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幕間1. 親睦会!「真実か挑戦か」

最初はルスケン視点、途中からルキエラ視点です(文章の途中でアナウンスはあります)

(Rusken side)


 「親睦会をしますわ!」


 宿の部屋に戻ってから、お嬢――ルキエラはそう宣言した。


 堕落した騎士団をとっちめてから、オレたちは疲れた体を休めるために宿に戻った。今日のところはもう寝よう――としたのだが。


 「だって、昨日は騎士団のあれこれを考えていて初めての3人部屋を楽しめなかったですし。私はみんなで楽しくお泊りしたいのですわ!」


 2段ベッドの上段で枕を抱えながら頬を膨らませるルキエラ。そこに王女としての気高さ的なものはない。完全にわがままなガキだ。


 「そりゃ別にいいけど、何するんだ?」


 「何も考えていませんわ!」


 「なんだそりゃ」


 「あたりまえでしょう? 私、こういう経験したことないんですもの」


 まあ、言われてみれば確かに。


 ルキエラ・ミシェル・マリア・イエローゲート――この国のお姫様たる彼女は、驚くべきことについ先日までお城の外に一歩も出たことがなかった箱入り娘だったらしい。で、その反動(?)で旅に出ることになったのだとか。


 「殿下、であれば今夜はもうお休みになられたほうが――」


 「嫌ですわっ」


 「…………」


 訂正しよう。彼女はわがままなガキどころじゃない。クソガキだ。


 こんなのを幼少期からお世話してきたというこの修道士――カクペルという男には同情を禁じ得ない。


 お転婆王女はオレに向き直り、きらきらした目で無茶振りをする。


 「ルスケンは旅慣れしているのでしょう? なにか、こういうときに親睦を深められるような遊びを提案してくださいな」


 「そうさなぁ」


 正直言って、オレも旅慣れしているとはいえ、こんな風に仲間内で和気藹々と同じ部屋で歓談するという経験は多くない。たいていは一人部屋だ。もしくは必要に迫られて複数人で寝泊まりすることもあるが、そこではただ休息をとり、必要な情報を交換するにとどまる。


 (お嬢が想像してるのはきっとお貴族様のガキどもが参加するようなサマースクールみたいなもんだろうが、オレがそんなもんに縁があるワケねぇし、カクペルも……なさそうだよな)


 どうしたものか。

 数秒悩んだ末、オレはある妙案(自分で言う)を思いつく。


 「晩酌でもすっか!」


 「まぁ!」


 「仲良くなるには酒だ、酒!」


 オレは鞄の奥のほうからブランデーを取り出す。気付け薬にも嗜好品にもなるスグレモノだ。


 「王女様ってのは酒も嗜むもんだろ?」


 ベッドから降りてきたルキエラにスニフターを手渡す。


 「ええ、本当に嗜む程度ですが」


 「――待て、リンデマン」


 カクペルがまるで水をぶっかけるみたいな声でオレを制する。


 「なんだよ、酒がダメってか?」


 オレはブランデーの瓶を軽く揺らしながら肩をすくめた。


 「その酒は度数が高すぎる。もう深夜1時だぞ、今から飲めば明日の行動に影響が出てしまう」


 「ちょっとくらい大丈夫だって! それに何か予定が決まった旅じゃねーんだからよ」


 「そうですわよカクペル」


 ルキエラもオレの横についてカクペルに不満げに唇を突き出す。


 「これこそ旅の醍醐味なのですわ!」


 堅物修道士は問題児二人の教師のような目でオレたちを見てから、わざとみたいなデカい溜息をついて、


 「……では、飲酒量は厳格に管理させていただきます」


 と、とうとう根負けした。


 イェーイ、とハイタッチするオレとルキエラ。


 オレたち、結構気が合うんじゃね?


 ***


 「カンパーイ!」


 2段ベッドの間の狭い床にオレたちはこじんまりと座り、ルキエラの音頭でぐいっと30mlほどのブランデーを飲み干した。


 「っかー! やっぱこれだよ、これ!」


 「! ブランデーというお酒も美味ですわね」


 ルキエラはまさしく貴族然とした態度で、香りを楽しみながらゆっくりと味わっている。


 「おっ、お嬢案外イケるクチだな。お城じゃいつも飲むほうなのか?」


 「いえ、晩餐会くらいしかお酒をいただく機会はありませんわ。飲むのもワインくらいで、ここまで酒精の強いものは初めでです」


 「そりゃ凄ぇ。お嬢、酒豪の才能があるぜ」


 「ほほほ」


 カクペルのほうはどうだ、と様子をうかがうと、予想に反しケロリとした顔をしている。


 「たしかにきわめて上等な味だ。さすが名産地・西部地方の一級品」


 「ブラザー、お前さん『わかる人間』だな」


 「当然だ。修道士は伝統的に酒とは密接な関係にある」


 「それだけじゃねぇだろ? お前さんは北方の人間だ。白い髪、青い目、ここまで北国の特徴を色濃く受け継いでんなら、酒にだって強いんじゃねぇのか?」


 「――さぁ、どうだか」


 カクペルが不敵な笑みを見せる。

 まったく、秘密主義者ってやつは……


 (ん? ……『秘密』か。いいこと思いついたぜ)


 「よーっしおふたりさん、ここらでひとつゲームをしようぜ!」


 「ゲーム?」


 「ただ飲むのもつまんねぇだろ。酒を使ってやる、親睦を深める遊びっつーのがあるんだぜ」


 「面白そうですわね!」


 興味津々なルキエラと、「嫌な予感がする」とでもいいたげなカクペルの顔。

 両者の反応の違いを見ながらオレは続ける。


 「簡単なもんさ。『真実か挑戦か』だ」


 「なんですの? それ」


 「ルールは単純だ。まずは順番で質問者を決める。で、手番が回ってきた質問者は回答者を指名し、何か一つ質問をするかお題を出す。で、回答者はそれに答えるか、それが嫌なら酒を飲めばいい」


 「下品な遊戯だ」


 「まあまあ、いいじゃありませんの。お互いへの理解が深められそうで楽しそうですわ!」


 「……殿下がそうおっしゃるのであれば」


 「んじゃ決まりだな! 回答者が答えられなかった場合、飲む酒の量はスニフターの通常量、まあつまり30mlくらいでいいだろ」


 「アルコールの分解時間を考えれば、殿下はあと3杯、私とリンデマンは5杯程度で留めておいたほうがいい」


 「わーったよ! ま、そこは飲む羽目にならなきゃいいだけの話だし」


 それじゃあ、とオレたちはまず質問者の順番決めをした。

 その結果、ルキエラ→オレ(ルスケン)→カクペルの順番で質問を回すことになった。


 「それでは私から参りますわね」


 ルキエラは数秒うーんと考えるそぶりを見せたのち、意を決したように指をさした。その先には……


 「お。オレか?」


 「ルスケン、貴方が今までで最も危ないと思った出来事はなんですの?」


 「よっしゃ、ここは答えるぜ!」


 「ええ、純粋に興味がありますもの」


 「危ないと思った出来事ねぇ」


 いろいろあって迷うな。


 なんだか尾鰭がついた話になっている「銃を装備した兵士たちを一人で倒した」時の話でもするか? いやそれでは芸がない。

 極東のジャングルでまともな補給もないままゲリラと戦った話?

 砂漠で40日間行軍させられたのも地味にキツかったし……


 (そうだ、これならお嬢も喜びそうだな)


 「数年前、囚われのお姫さんから助けてほしいっていう依頼を受けてな」


 「まぁ」


 「姫っつっても本物の王女様じゃないぜ。マフィアのボスの一人娘だ。親父の血なまぐさい仕事に嫌気がさして、どこか平和な場所に逃げたいってことだったのさ」


 オレは目を閉じ、その時の記憶を思い出す。


 ああ、あの女はたいそうな美人だった。

 美女のためならいつにもまして真面目に仕事ができるってもんだ。


 「だが、親父のほうも簡単に逃がしちゃあくれねぇ。山を越え国を越え、どこまで逃げてもしつこく刺客を送ってきてな。お前、娘を愛してるのか憎んでるのかどっちだよって話だよな」


 「それで結局どうなりましたの?」


 「刺客は全員ぶっ潰して、ようやく諦めさせられた! あの親父馬鹿かよって思うのがさ、マフィアの戦闘要員の大部分を娘を連れ戻すために使っちまったんだよ。だからすぐにマフィア自体もなくなっちまった」


 「ふふふ、一周回って子煩悩なお父様でしたのね」


 「だがなぁ……ここからが問題なんだが」


 ルキエラが息をのむ。


 「あの女、平和になったと分かったとたん恋人のもとに行っちまったんだよ!!」


 「……はぁ」


 「くっそー、普通ここは『ルスクすごい♡ 私のためにここまで命を張ってくれるなんて……』って惚れるトコだろ!? 絶対オレのほうが元の男よりカッコいいし魅力的だし強いのに!! お前のフィアンセじゃ守れなかったからオレに依頼したんだろ!?」


 「まあまあまあ」


 「くだらなすぎる……」


 「全然くだらなくねーよ!! お前、カクペル、同じ男ならわかるだろ!!」


 「いや全く」


 「大金もらってなきゃあ許せなかったところだぜ……!!」


 「とにかく、ルスケンは物語のようなロマンチックなお仕事もされてましたのね」


 「これがロマンチックですか殿下……?」


 「ま、そゆことよ。んじゃ気を取り直して――」


 オレがびしっと指さす先にいるのは……


 「カクペル!」


 「……なんだ」


 「オレさあ、昨日言ったよなあ」


 「何をだ」


 「『リンデマン』と呼ぶな! 『ルスケン』と呼べ! と!!」


 「……あぁ」


 「そういえばそんなお話をされていましたわね」


 前日、夕食時にイリヤがこの宿を訪ねてきたことに関して、食後に話し合いをしていた時のことだ。


 オレはカクペルが『リンデマン』と呼ぶことを水臭いといったが、こいつはいまだにそれを改めようとはしていなかったのだ。


 「おっと、『挑戦』はするなよ」

 ブランデーに目をやるカクペルにくぎを刺す。

 「オレは『ルスク』よりも『リンデマン』よりも、『ルスケン』ってあだ名を結構気に入ってるからな」


 「……それはもはやこのゲームの趣旨に反するのでは」


 「こまけぇこたぁいいんだよ!」


 「さ、呼んでみな?」と胸を張り、カクペルの反応を待つ。


 「カクペル、貴方『ルスケン』呼びをしたくない事情でもありますの?」


 「そのようなことはないのですが……しいて言えば、あだ名で呼び合う友人がいままでいなかったので、少し、違和感がある、といいますか」


 その言葉を聞き、オレとルキエラは――――


 「……な、なんですかその気色の悪い笑みは!」


 「ほほほ、気色の悪いなんて、主君に対してそんな、ほほほほほ」


 「可愛いじゃねぇかブラザー、照れてんのかよ」


 「っ! て、照れてなどいない!!」


 「じゃあ呼んでみ? 呼んでみ?」


 「カークーペル、カークーペル」と両側から手拍子しつつ囃し立てる。

 カクペルは十秒ほど黙って耐えていたが、ついに小さく口を開いた。


 「…………ルスケン」


 「!!!!!」


 「っ、もう!! これでよいのだろう!! これで!!」


 そして彼は吹っ切れたように大声で話し始めた。


 「いい!! いいぜ最高だ!!」


 「囃し立てられたら余計に羞恥心がわいてくる! こうなれば連呼するしかあるまい!」


 「そして次は私の番だ!」とカクペルが勢いよく立ち上がる。


 「ルスケン! 質問をしよう。……君の苦手な食べ物はなんだ?」


 「あら、それは気になりますわね」


 オレは即座にブランデーを流し込んだ。


 「……チッ」


 ドカリと床に座るカクペル。


 「嫌だよ!! だってお前『もしもの時のため』とかいって身内にも手の内見せねぇような人間じゃん!」


 「それがなにか?」


 「そんなヤツが『苦手なもの』とか聞いてきても怖すぎて言えねぇわ!!」


 「殿下、私は彼に信頼されていないようです」


 「お嬢に泣きつくなよ!?」


 「まあまあカクペル、苦手な食べ物なんか、これから先自然とわかるときが来ますわよ」


 「お嬢もそういうこと言うのやめて!?」


 「まったく、この程度のことにこたえられずに酒に逃げるなど、嘆かわしいことだ」


 「それでは次はまた私の番ですわね」


 オレたちの様子は気にせず、ルキエラが淡々とゲームを進行しようとする。


 「ではカクペル。貴方、隠し事が多いと思いますの。だから、何かひとつ暴露しなさい」


 「…………」


 カクペルは静かにスニフターを持ち上げた。


 「お前も酒に逃げてるじゃん!!」


 「そう簡単に暴露するような秘密は持ち合わせていない」


 「クソ、こいつ……!」


 「ほほほ、このゲーム楽しいですわ~!」






 ***






 ゲームは予想以上に盛り上がった。


 手番が巡るたび、酒が入るたび、質問やお題は少しずつ過激になっていく。そして酒を飲む回数も増え……


 「ふにゃ……」


 「お嬢は完全にダウンだな」


 「歓談しながら飲んだことで酔いが回ったのだろう」


 ルキエラはちょうど3杯目を飲み終わった時点で横になってしまっていた。明日のことを考えればここで脱落するのはかえっていいことだろう。


 「さて、お嬢も寝ちまったわけだが、どうする?」


 ルキエラが使っている二段ベッドの下段、荷物置き場になっているそこから荷物をどけ、静かに彼女を寝かせているカクペルに話しかける。


 「そうだな……」


 「オレたちももう寝るか」


 「…………」


 彼は数秒逡巡した後、オレに向き直った。


 「ところでルスケン、君はこれを『ゲーム』と言ったな」


 「うん?」


 「――――勝利条件を聞いていないのだが」


 冷静に言う彼の眼には、明らかに闘志が滾っていた。


 「ハッ、お前さん、もしやとんでもねぇ負けず嫌いだな?」


 「どちらかが『勝利する』まで続けよう。それがゲームの醍醐味だろう?」


 「んじゃ、こっから先は純粋な飲み比べだ。言っとくが、南の男は酒に強いぜ?」


 オレはふたつのスニフターに並々とブランデーを注ぐ。

 もはや香りがどうのだの量がどうのなんざ関係ねぇ。


 「私は騎士団の幼年修練過程より、あらゆる勝負を『敗北』で終わらせたことはなかった」


 「いい口上だ。そういう強ぇ奴を徹底的にぶち殺すのがオレの趣味でね」


 この場において、男たちの力関係を決定づける物差しはただひとつ。

 アルコール度数37%の酒をどちらが多く飲めるか!!!


 「じゃ、始めようか」 

 「…………」


 今、真の戦いの火蓋が切って落とされた――――!!


 ***

 (Luciela side)


 「…………なんですの、この地獄絵図は」


 私が目を覚ました時、最初に目に入ったのは荒れ果てた戦場……ではなく、床に転がる二つの影だった。


 「これは一体?」


 まだ寝ぼけ眼のまま、ゆっくりと起き上がり、ぼんやりと周囲を見渡す。


 昨晩の出来事を思い出す。


 ――――親睦会、ブランデー、「真実か挑戦か」、そして……


 「っ、まさか」


 恐る恐る視線を落とした先。


 そこには見事に泥酔し、狭い床で芋虫のように倒れている二人の男の姿が。

 

 二人の間にころがっているブランデーの瓶を見ると、私が最後に記憶しているよりも明らかに残量が大幅に減っていた。


 私は眉をひそめながら寝台から降り、彼らの間に立ち、それぞれの顔を覗き見る。


 ルスケンは唇を半開きにして、完全に無防備な寝顔を晒している。


 時折「……お前さん、まだ飲めるだろ……」などと寝言をつぶやいているあたり、どうやら二人は私が寝た後飲み比べでもしていたようだった。


 一方、カクペルは普段の冷静沈着な姿からは想像できないほど乱れていた。


 頬がほんのり赤く染まり、寝息は穏やか……かと思いきや、「ルスケン……貴様、許さぬ……」などとうわ言を漏らしている。


 (まったく、馬鹿なことを……)


 二人の額に手を当てる。


 「……熱がこもっていますわね。二日酔い確定ですわ」


 ため息をつきつつ、私は部屋の隅に置かれた水差しを手に取り、適当なコップに注ぐ。まずはルスケンに水を一口飲ませ――


 「んぐっ、ぶはっ!!」


 勢いよく飛び起きた。


 「な、なんだ!? オレは――」


 「おはようございます、ルスケン。昨晩は楽しかったですわね」


 「お、お嬢……?」


 ルスケンは朦朧とした目で周囲を見回すと、すぐに状況を理解したらしくガックリと肩を落とした。


 「負けたのか、オレ……」


 「知りませんわよそんなこと」


 「クソ、あの堅物修道士には絶対勝たなきゃいけなかったのに……!」


 「知りませんと言ってるでしょう!」

 

 ルスケンは頭を抱えつつ、視線をカクペルへと移した。


 「で、こっちは?」


 「彼も同じくですわ」


 「……ハハッ、マジかよ」


 ルスケンは笑いながらカクペルの額を指で軽く弾いた。


 「おーい、ブラザー。起きろ、朝だぜ」


 「……うるさい……」


 「お? 生きてるか?」


 「……水を……」


 ルスケンが笑いながら水の入ったコップを差し出すと、カクペルはゆっくりと上体を起こし、それを受け取る。小さく一口飲み、そして深い溜息をついた。


 「……最悪の目覚めだ」


 「お互い様だぜ」


 カクペルは頭を押さえながら、ぼんやりとルスケンを睨みつけた。


 「……勝負の結果は」


 「痛み分け、か」


 「どちらも大負けでしてよ!! こんな飲み方二度としないでくださいまし!!」


 「……反省しております」


 カクペルは再びため息をつき、水を飲み干した。


 「次からは、酒の量を決めておくべきだ」


 「おう、そういえばお前、最初にそんなこと言ってたっけな」


 「……二度と忘れないようにしよう」


 「お前さん、勝負となると冷静さを失うよな」


 「む……」


 そのやり取りを見ていると、あきれていたはずなのについ微笑みがこぼれてしまう。


 「ともあれ、親睦は深まりましたわね?」


 「……まあな」


 「まったく、命を懸ける必要のない勝負にそこまで全力を出すとは……」


 「お前さんが言えたことじゃねぇだろ」

 

 カクペルが苦々しく呟くと、ルスケンは肩をすくめた。


 「ま、いいじゃねぇか、オレたち、もっと仲良くなれたってことで」


 「……ふむ」


 カクペルは渋い顔をしつつも、どこか納得したように目を閉じる。


 「では、朝食にいたしましょう!」

 

 ぱん、と手をたたいてにこやかに宣言する。


 「……お嬢、ちょっと待て。まだ酒が……」


 「朝食は大切ですわ! 二日酔いを治すには、しっかり食べるのが一番ですのよ!」


 「……むぅ」


 ルスケンとカクペルは互いに顔を見合わせ、一斉にため息をついた。


 「……お嬢の言うことには逆らえねぇな」


 「……異議なし」


 こうして、散々な親睦会の翌朝は、さわやかな朝の光と美味しい朝食によって幕を開けたのだった。


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