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極東の神国  作者: 灰色坊や
【第1章】 外に出たいオレンジの少年
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【17話】 これで終わり?


「それで? 何か話があるんでしょ?」


「ああ……」


 中井(なかい)は一呼吸入れた後、水尾(みずお)としっかりと目を合わせた。


「ここから出るんだ」


 中井がそう言うと、水尾は心底から呆れたような表情をした。今まで見せた呆れ顔とは違い、軽蔑するような眼差しを浮かべている。


「無理よ」


「無理じゃないって! 権蔵(ごんぞう)とか、スーツ組とか、あの高い壁とか、全て俺がなぎ倒して、おまえを外に連れてってやるからさ!」


 無理よ、と水尾は冷静に首を横に振った。


「無駄にあがいて君も死刑になるのがオチね。君さ、そろそろ現実を見た方がいいわよ」


 水尾の思想に矛盾するその発言に、中井は思わず「は?」と声を漏らした。


「おまえこそ何言ってるんだ? あの時、言ってたじゃないか! 人は常に、魂の火を絶やしてはならないって! 足掻けば人はやがてどうなるか解らないって! 諦めたら『終わる』ことが解ってつまらないって! じいちゃんが言ってたことの意味、俺のお陰で解ったって言ってくれたこと、嘘だったのかよ!」


「嘘じゃないわ!」


 水尾も負けじと叫んだ。


「だったら何でそんなに消極的なんだよ! 色々な情報を抜き取ったのも、俺の『火』を見て、水尾も諦めずにここから出ようとしたからなんだろ?」


「それは……」


 水尾は逃げるように顔を伏せた。それが図星をつかれたことによる反応だということは、確認するまでもないことであった。


「言いたいことはそれだけ?」


 水尾は背を向けながら、静かに言った。


「それだけって……何だよ?」


「ここから出るとか、そういう絵空事ならもう止めて。私も最後の時間を無駄にはしたくないの」


 そそくさと、水尾は部屋の中に消えていった。


「……は? 何だそれ? 水尾……おまえはこれで……終わりなのか?」


 中井は部屋の中に呼び掛けたが、水尾からの返事は無い。


「終わり……なのかよ? ホントに終わりなのか? なあ?」


 部屋から返事は無い。


「中井清春(すみはる)。もう諦めて、さっさと部屋に帰るんだな」


 言うと、権蔵はこの場から去っていった。先ほどまで勢いのあった場は、シンと静まり返っている。


「何なんだよ……」


 呟いてから、中井は水尾の部屋の扉を思いっきり蹴飛ばした。ガンッ! という轟音が、廊下に虚しく響き渡った。

 そして翌日……教室に水尾(あおい)の姿は無かった。


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