【4話】 最強の盾は、最強の矛にもなる
「なーるほど」武良はスチャッとマグナムを腰に差す。
『武良くん、それを使わない手は無い――』
「言わなくても分かっとるっつーの!」
岡部の言葉を遮った時、A子が武良に向かって氷の壁をぶん投げてきた。
うなりをあげながら回転して向かってくる氷の壁を、武良はサイドステップでかわす。微震と共に、氷の壁が地面に突き刺さる。
突き刺さった巨大な氷の壁を、武良は片手で軽々しく引き抜いた。スマホ五台分くらい分厚い氷の壁を、武良はA子に向かってぶん投げる。
「うおりゃあああああああああ!」
ゴシュッ! 武良が目一杯に回転をかけて投じた氷の壁は、初動でそう鳴いた。
そのままシューー! とシャープな音を奏でて、氷の壁は回転しつつA子に向かう。A子は咄嗟に、己の前方に氷の壁を張って防御。
やや右にカーブする軌道を辿った氷の壁は、A子が造り出した氷の壁を綺麗に両断し、そのままA子を斬首した。
A子の首は静かに氷の大地に落下し、その胴体は空中でグラッと後ろへ傾く。血等は一切出ず、首の切断部はマネキンのように白い。
武良が投じた氷の壁は、高層ビルのど真ん中にぶっ刺さった。その衝撃で、ビルのガラスや壁の破片がパラパラと滴り落ちる。
『さっすがアタシらのミスターサード。ナイスコントロール。一撃で決まったね』
「いや、俺の予想が正しければ――」
奴らには第二形態の上に、第三形態がある。そいつらは、
「恐らく、今回の奴も両方しなきゃダメだな」
武良の予想通り、A子はそのまま白煙となって消滅しなかった。首が無いまま、後ろに傾いた体を空中でゆっくりと起こして、両手に氷の壁を造り出した。時間差で、先ほど落下したA子の首が白煙となって消滅。
「ったく、こりねえな」
『また最強の武器にされるのにねー。学習能力無い?』
ここで岡部のライフルが放たれたが、A子は背後に氷の壁を造り出して難なく防御。その壁を使い捨てるようにして、A子は垂直落下させた。そして先ほど両手に出した氷の壁を、それぞれ片手で武良に投じてくる。
武良はヒョイヒョイとバックステップでかわし、地面に突き刺さった氷の壁を一つ拾った。ヒンヤリとした壁を、武良は再びA子に投げ返した。今度はA子の心臓部を目がけて……。やや左にカーブしつつ、氷の壁はA子に向かった。が、氷の壁はA子の真正面で、音も鳴く消え去ったのだった。
「なっ!」
『にい?』
阿吽の呼吸で驚愕した武良と岡部。それを嘲笑うかのように、A子は両手に氷の壁を出して武良に投じてきた。