【3話】 中身は違います
五年ぶりとなる外の世界は、大きな変貌を遂げていなかった。コンビニの数が増えていたり、道路が綺麗に整備されていることぐらいだ。
まあ五年やそこらでメタリックな車が空を走るようになっていたり、瞬間移動する装置が置かれていたりしたら、それはそれでおかしな話だが。
生涯に犯罪を犯さない人で埋め尽くされていることも、全く実感できない。生活していく内に、それを実感することができるのだろうか。
そうこう考えていると、町の掲示板に貼られたポスターが目に入った。横並びに貼られたポスターには、荒々しい字体でこう書かれている。
『ムイを幽閉だけに留めるな!』
『幽閉だけでは甘い!』
『殺処分すべし!』
『有害物質である彼らを廃棄すべし!』
このポスターは『反ムイ感情』を抱く者の仕業だ。世界には、ムイを良く思わない者が大勢居るのである。
町の掲示板や家の壁といった、至る場所に貼られた『反ムイ感情』のポスターを見て、ようやく中井は把握した。外に出たのだと。
「有害物質、か……」
ポスターに向かって呟いてから、中井は地図を頼りに進み行く。
「……この信号を渡って、右か……」
渡ろうとした信号は赤。老若男女に混じって、中井は信号待ちをする。今日は日曜のため、ほとんどの人が私服姿だ
信号待ちをする人々も、幽閉される前と何ら変わっていない。
人や辺りを観察しながら信号待ちをしていると、いつの間にかスマートフォンの地図の画面が切り替わっていることに気付いた。
「……あれ?」
表示された画面は、カラフルな四角い箱が並んだ画面になっている。気付かぬ内に、誤操作してしまったようだ。
「……これ……どうすれば……」
中井はスマートフォンを振ったり、ひっくり返したりと、原始的な方法を試みる。しかし一向にスマートフォンの画面は地図に戻らない。そんな中井の姿を見てか、周りで信号待ちをする人たちがクスクス笑っている。
「駄目だ、戻らない……」
中井はスマートフォンに向かってため息を吐いた。
その時だった。




