【6話】 友へ贈る言葉
『本気出せばそのまま駆除できたのに。まさかアレをぶっつけ本番でやるとはねー』
「この先、楽したいんだよ。マスター出来れば、初っぱなからアレをぶっ放すだけで即効で終わらせられるからな。アイドルの仕事もあるし、奴ら相手にいちいち本気出してらんねー」
武良は、ギュッと握り締めた右手を見つめる。
「まだまだ成功率にムラがあるから、何とかしないとな……」
『武良くんだけに、ね』
くだらなすぎて、返す気にもなれなかった。
『……で? 武良くんの予想は当たってたってこと?』
「ああ。確実に存在する。強さは第二形態と同じだけど、両方やらなきゃ駆除できない第三形態が、な」
『確かに。今日ので六回連続やっけ?』
「七回だ。そして、二分の一が七回連続で外れる確率は〇・七八一三パーセント。どう考えても偶然とは思えねーべ」
『なーるっ。それじゃあ、そのことも含めて向こうに報告するから、まったねー』
「ああ」
返事をした拍子に、武良はその場で仰向けになった。
雲一つ無い青空の下に、氷の破片がキラキラと舞い降りている。
「俺たちが居れば、奴らは難なく倒せる……。残る問題は『差別』の方だな……」
仰向けのまま見たビルの液晶モニターでは、武良がCMを通して『腕輪』の効果の説明を始めている。しかしそのCM活動も虚しく、差別が全く減っていないのが現状だ。
「結局、人間が一番厄介ってことなのかねぇ……」
武良はゆっくりと立ち上がり、左頬の部分がえぐられたマスクを取り外した。蒸し暑さから解放された顔と、肩まで伸びた綺麗な茶髪が、微風でサアッと冷やされる。
「ったく……。お互い大変だよなぁ……中井……」
雲一つ無い青空に向かって、武良は呟いたのだった。




