【8話】 実質不可能
自由時間の後も、午後四時まで授業がある。内容は、今年も中学程度。授業が終われば自由時間。
無論、学校の敷地内から外に出ることは許されないし、無断で出ようとしても出られない。
何せ校内の至る所に監視カメラが設置されており、怪しい動きをしようものなら、すぐさま迷彩服を着た男が襲来して、仏頂面で警棒を振り回してくるからだ。
奇跡的に監視カメラの目をかいくぐれても、あのドデカい壁が立ちふさがってくる。
壁の内側の周りでは、権蔵のように迷彩服を着た男たちが常に徘徊していて、見つかったら即、校内に連行される。
更に奇跡が起こって、壁の内側で徘徊する男たちが居なくなったとしても、壁を突破することは容易ではない。
壁には通り抜けられる扉こそあるが、扉には何重もの厳重なロックがかけられており、ロックを解除できる一部の人間にしか突破できない。
つまり鳥のように空を飛ぶか、モグラのように穴を掘って下を進むかの方法でしかドデカい壁は突破できないのだ。
また更に奇跡が起こって扉のロックが解除され、壁の外に出たとしても、壁の外側にも厳重な警備網が張られていて即捕まる。
……要するに、ムイがこの学校から出ることは、現実的に考えれば不可能なのである。
学校には、ムイの個室が用意されている。学校の教室として使われていた場所を改装したこともあってか、個室は十五畳とだだっ広く、風呂、トイレもある。
部屋の家具は共通して冷蔵庫、布団、折り畳み式のテーブルのみ。冷蔵庫は、頼めばいくらでも貰えるペットボトルの天然水(五〇〇ミリリットル)を冷やす役割を成す。
部屋はマンションのように横並びになっていて、南校舎の一階と二階に男子の個室。
北校舎の一階と二階に女子の個室と、きちんと分けられている。
因みに図書室は男子の個室がある南校舎の三階にある。
北と南の校舎に挟まれる校舎は中部校舎と呼ばれており、他の校舎と違って改装はされていない。授業が行われる教室や、職員室がそのままの状態であるのだ。
今、中井はその職員室(一階)に向かっていた。権蔵から呼び出されたのだ。