【12話】 外のセカイ
中井は膨れた腹を擦りながら、廊下を歩いていた。
すっかり日は落ちて、外は真っ暗な闇に包まれている。
「あー、腹膨れたー」
部屋に支給された夕食は、ビーフステーキ弁当。しかも何故か中井には二つ支給されていた。
「最近妙に豪華だよな。やっぱ吹いてるのかね、風が」
膨れた腹を擦りながら、中井は職員室に向かって廊下を進む。呼び出されたのではなく、己の意志で向かっているのだ。外出許可を検討してもらうために。
(一週間、いや、一ヶ月に一回、ほんの一分でもいい。外に出る許可をもらうんだ……)
中井がそう思い立った理由は一つ……昼にムイたちが見せてくれた変化だ。
『これを機会に、今日から少しずつ変わるかもしれないわね』
水尾も言っていた通り、少しながらも確実に変化があった。その変化を皮切りにしてクラスが明るくなり、やがて外の高校と変わらないものになるはずだと、中井は思ったのだ。
小さな箱庭の中でも、外の高校と遜色ない高校生活を送れるはずだと。
物理的には中の世界に居ても、実質的に外の世界に出られるはずだと……。
だが小さな変化を待っているだけでは時間がかかる。そこで、みんなで外の世界を見たら、その変化が加速して急激に変わるかもしれない。そう目論み、中井は外出の許可をもらうため、職員室に向かっていた。
(ちょっと出るだけなら、あの権蔵でも許してくれるだろ……。そして、いつかは当たり前のようにみんなと本当に外の世界に立って、笑って過ごせるようにしてやる……)
ここで中井は職員室のドアの前で立ち止まり、大きく深呼吸をした。
そしてドアをノックしようとした時だった。