06 【塔の地】
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0338 名無し
アンリミテッドのAIだなこりゃ
マジでかわいい
[動画] [動画]
0339 名無し
はー、ラブラブでうらやましいことで
俺もユニークNPCちゃんとイチャイチャしたい
0340 名無し
【辰砂鉱】が声明出してるな
穏やかじゃねえ
0341 名無し
(´・ω・`)折れてるやつって何かあるの?
(´・ω・`)ぶう
0342 名無し
まだわかってない
折れてる方が敵のレベル低い、ってくらい
レベル80くらい
0343 名無し
修復イベントとかありそうね
あとは、天界とのクロスオーバーもあるかな?
ダンジョン名と、空まで続いてる感じからすると
0344 名無し
折れてるとかってなんのこと?
それとして抗争も辞さないって中々だなシンシャ
のこのこローナ歩いてるけど初心者くん大丈夫なのか?
誰か保護してあげて
0345
露骨に避けられてて笑った
まああいつらに絡まれたらダルいからね。仕方ない
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おお~。けっこう良い景色!
【精霊の扉】を出た第一印象は、そんな感じだった。
乾いた土の感触を踏みしめ、【塔の地】に降り立つ。
少し遅れて視界に、『【塔の地】開拓拠点【柱臨む畔の前線拠点】』と表示された。
周りは、仮設っぽい雰囲気のテントが主体となって寄り集まった拠点という感じ。
僕と同じく、物見遊山といった感じで新しいエリアを見に来たと思しきプレイヤーが多々。
また『王命で開拓しに来た』という設定らしく、NPCの姿もチラホラ見える。
そして……少し視線を上げて空を仰ぐと、白塗りの、まるで壁かと見紛うくらいに巨大なモノリス様のオブジェクトが、視界の大半を占めていた。
【塔の地】、というエリア名たる所以、きっとあれが『塔』なのだろう。
この塔は、どうやら巨大な四角い柱型のようだった。
……あ、だから【柱臨む畔】なのかな?
太陽の光を真っ白く反射する塔は、頭上に広がるブルーグレーの空を背景にして、大変美しいコントラストを描いている。
「きれい~」
隣のユメちゃんが、感嘆の声を漏らした。
NPCはAIなので、風景を美しく感じる感性は無いはず。
だから、きっとシチュエーションごとにこんな感じの台詞を言うようになっているのかな?
なんて、少し無粋なことを考えながら、それでもその感嘆の言葉には同感なので、「きれいだね~」と相槌を打ってみた。
目を凝らすと、ゴマ粒のような黒い点々が、群れを成して横切っているのも見える。
長い尻尾が靡いてるし、きっと飛竜とかの魔物かな?
そのまま視線を上に滑らせていくと、塔の先のほうは、やがて空のブルーに紛れて消えていた。
なんというか、スケールが凄いね。
あの塔、いったい空のどこまで続いてるのかな?
そんなエモーショナルなことを考えながら、ぼーっとたそがれていると、ユメちゃんが怪訝な目を向けてくる。
あはは、と僕は目を逸らした。
さて、僕たちは歩き出して、まずは拠点をざっくり回ってみることにする。
攻略サイトも片手に呼び出し、さながら観光客といった格好だ。
ユメちゃんは少し先を歩き、人々の合間を縫って、テントや施設を興味深そうにのぞき込んだりと楽しそう。
かと思えば、たまに振り向いてほわっと笑うものだから、内心はデート気分だね。
でも、道行く人々に比べて、僕はまだ装備が初心者向けの簡素なものだから(実は昨日のドロップアイテムを確認するのをサボっているのだ。あとでちゃんと確認しなきゃね)、そこはちょっと落ち込むかも。
やっぱり、【塔の地】をしっかり攻略しに来た人たちも多そうだ。
ちなみに、今しがた攻略サイトに追加された最新情報によると、【塔の地】にある塔は、すべてダンジョンになっているとのこと。
あんなに巨大なオブジェクトなのだ。内部もさぞかし広そうだし、頂上まで行くのはとても大変そうだ。
「……あ、そういえば」
ふと、僕は思い返してみる。
昨日訪れた【天貫く塔】。
あそこの背景グラフィックと、今目の前にある風景。
もし同じく【塔の地】なのならば、風景としても、少しは似ているところがあるのではないか。
そんな風に思って、記憶にある風景と比べてみるものの……うーん、なんだか少し違うように見える。
【天貫く塔】は、どちらかといえば、『雲海』といった感じだった。
雲の海から、幾本かの塔が頭を出している。そんな感じの風景である。
今ここから見える範囲だと、【塔の地】の風景は、平原っぽいところに、巨大な塔がたくさん立っている、といったものだ。要は、地面が見えるのだよね。
もちろん、天候によってとか、塔を登っていけばあるいはとか、見え方も変わるかもしれない。
だから、まだ全然別の場所と断言はできないかな。
あと、すでにいくつかのダンジョンについては、その名称も明らかになっているようだ。
ただ……うん。ざっと眺めてみても、やはり【天貫く塔】という名前のダンジョンはいまのところなさそうだ。
でも、詳しい記事を見ると、ダンジョンの名前には一律して【天】というキーワードが入っているらしい。
そうなると、……少なからず、関係性自体はある気もしてくるね。
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さて、拠点をぐるり一周巡ってみたところ、取り急ぎ、【商工都市ローナ】と同じような施設は一通り揃っているようだった。
それに加えて、前線拠点というだけあって、NPCの関係者施設といったようなものもちらほら。
中には、生産系のスタイルでプレイしているプレイヤーたちの出店もいくらか混ざっている。
正直、拠点を見て回ってみるだけでも、一日くらい簡単に潰せそうだ。
ユメちゃんとのデートなら、それもまた良いかも? と思いつつ一方で、僕はというと、そろそろあれをしたくてうずうずしていた。
そう――『そろそろ【絶夢】で戦ってみたい』と思っていたのだ。
あと、ユメちゃんがどのくらい強いのか? というのも気になるところ。
それに……何より、新しいエリアということだし、やっぱりフィールドにも出てみたいよ。うん。
そんなわけで、僕はユメちゃんと一緒に、開拓拠点の外、フィールド【柱臨む畔】に足を踏み入れたのだった。