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「何度かって、何回です?」
それから、片桐が訊く。
「二回です」と、緑川は答える。
「二回……ですか。その時は、石原社長とご一緒でしたか?」
「ええ、そうよ」
「いつ行ったか覚えてます?」
片桐がそう訊くと、彼女はええっとと考える。それから、思い出したようで口を開いた。
「先月に一回と、今月一回です」
「なるほど……」
白石はすぐに手帳にメモする。それから、「ち、ち、因みに」と、白石が口を開く。
「じ、じ、事件のあったふ、ふ、二日前。しゃ、しゃ、社長室へは、い、い、行きましたか?」
「いえ、行っていません」と、緑川は言う。
「そ、そ、そうですか」
「優花ちゃーん!!」
それから、店の奥で先ほどの女性が緑川を呼んだ。「そろそろ手伝ってちょうだい!」
「はーい!」と、緑川は大声で返事をする。
「刑事さん、すみません。そろそろお店を手伝わないといけないので……」
緑川が慌てて言った。
「あ、分かりました。では、僕たちはこの辺で……」
片桐はそう言って立ち上がる。
「あ、あ、あとひ、ひ、一つ」
その後すぐ白石が口を開く。
「何ですか?」と、緑川は白石を見る。
「み、み、緑川さんは、しゃ、しゃ、社長室のか、か、鍵はお、お、お持ちじゃないですか?」
白石がそう訊くと、「いえ、持っておりませんわ」と、彼女は答える。
「そ、そ、そうですか。わ、わ、分かりました」
白石はそう言った後、ソファから立ち上がる。それから、二人はそのお店を後にした。
「はあ……。愛人の線は無さそうだな……」
車内で片桐がため息を吐きながら言う。
「い、いや。ま、ま、まだ、そ、そ、そうと決まったわ、わ、訳でもな、な、ないんじゃない?」
それから、隣に座る白石が言った。
「え? なぜだい?」と、片桐は訊く。
「だ、だ、だって、う、う、嘘をつ、つ、吐いているかも、し、し、しれない」
白石がそう言うと、「嘘?」と、片桐は首を傾げる。
「ふ、ふ、二日前。しゃ、しゃ、社長室にい、い、行ってるか、か、可能性だ、だ、だってある」と、白石は言う。
「まあ、確かに……。じゃあ、犯人はあの三人の中か愛人に絞られるか……」
片桐はそう言ってにやりと笑う。
「も、も、もう一人い、い、いる」と、白石は言う。
「もう一人?」
「お、お、奥さんだよ!」
白石がそう言うと、「は? お前、さっき、奥さんは違うって言ってたじゃないか!」と、片桐は目を大きくして言った。
「い、い、言った。で、で、でも」
「でも?」
「お、お、奥さんがは、は、犯人というか、か、可能性はう、う、薄いというだ、だ、だけだよ」と、白石は言う。
「可能性が薄いだけだろ?」
「そ、そ、そう」
「だったら……」
「だ、だ、だから、は、は、話をき、き、聞きにい、い、行こう」
それから、白石がそう言った。
「わ……分かったよ」
片桐は面倒くさい顔をして言う。
「なあ、ところで、石原社長の自宅は分かるのかい?」
それから、片桐が白石にそう訊いた。
「ぼ、ぼ、僕もわ、わ、分からない……」と、白石は言う。
「それじゃあ……」
「き、き、聞こう! し、し、清水さんに!」




