表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極東の神国  作者: 灰色坊や
【第X章】ちょっと未来の話
3/31

【3話】 目標の仮称A子さん


「随分とまあ分かり易い目標だな」


『仮称、A子ってことでヨロー』


「へいへい」


 武良は踏みならした足場で身構える。


「おーし、それじゃ、ちゃっちゃと終わらせますか!」


 武良(むら)は瞬発的にしゃがんだ。そして両足にグッと力を入れて、縮めた全身をバネのように伸ばして跳躍した。

 分厚い防護服をバタバタなびかせながら、武良は一瞬にして高所で浮遊するA子の真正面へ到達。武良の跳躍力に驚いたらしく、A子は僅かに眉を開かせていた。


「もらったあ!」


 武良は右手刀を作り、それでA子の心臓部を突きに行った。が、そのすぐ手前で……武良の手刀は、約二メートル四方の氷の壁によってガードされた。透明度の高い氷の向こう側で、A子が冷ややかな笑みを浮かべつつ、肩にかかったおさげ髪をサッと後ろへ払う。


(チッ……)


 痛みと冷たさがセットになった指先と共に、武良は空中で何回転も宙返りして氷の大地に着地。ガキッと、氷の大地が武良を中心にしてひび割れる。


『息ついてる暇無いよ~』


「わーってるよ!」


 武良は腰に刺さったマグナムを右手に取った。それに反応するかの如く、A子が先ほど出した氷の壁を、武良にぶん投げてきた。

 手裏剣のように超高速回転しつつ向かってくる氷の壁――それを武良はジャンプしてかわす。氷の壁はホップして、凍結したコンビニの屋根に豪快に突き刺さった。その衝撃によって、近辺で微震が起こる。


「おー、あぶねえあぶね――」


 え、と声を出した時には、A子が新たに造り出した氷の壁をぶん投げてきていた。大きさは先ほどと同じ。二メートル四方ぐらいか。しかも一つだけでなく、氷の壁を造り出しては投げ、造り出しては投げを繰り返してくる。


「マジかよクソ!」


 高速回転して迫ってくるドデカイ氷の壁を、武良は氷の大地をスパイクでガシガシと削りながら、走り抜けたり、跳んだり、下をくぐり抜けたりと、適した手段でかいくぐってゆく。その度に、凍った街に氷の壁が次々と突き刺さる。


『珍しく防戦一方やね大将! 五秒後に仕掛けるよ!』


「オーケー!」


 五、四……と心の中で正確にカウントダウンしながら、武良は氷の壁をかわしてゆく。


(三、二、一……)


 ここで、武良は踏ん張って立ち止まり、右手に持つマグナムの銃口をA子に向けた。


〝ゼロ!〟


 岡部と声を合わせた。同時、武良は発砲による凄まじい反動をものともせずに、マグナムを片手で撃った。武良が放った銃弾は正面からA子の喉を。そして遙か遠くのビルから放たれた岡部の銃弾は、背後からA子の心臓部へ一直線。

 ほぼ同タイミングで二つの銃弾がA子を捕えた。かと思いきや、両方とも同時に、A子が己の前後に造り出した氷の壁によって弾き返されたのだった。それを見て、武良と岡部は「む?」と声を揃える。


「マグナム弾と」


『アタシの特注ライフル弾が、ああも簡単に弾かれた?』


 ということは、あの氷の壁は他と違って超固いっちゅうことだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ