丼が出来上がる。
「あ、あ、ありがとうご、ご、ございます」と、白石はお礼を言う。
「はい、いらっしゃい」
それからすぐ、おばちゃんは次に並んでいる人の注文を聞いた。
その後、白石は兵頭部長と片桐が座っているテーブルへ向かう。
「遅いぞ、白石!」
白石が席に座ろうとすると、片桐が唐揚げ定食を食べながら言う。
遅いと言われたのは、自分が注文する時にどもることから時間が掛かってしまったからではないかと白石は思った。
「ご、ご、ゴメン」と、白石はすぐに謝る。
「おいおい、片桐。からかうのはよせ!」
それから、兵頭部長が片桐を注意するように言った。そんな兵頭部長は、サバの味噌煮定食を食べている。
兵頭部長が片桐にそう注意をすると、「すみません」と、彼は謝る。
「白石、お前も気にするな」
それから、兵頭部長が白石に言った。
「あ、あ、ありがとうご、ご、ございます」と、白石はどもりながら彼に感謝する。
「そう言えば……」
ふと、片桐が思い出したように口を開いた。
それから、「どうした?」と、兵頭部長が訊く。
「今朝のニュースで知ったんですけど、S:TARって会社あるじゃないですか。あの会社の新社長が水田さんになったんだそうです」
「へー、そ、そ、そうなんだ!」
白石は彼の話を聞いて、ビックリする。
「水田さんって、誰だっけ?」
その後、兵頭部長が二人にそう訊いた。
「えーっと、あの、営業部のエリートの」と片桐が言うと、「あー、あの若い眼鏡の人か!」と、兵頭部長は思い出す。
「そうです」と、片桐は笑顔で言う。
「そうか。さすがはエリート」と、兵頭部長は頷く。
「そ、そ、それじゃあ、ひ、ひ、秘書はし、し、清水さん?」
それから、白石がそう片桐に訊くと、「そうみたい」と、彼は言った。
「そ、そ、そっか。そ、そ、それはい、い、いいね!」
白石はにこりと笑って言う。
「うん。社長と秘書としてはいい組み合わせだよ」と、片桐はにやりと笑った。
二人の関係を考えれば、妥当ではないかと白石は思い、首を縦に振った。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!
まず、ここで私の話をさせて頂きますが、実は私・落川翔太は「吃音症」なんです。軽度の部類ではありますが。
吃音症と診断されたのも、つい最近。2024年の2月です。
吃音に気付いたのは、中学から高校時代ですが、その時はあまり気になりませんでした。
気になるようになったのは、本当に吃音症と診断された頃。会社での仕事などでやや支障をきたしていると感じたからです。吃音症を扱う病院は少ないみたいで、たまたま地元からやや離れた病院で診察をしていることをネットで知り、通院することになりました。現在も、3か月に一回程度、通院しながらリハビリしております。吃音だと、注文する時や名前を言うなど特定の場面や状況で、どもってしまうことがよくあります。また、固有名詞や数字、五十音の特定の段や行などで言いにくい語などがあり、なかなか発話できない……などのこともよく起こります。
前置きが長くなりましたが、ここから後書きを書かせて頂きます。
さて、この吃音刑事を書こうと思ったのは、そうした吃音症(自分)にちなんだ作品を書こうと思い立ちました。やはり、私はミステリーが好きと言うこともあり、もしも「吃音症の刑事がいたら」どんな作品になるのだろう? といった好奇心からこの作品を作っていきました。
皆様、読んでいてどうでしたか? 正直、読みにくかったんじゃないかななんて作者自身思ったりもしております(笑)
また、今回は「密室」ものを書こうというのも思い立ち、密室トリックにも初挑戦してみました!
皆様の中に、この密室トリックを突破できた方はいらっしゃいますか?
もしいたら、拍手をしたいです。
皆様の周りに吃音症の方はいらっしゃいますか?
なかなか見かけないかもしれませんけど、もし出会うことがあれば、その人の話はゆっくりと耳を傾けるなどしてあげて下さい。そして、もしその人が言葉に詰まっているようなら、助け船を出してあげてもいいと私は思います。そして、吃音症の方が安心して生きられる社会を作ってあげるべきじゃないかとも思うのです。
この作品では、至る所で白石を助ける人物たちが登場しています。それにより、白石もなんとか吃音症でありながら刑事として生きている訳です。
少しでも多くの人が、吃音を知るきっかけになったり、多くの吃音症の方々が少しでも、生きていきやすい社会になればいいのではないかと私は思います。
長文になりましたが、改めましてここまでお読み頂いた皆様、
どうもありがとうございます!
もしよろしければ、評価や感想等頂けると嬉しく思います。
最後になりますが、この「吃音刑事」は(好評なら)シリーズ化していこうと考えております。




