【14話】 嘘って言えよ
朝食は、焼きそばパンとエビカツサンドとヒレカツサンド。プラス、コーヒー牛乳。
そして昼食は、トンカツとエビ天が卵で閉じられたボリュームたっぷりの丼。
ボリュームのある、男子が喜びそうなメニューの連続。
「どうしたの? 食べないの?」
隣の席から水尾が優しい口調で呼び掛けてきた。その不自然な優しさを見て、中井は背筋を凍らせていた。
『水尾葵の死刑が確定、か……』
死を匂わせる優しさを見て、中井は背筋を凍らせていた。
「ねえ、どうしたの? おいしそうでしょ?」
「止めろ!」
中井は叫び、立ち上がった。ムイたちは箸を止め、一斉に中井の方を見る。
「止めろよ……笑えないって……その冗談……」
呟いてから、中井は教室を出た。ノロノロと歩き続け、中井は誘導されるように図書室に行き着いていた。
「くそ……」
中井は図書室の窓から、校舎を囲う高い壁を鋭く睨み付けた。
「ここに居たのね」
しばらくすると、背後から水尾の声がした。中井は振り向くことなく、壁を睨み続ける。
「何で食べないの? 夜まで持たないわよ」
言いつつ、水尾は中井の隣に来た。中井は無言で、壁を睨み続ける。
「ねえ、急にどうしたの? 何だかおかしいわよ?」
「一個……」
中井は静かに口を開き、水尾の方を向いた。水尾はクセのある髪の毛をいじりながら、中井の次の言葉を待っている。
「今から一個質問するから、『嘘』って答えろ。いいな?」
「……あのね、君が何を言ってるのか分からないわ」
「いいから、『嘘』って答えろよ」
水尾はやれやれと言わんばかりにため息を吐いた。
「分かったわ。それで何?」
中井は一呼吸入れることで、問う心を整えた。
「おまえが死刑になるなんて、嘘だよな?」
水尾は一瞬で眉をひそめ、その表情を隠すかのようにして、素早く背中を向けた。
「嘘……だよな?」
中井は恐る恐る問い直した。水尾は背中を向けたまま、クセのある髪の毛をクシャッと握りながら、
「……本当よ」
極めて小さな声で答えた。中井の全身から、サッと温度が逃げる。