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極東の神国  作者: 灰色坊や
【第X章】ちょっと未来の話
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【2話】 アイドルが怪我しないように配慮する相棒と……


 右耳のイヤホンに通信が入った。


『ちょっと武良(むら)くーん。なに自分の顔に見とれてんの?』


 元気の良い女子の声が、武良の右耳をつんざいた。やかましいなと武良は心の中でツッコム。


『武良くんが格好いいのは分かったからさ~。とっとと駆除してよー。寒いんやから、こっちはー』


「はあ? 寒さは感じねーべ?」武良は凍結した街中を見渡して、「街が凍結してるって視覚に捕われて寒く感じてるだけだろ? むしろ日差しがウザいくらいあっちい」


『ちーがうって武良くん。ウチは凍ったビルの屋上で腹ばいになっとるんやからさー。ライフル構えて。お腹が寒いんやって』


「あー、そういや直接触れたら冷たかったっけ」


 凍った足場を雪山登山用のスパイクでゲシゲシ踏みならしながら、武良は答えた。小さく散らばった氷の破片は、クリアな美しさを保ったまま、太陽の熱を受けて溶けていった。


「つーか岡部(おかべ)。まず一つ訊いてもいいか?」


『えー? ナニ~? さっさと済ませてよ?』


 あー、お腹が寒い、と岡部は付け足す。


「何でこんな格好なんだよ、俺」


 全身には迷彩柄の分厚い防護服。着ぶくれして自慢の細マッチョが台無しだし、素材がゴワゴワしていて非常に動きづらい。

 顔には、頭部まで覆い尽くすタイプのゴーグル付き防塵マスクを装着。自慢のアイドルな顔立ちと、苦労して肩まで伸ばしたキューティクルな茶髪が隠れて台無し。

 靴は雪山登山用のスパイクで、腰には警棒一本とリボルバーマグナムが一丁刺さっている。

 指の繊細な動きを可能にするためか、手だけは裸。


「ただでさえ暑いって日に……。顔も身体も蒸し暑いし……」


『アイドルの武良くんの体を考えてのチョイスだよ。怪我でもされたらヤバイっしょ?』


「……その配慮はありがたいけどさ……」


『いーじゃんいーじゃん、似合っとるで?』


「……動きづらいんだっつの……」


 分厚く武装された動きづらい体で準備運動しつつ、武良は言った。


『えーと、住人は彼らの〝アレ〟で全員避難してるから、存分に暴れてねー』


「例の瞬間移動か。ホント、便利だな」


 ここで、武良の準備運動が完了。


「じゃっ、岡部の腹が風邪引く前に終わらせるか」


 広ーいスクランブル交差点のど真ん中で、武良はキッと空を睨み付けた。

 十階建てのビルと同じぐらいの高さに、セーラー服を着た、どこにでも居そうな容姿の女子が浮いている。その、おさげ髪の女子は武良と目が合うと、冷ややかに微笑んだのであった。

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