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「「別の扉!?」」

 白石たちはハモるように驚く。

「はい。あ、でも、扉というより()()というか……」と、緑川は言う。

「こ、こ、小窓?」と、白石は言う。それから、「も、も、もしかして、あ、あ、あの画のう、う、裏とか?」と、白石は訊く。

「いえ」

「そ、そ、それじゃあ、ほ、ほ、本棚のう、う、裏?」

「いいえ」

 それから、白石はタンスの裏やクローゼットの奥などと聞いてみたが、違うと彼女は言う。

「それじゃあ……どこにそんなのあるんです?」

 それから、片桐が諦めてそう訊いた。

()()()」と、彼女は答える。

「ゆ、ゆ、床!?」と、白石は驚く。

「床か……」と、片桐は呟く。

「か、か、片桐くん」

 それから、白石が片桐を呼ぶ。

「ああ、その()()というやつを探しに行こうじゃないか!」

 片桐はにやりと笑う。うん、と白石は頷く。

 それからすぐに片桐は立ち上がり、そこを出て行く。その後、白石も立ち上がり、緑川を見る。

「み、み、緑川さん、ありがとうございます」

 白石がそうお礼を言うと、「話ってもう終わりですか?」と、緑川は訊く。

「はい」

「あ、あの……」と、緑川が咄嗟に口を開く。

「は、はい?」と、白石は彼女を見る。

「関係ないかもしれないですけど、社長室のあの絵画の裏に、実は……金庫があるんです!」と、彼女は言った。

「き、き、金庫?」と、白石は驚く。

「ええ。社長から聞いた話ですが、その金庫の中にはルビーやサファイア、ダイヤモンドなどの『星形の宝石』が入っているそうです……」と、緑川は言った。

「す、す、スターですか?」

 白石がそう訊くと、「そうみたいです」と、緑川は嬉しそうに言う。

「なんでも、石原社長は星形のものが好きだったんだとか……」と、緑川は言って笑う。

 なるほどと、白石は思った。それから、会社名が星を意味する”STAR"と関係あるのかもしれないなとも思った。

「そ、そ、そうなんですか。わ、わ、分かりました。……し、し、失礼します」

 それから、白石はそう言って彼女に頭を下げ、すぐにその店を出た。

 白石が助手席に乗ると、すぐに片桐は車を走らせる。向かうはS:TARの会社ビルである。

 十分ほどして、そこへ着いた。

 白石たちはその会社へ入るなり、受付の女性に再度、社長室を見せてもらいたい旨を伝えると、すぐにオーケーしてくれた。

 早速、二人はエレベーターで六階へ行く。

 六階に着き、白石たちが社長室の方へ歩く。そこに一人の男性がいた。

「あ、刑事さん!」と、彼は二人に気付いて言った。

 副社長、いや()()()の木下さんである。

「どうかされましたか?」と、片桐が彼に訊く。

「いや、この部屋をどうしようかなと思ってね……」と、木下は言う。「片づけようにもね……」

 つい最近、社長になった木下さん。元社長である石原さんが亡くなり、この社長室もこれからは彼の物になる。しかし、まだ事件の捜査中ということもあり、しばらくは使えない上、片づけたくても片づけられないことで落ち着かないのだという。

「なるほど」と、片桐は頷く。

「ところで、お二人はどうなさったのです?」

 それから、木下社長が二人に訊く。

「ああ、えーっと、ちょっとこの部屋をもう一度調べたくて。構いませんか?」

 片桐が木下社長にそう訊くと、「ええ、いいですよ」と、彼はにっこり笑って言った。

「ありがとうございます」

 彼にお礼を言って、片桐はその部屋の中へ入る。白石も目礼して、中へ入った。

 それから、木下社長はすぐにエレベーターの方へ行った。

 白石はゴッホのひまわりの画の前に立つ。

「か、か、片桐くん」と、白石が声を掛ける。

「何?」と訊いて、片桐は白石の方を見る。

「ちょ、ちょ、ちょっとみ、み、見て欲しいものがあ、あ、ある」

 白石はそう言って、その壁の画を外してみせる。

「おい! 何してるんだよ……って、え?」

 白石がその絵画を外すと、その裏にはシルバーの金庫があった。それは壁に埋め込まれていた。

「金庫!? こんなところに!」と、片桐が驚く。

 聞いてはいたが、白石も実際にそれを見て驚いた。

「さ、さ、さっき、み、み、緑川さんがい、い、言っていたんだ!」と、白石は言う。

 それから、白石は金庫の中身の話をする。

「星型の宝石か……。星は英語でスター……。もしや、会社名と何か関係があるのかね?」

 それから、片桐がそう言った。

「た、た、多分。そ、そ、そうかもし、し、しれないね」と、白石は言う。

「ふーん……って、それより俺らが探してるのは()()だよ! 床って言ってたな……」と、片桐が思い出すように言った。

「うん」と、白石は頷く。すぐに白石はその画を元へ戻した。

 社長室の床には、黒と白のパズル型のカーペットが敷かれている。

「このカーペットの下だな」

「ぜ、ぜ、全部め、め、めくってみよう」

 それから、白石たちは二人で手分けをして、そのパズルカーペットを一枚ずつ剥がしていく。しかし、すぐに緑川の言っていた「小窓」らしきものは見つからなかった。

 その後も二人はどんどんとめくっていった。

「おい、あったぞ!!」

 社長室の椅子の辺りにいた片桐が大声で言う。

「え? ほ、ほ、本当かい?」

 白石はそう言って立ち上がり、片桐の所へ行く。椅子辺りのカーペットの下に、床下収納のような扉があった。

「ほ、ほ、本当だ!」

「開けるぞ!」

 そう言って、片桐がその扉を開ける。

「え!?」

 片桐はその下を見て驚いた。

 その下には()()があった。

「か、か、階段!!」と、白石もビックリする。

「だな。ちょっと降りてみよう」

 片桐はそう言うと、すぐにその階段を降り始める。

「え、あ、ちょっと……」

 困惑しながらも片桐に続くように白石もその階段を降りる。白石が降りると、片桐が一度、立ち止まった。

「ど、ど、どうしたの?」と、白石は訊く。

「足元に、また小窓のようなものがあるんだ!」

「こ、こ、小窓?」

 下を見ると、確かに「小窓」があった。「ほ、ほ、本当だ!」

 その先にも階段は続いている。

「もう少し降りてみよう」

 それから、片桐はそう言って、再び階段を降り始めた。白石もその後に続く。

「あれ? 何だろう?」

 少しして、その階段に片桐が何かを見つけたらしい。「鍵だ!」と、彼は目を丸くして言う。

「か、か、鍵?」

 白石は彼に近づいてそれを見る。確かにそれは、「鍵」のようであった。

「こ、こ、これって……」

()()()()()じゃないか?」

 片桐はにやりと笑う。それから、白石もそうだろうと思い、頷く。

「で、で、でも、ど、ど、どうしてこ、こ、こんなと、と、ところに?」

 白石がそう言うと、おそらくと片桐が言う。

()()()()()()()んだ!」

「そ、そ、そうか!」

「指紋が残っているかもしれない」と、片桐は言う。

「ああ……。で、で、でも、ふ、ふ、拭き取ったってこ、こ、ことは?」と、白石は言う。

「その可能性もあるな……。残ってたら、ラッキーだけど」

 その後も、二人はその階段を降りる。しばらくすると、その階段も終わり、再び小窓が見えた。

「階段は、ここで終わりみたいだな……」と、片桐は言う。

「こ、こ、ここにもこ、こ、小窓があるね」

「そうだね。ここから下へ降りられるかな」

 それから、片桐はそう言って、その小窓を開ける。その小窓が開き、そこから外へ出られそうだった。

「よし、ここから降りよう!」と、片桐はにやりと笑って言う。

「え?」

 白石は困惑したが、すぐに片桐はその小窓からその下のフロアへ飛び降りた。

「白石、降りてこい!」

 それから、片桐が白石に言う。

「え? こ、こ、こわいよ」

 白石はその下へ降りるのを躊躇する。梯子(はしご)か何かがあればいいのだが。

「大丈夫だよ! 平気だから降りてこい!」

 彼は大声でそう言った。

 白石は少し怖かったが、意を決し、そこから飛び降りた。降りてすぐ白石はそのフロアの床に尻餅をつく。

「痛たたた……」

 少し痛かった。「は、は、()()か何かないのかな……」それから、白石は呟くように言う。

「そんなの置いてないだろう」と、片桐は言う。

「そ、そ、そうかなぁ。そ、そ、それじゃあ、こ、こ、ここからは、ど、ど、どうやっては、は、入るんだい?」

 白石がそう訊くと、「あ、そっか!」と、片桐は思い出したように言う。

「ど、ど、どこかにあるよ、き、き、きっと」と、白石は言う。

「そうだな。それよりさ、白石。それ、なんだ? その手に持っているのは?」

 それから、片桐が白石を見て訊いた。

「ハ、ハ、ハンカチだよ。こ、こ、紺色の」

 白石はそのハンカチを見せながら言う。

「それ、どこにあったんだ?」と、片桐が訊く。

「か、か、階段でひ、ひ、拾ったんだ」と、白石は言う。

「ほう。それも、()()()()()()()()()かな?」

「そ、そ、そのか、か、可能性はあ、あ、あるね」

 白石はにやりと笑う。

「それも指紋を確認しよう」

 それから片桐はそう言って、ポケットからスマホを取り出し、鑑識に連絡する。

「さて、一旦、署に戻ろう」と、片桐が言う。

 白石は頷いた。

「と、と、ところで、こ、こ、ここは何階なのかな?」

 ふと、白石がそう言った。

「さあ?」と、片桐が首を傾げる。

 それからちょうどそのフロアに若い男性社員が通りかかったので、片桐はその男性に訊いた。

()()だって」と、片桐は言う。

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