【2話】 唯一の楽しみがお弁当です。
「よっしゃ! 今日の昼飯は鶏の唐揚げ弁当か!」
いっただっきま~す! と中井は元気良く手を合わせた。そして中井は歯を使って割り箸を割り、唐揚げ弁当を頬張った。
他のムイたちは配られたオシボリで手を拭き、空虚な表情でモソモソと弁当を食べ始める。一人の女子を除いて。
「うん、うまーっ!」中井はモリモリと弁当を頬張りながら、「てかさ、みんな聞いてくれよ。昨日さ、考えたんだけどさ、こっからの脱出について」
モソモソ、モソモソと、他のムイたちは空虚に弁当を食べることで、中井をシカトする。それでも中井は話を続ける。
「上と横がダメなら下ってことで、地面掘って進んだら外まで行けるんじゃないか?」
モソモソ、モソモソ、と他のオレンジ色の軍団は空虚に弁当を食べ続ける。
「何だよみんなー、四年経っても相変わらず元気無いな~」
「あのね中井くん。いい加減、そういうの止めたら?」
と、隣の女子が気怠く言った。
端正な顔立ちで、クセのある髪の毛を肩まで伸ばしたその女子は、水尾葵。この括りで唯一、中井に気怠くも反応してくれる人物である。
明るい! 前向き! 元気! それだけが取柄の中井だが……。水尾は中井のことをいちいち構ってくれる。というのも、水尾は中井の明るさに惹かれて、恋愛的な好意を抱いているからなのだ。と思っていた頃もありました。
一方の水尾は、極上の容姿の持ち主。顔立ちは整っていて、一言にも二言にも美人。顔も良ければスタイルも良い。サイズが妙にフィットしたジャージを着ているため、グラビアアイドルのような美しいボディラインが浮き彫りになっている。
己のスタイルの良さを引き立てるためか、はたまた無意識でしているのか分からないが、水尾はいつも足をクロスさせてセクシーに座っている。
「君さ、バカみたいに毎日騒いでないで、もう少し現実を見たら?」
囁くように言うと、水尾は肩まで伸びたクセ毛を片手でいじりながら弁当を一口食べ進めた。やや垂れ目なので優しそうな雰囲気のある水尾だが、人とは極力気怠く接し、中井にキツい発言をしばしばおみまいしてくる。