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極東の神国  作者: 灰色坊や
【第1章】 外に出たいオレンジの少年
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【10話】 ジャンボカツ弁当


「おおおおおおお! 今日の昼飯はジャンボカツ弁当かよ! マジかよ!」


 中井(なかい)は思わず立ち上がり、両拳を握った。他の水尾(みずお)を含むムイたちは、中井のリアクションなど気にする様子も無く、オシボリで手を拭く。


「やりい! 昨日の夜は微妙だったし、今朝はパンと牛乳でヤバかったけど、これなら夜まで持つぜ! うひょー!」


 いっただっきまーす! と言いつつ座り、中井は歯を使って割り箸を割って、ジャンボカツを頬張る。


「ヤバイ! ウマイ! ウマ過ぎる!」


 カツにかけられた濃厚なソースが、旨味をパワーアップさせている。


「水尾、今日という今日は、おまえも叫びたい気分だろ?」


 な? と見た隣の席では、水尾が柔らかに笑っていた。


「おいしい?」


 優しく、柔らかに笑ったまま、水尾は静かにそう言った。

 優しい感じの垂れ目が優しさを引き立てて、中井には、今日の水尾が聖女のように見えていた。

 いつもの冷ややかな反応とは違って、優しい反応をする水尾に、中井は戸惑う他無かった。


「どうしたの? ボーッとして。おいしくない?」


「……いや、ウマイけど……」


「そう。なら良かった」


 またも優しく返すと、水尾は箸を片手にクセ毛をいじった。


「……あのさ……今日、妙に優しくないか?」


「そんなことないわ」


 水尾はジャンボカツをよけて、ご飯だけをチョビチョビと食べ進めた。


「まっ、細かいことはいっか!」中井はジャンボカツを頬張った。「やっぱウマイ!」


 天井に向かって叫んだ直後、教室に迷彩服姿の権蔵(ごんぞう)が入ってきた。相変わらず仏頂面だが、これ以上無いほど眉間にシワを寄せており、彼の精悍な顔立ちが際立っている。

 険しい仏頂面をした権蔵に、中井は少したじろいでしまっていた。


「……またあんたか、権蔵サン」


 権蔵は険しい仏頂面で中井に歩み寄る。そして権蔵は警棒を手に持ち、躊躇無く中井の右肩を打った。ドスッと鈍い音がするほど、権蔵の打つ力は強かった。

 警棒の痛みに慣れている中井でも流石に痛く、大きく顔を歪めてしまった。


「いっ……つ……」中井は堪らず、右肩を押さえながらその場に座り込んだ。「へへっ……やればできるってやつ?」


 中井はニッと笑って見せて、権蔵を煽った。権蔵は険しい仏頂面で、警棒を振りかざす。


(やば……)


 今度は左肩だ――。

 中井が観念した矢先、水尾が権蔵の背後から警棒を掴んで阻止した。


「もういいんじゃない?」


 水尾は優しい垂れ目を目一杯に鋭くして、権蔵を睨み付けた。権蔵はフンッと鼻を鳴らしてから、警棒を片手に足を鳴らして教室を出ていった。

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